コンテンツ本編に入る前のイントロダクション部分で話すべきことについてお伝えします。
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(トータル時間 (0513)
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話の序盤に必要な「式次第」とは?
話始めの序盤で必ずしなければならないことがあります。
それは「式次第」を聞き手にわたすということです。もちろん、これは例えであって、「式次第」と書かれた書面を渡すことではありません。話の内容のあらましや流れをあらかじめ説明して理解しておいてもらうということです。
聞き手からすると、これから自分の時間を話し手にゆだねるわけですから、ある程度の心づもりをしておきたいはずです。ここで話し手が聞き手に説明しなければならないのは、今から何の話を聞くのか、何のために聞くのか、どういう段取りで聞くのか、ということです。これらの説明をせず、いきなり走り始めてはいけません。聞き手が関心を失う最も大きな原因の一つは、何の話を聞いているのかわからなくなることだからです。
式次第の3つのポイント
冒頭で渡す「式次第」の骨子は以下の3つです。
・全体の構成
何について話すか、大きなテーマと話すポイントや流れを説明します。プレゼンテーションのタイトルや内容は事前にある程度聞き手に伝わっていることが一般的ですが、だからといって、皆が十分にわかっているとは限りません。ここであらためて簡潔にわかりやすく説明しておきます。
例:「今日は『~~』というタイトルで、〇〇についてお話をします。中でも、〇〇とは何か、手に入れるとどんなメリットがあるかを詳しくお話し、実践的な獲得方法についてもお伝えします。」
・ゴール
何のために、この話を聞いてもらうのか目的や到達点の説明です。話し手のゴールはプレゼンテーションを作るときに決めているわけですが、ここでは「だからしっかり聞いてください」という説得のポイントとして説明しますので、聞き手のメリットやベネフィットにフォーカスした内容にします。
例:「最近よく話題になる〇〇ですが、ちゃんと知っている方は意外と少ないです。今日の話を聞いていただければ、基本的な知識がしっかり頭に入り、〇〇をより身近に利用できるようになります。」
・スケジュール
何時何分まで話すか、または何分話すか、休憩やQ&Aの予定は、などのだいたいの予定を説明します。短いプレゼンの場合はそれほど詳しくなくて大丈夫ですが、聞き手が心づもりをできるようにわかりやすく伝えておきます。
例:
短いプレゼンの場合:「今日は20分お話した後に、皆さんからのご質問にお応えします。〇時〇分に終了の予定です」
長いプレゼンの場合:「今日は〇時〇分までの予定です。まず前半は〇〇と〇〇のポイント、休憩をはさんで後半は〇〇についてお話します。Q&Aの時間もその後5分ほど予定しています。休憩はだいたい〇時頃に10分ほど取る予定です。」
いかがでしょうか、このプロセスは旅行ガイドが観光客を案内するようなものです。ツアーの内容がある程度わかっていても、「ではバスに乗ってください」といきなり旅行そのものをスタートするのでは、とまどいが大きいものです。
「今日は〇〇に行きます。ほとんどがバスでの移動です。〇〇ではゆっくり観光でき、昼食もそこで特別メニューを楽しんでいただけます。思い出に残る一日になりますよ!」
こんな風にしっかりガイドしてもらったほうが、安心してガイドに従うことができ、自分がしっかりと参加できている気がします。親切なガイドのつもりで、話をしましょう。
メリットは明確にする
式次第の中でも、しっかりと考えて説明をしたいのはゴールの一つである「聞き手のメリット」です。
「この話を聞くと、こんないいことが起こる!」これが聞き手のメリットです。話す前や冒頭で、このメリットを十分に説明ができると、それだけでプレゼンは半分成功したようなものです。なぜなら、聞き手の期待値が上がり、話に集中する度合いが増すから、そして聞き手の意識の中にもしっかりとゴールができるからです。つまり「この話をしっかり聞いて、このメリットを手に入れよう!」と話に積極的に参加する姿勢になるのです。
それだけではありません。このような聞き手の姿勢をあらかじめ作れると、聞き手は無意識にそれを実現しようとし、話の内容を良いほうへ解釈し、最終的に「メリットをちゃんと受け取れた」と自ら結論づける傾向が強まります。これは「確証バイアス」と呼ばれる現象で、人間が自分が持った期待や信じたことに合わせて事実を解釈しようとすることです。聞き手のメリットを納得しやすいように話すことができれば、冒頭の数分間で自分の話を好意的に受け取ろうとする人の数を増やせるということです。
メリットを整理するには「なぜ、聞き手は、今日、ここで、この話し手から、この話を聞かなければならないか」を考え、文章にしてみてください。説得力の強いメリットが生まれるでしょう。
いかがでしたか? プレゼンの冒頭に必要な「式次第」。しっかりと準備することで、プレゼンを成功に導く強力な仕掛けになります。式次第を渡すタイミングは、本論を始める直前ですが、それまでにラポールをちゃんと形成するようにしてください。