聞き手はみな同じ感覚を持っているわけでなく、また話し手とも違います。そのような感覚の違いに配慮することで伝え方の質を上げる方法をご説明します。
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(トータル時間 (12:47)
〜各タイプの出力スタイルの違い(06:53)
簡易タイプ診断〜(05:54)
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VAK=人には優位に使っている感覚がある
プレゼンは論理的な話の組み立てだけでは不足です。聴き手が内容を理解しやすくする配慮を必要とします。
優れたコミュニケーションができる人は、「他人と自分は違う」ということを知っていて、それぞれの違いに配慮できる人だといいます。ここでは「VAK」という人の違いから、それに配慮した話し方について考えてみましょう。
「VAK」は。視覚(Visual)、聴覚(Aufitory)、体感覚(Kinesthetic)の頭文字をとった言葉で、人が優先して使う感覚器官を表現する言葉です。人の意識は常に外界からの情報を意識的、無意識的に取り入れていますが、そんな外部の情報を取り入れる時に優先する感覚器官は人それぞれで実は違いがあります。この、優先する感覚器官によって、理解しやすい情報形態も違うことがわかっています。
この違いに着目して、相手により伝わりやすい情報になるよう配慮することで、コミュニケーションの質が高くなります。日常会話、交渉や説得、営業トークに活かすことができます。加えて、プレゼンテーションの時にも、多くの人があなたの話に興味を示し、内容の理解や納得をしやすくなるようにすることができるのです。
VAKそれぞれの特徴は以下のように理解しておいてください。(すでに「コミュニケーション」のパートで「VAK」を学んだ方は、もう一度思い出しましょう)
V=Visual(視覚)
視覚を優先して使う人。情報を画像でつかみ、画像で想像する。
A=Aufitory(聴覚)
聴覚を優先して使う人。耳から入る音に敏感。情報を言語や音でつかみ、言語のまま取り込む。
K=Kinesthetic(触覚、味覚、嗅覚) ※”肌感覚”と言われるものも含む)
自分の身体での感覚を使い、理解や記憶をする傾向が強い人。じわじわとしっかり体全体で味わう。現場などにいって実際に感じようとする。
それでは、この違いによって話し方やプレゼンテーションにどう配慮を加えていくか、ポイントを見て行きましょう。
1対多の場面で気をつけるポイント
商談や営業など、キーパーソンに話をする場合は、そのキーパーソンのタイプがVAKのどれかを会話のなかで見極めながら話を進め、タイプがある程度診断できた時点で、そのタイプにあった話し方を選ぶ、という方法をとります。
2~3人の人に対して行うプレゼンテーションである場合は、同様にキーパーソンに照準をしぼればよいでしょう。しかし、多数の人を前にしたプレゼンテーションやスピーチの場合は、できるだけ多くの人に伝わりやすいよう、各タイプにまんべんなく配慮するのがポイントです。そうすることで、伝わりやすさや話の効果がぐんとアップします。
そのためには、まず自分のタイプを知りましょう。
自分のタイプがわかると、自分の「発信スタイル」つまり物事の説明の仕方や資料の出し方の偏りがわかりやすくなります。それに気づいた時に、少し違うタイプの受け取り方にも配慮する気になれば、それだけであなたのコミュニケーションセンスは上がります。
各タイプの出力スタイルの違い
各タイプの出力スタイル=話し方やプレゼンの仕方などの情報発信のスタイルは、大まかに言って以下のような特徴があります。この特徴こそが、自分の伝え方の「クセ」であり、違うタイプからすると、話の内容を理解したり納得したりすることを阻むポイントでもあります。まずそれをよく理解してください。
「自分の話し方は違うタイプの人から見ると、ここがわかりにくいかもしれない」という気づきだけでも、あなたの伝え方はレベルアップします。
V=Visual(視覚)
情報を絵や写真で伝えることが好き。
また、自分の中の情報は画像の形で格納されているので、その画像を説明するために身振りや手振りがついた話し方になりやすい。また本人が頭の中に見えている光景を話すので「あの」「この」などの指示語が多くなる傾向がある。
話のスピードが速い。動画が進んだり、絵がシャッフルしたりする感覚で話が急に飛ぶこともある。
「見る・見える」「見通しが立つ」「結論はクリア」など、見ることに関連した語彙が多い。
A=Aufitory(聴覚)
文字情報が得意で、正確な言葉を使おうとする。難しい言葉をそのまま使って話す傾向がある。
記憶に格納された言葉をそのまま出力するように発信するので、話しているときに表情や抑揚があまりない人も多い。
話のスピードは速く、長い文章を途切れなく話す傾向が強い。
「そう聞こえた」「〇〇は、~~~~と言った」「いい響きだ」など音や声に関連した語彙をよく使う。
K=Kinesthetic(触覚、味覚、嗅覚) ※”肌感覚”と言われるものも含む)
自分の感覚を伝えることに熱心。いったん身体の感覚にしまったものを取り出して伝えようとするので、「こう、何というか」と、何かを絞り出すような表現が出てきたり、手を使った身体表現が多くなることがある。
ロジックよりも感覚や感動に比重を置く傾向で、感覚の出現により唐突な話の展開が出てくる場合もある。
話のスピードは比較的ゆっくりだが、速い人もいる。自分の感覚で納得してから情報を取り出すので、微妙な間がちょくちょく入ることがある。「やっと(腑に)落ちた」「重たい話だ」「実際に触らないとわからない」と感覚重視の語彙をよく使う。
いかがでしょうか。「これは自分だ」「あの人はこのタイプだ」と思い浮かべる人もいるでしょう。
このような出力スタイルの違いによって、違うタイプ同士では当然ながら話が理解しにくい、納得しづらい、という現象が起こりがちです。
例えば、自分が「V」だった場合は、説明もスライドばかりになり、「A」が必要とする文字情報やロジカルな説明が不足していたり、「K」が必要とする「考えて自分の中に落とし込む時間」を軽視して話のテンポが速すぎる、となっているかもしれません。
自分の感覚だけで終わらず、他の人の感覚で自分の話し方を確認するようにすると、自分の話し方をよりバランス良くスキルアップすることができます。
(参考)自分のタイプを簡易診断
「コミュニケーション」のパートをまだ履修していない方は、ここで簡単に自分のタイプを診断してみましょう。下記の順番に従い診断して下さい。
自分の話し方にどう活かしていくか
このVAKの知識を活かしましょう。自分の話し方に配慮し、自分とは違うタイプの人にも理解されやすく納得してもらいやすい、1対多の話し方にするには、このようなポイントに気をつけましょう。
資料やスライド:自分以外のタイプにも合うかどうか
V=Visual(視覚)
表や図など画像で理解しやすいものを好む。スライドや図表資料をしっかり用意。
A=Aufitory(聴覚)
数字、ファクト、細かい文字情報、など現実的で詳細な情報を好む。スライドが画像など感覚的なものが多い場合は、レジュメなどの資料に数字や細部情報などをしっかり入れておく。
K=Kinesthetic(触覚、味覚、嗅覚) ※”肌感覚”と言われるものも含む)
文字や数字を羅列したスライドや資料だけでは、話の内容に感情移入してもらいにくい。触感や臭いなどの擬態語をスライドに入れるなどして工夫する。
話し方や話の構成
V=Visual(視覚)
話を聞いて画像でキャッチし、それを自分の感覚で見る時間が必要。全体のあとに細部を説明する流れを好む。
A=Aufitory(聴覚)
論理的な話で筋が通っていることを重視するが、細部が気になる傾向であるため、プレゼン本番であまり細かいところまで話せないなら、添付資料の充実や細部説明やQAの時間をしっかり取ることが肝となる。
K=Kinesthetic(触覚、味覚、嗅覚) ※”肌感覚”と言われるものも含む)
体験、感覚を好むため、ロジック偏重だと腑に落ちないまま終わる危険あり。そのため、ストーリー仕立ての話やメタファ(例え話や誰かの体験談)などの利用で、感覚や感情を味わえるお膳立てが大切。
話の内容が感覚的に自分の中に落ちるのに、やや時間を必要とするため、重要な結論のあとに間を置いたり、いったん休憩を取ったりする構成の工夫も考えた方が良い。
各タイプに響く言葉を組みあわせる
V=Visual(視覚)
見る 狙いをつける ビジョン 観察する 焦点を合わせる イメージする 見えない 見通し、描く
A=Aufitory(聴覚)
聞く 言う 話す 共鳴 響く 調和する 静かな
そのほか、有名人が言った具体的なセリフなど
K=Kinesthetic(触覚、味覚、嗅覚) ※”肌感覚”と言われるものも含む)
感じる 熱い/冷めた あたたかい/冷たい ぬくもり 掴む 触れる 心が熱くなる 胸に刺さる (腑に)落ちる
いかがでしょうか。100% それぞれのタイプに配慮することは難易度が高いですが、自分の行うプレゼンやスピーチの内容を検討するとき、これらのような方面からの工夫を加えることは、上でも言ったようにコミュニケーションの質を上げます。
それだけ、多くの割合の人があなたの言葉に眼を向け、耳を傾け、感じようとしてくれるはずです。
「VAK」の違いの知識は、多くの場面で役立ちますが、特により多くの人を納得させたいとお考えの時には思い出すべき知識です。次回、もし人前で話す機会があれば、ぜひ活かして下さい。