話を進めていく上で心得ておきたい大事なポイントについて説明します。
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聞き手に納得してもらいながら話を進めるために
「同意? 誰と、何を?」
今回のタイトルを見て、そう思った方がいるかもしれません。もし、そう思ったら、よく読んでください。「同意を形成する」というのは、「今からこれを話しますけど、いいですか?」などと相手の同意を確認しながら話を進めて行くプロセスです。
このプロセスは、聞き手に納得してもらいながら話を進められることができる、話上手な人が必ずプレゼンやスピーチに入れているプロセスです。また、これは対面のセールストークやふだんの会話でも応用できるテクニックです。ぜひ内容をつかんで利用してください。
「同意を形成するプロセス」は3つあります。
話始めに「これを聞いてくれるか」と聞くプロセス
ひとつめは「この話をしていいかどうか」を聞くプロセス。つまり、今から話すことの概略を簡単に言い、それについて聞いてくれるかどうかを聞き手にいったん尋ねておきます。
(例)
今日、お話ししたいのは○○とその方法についてです。
特に△△の部分が大切なので、その紹介から始めたいと思いますが、そこから聞いていただいてよろしいですか?
こう聞いても、ほとんどの場合は、聞き手からはっきりと承諾の返事があるわけではありません。なんとなく、うなづきや目配せなどの反応が伺えるくらいでしょう。しかし、これを同意してもらった印として、そこから「ありがとうございます。では今からお話ししますね」と話し始めます。
プレゼンやスピーチでは通常、話し手は何について話すかを知っています、そしてそのことで頭がいっぱいです。そんな話し手は無意識に聞き手も当然わかっているものと思いがちです。それで、いきなり「では」と始めてしまうことがよくあります。しかし、これでは聞き手の聞く準備が十分にできていないことがほとんどなのです。どこに連れて行かれるかを理解しないまま、連れ出されるような感覚に陥ります。
そこで、その前に「今からここに向かいますが、いいですか?」と聞いておくプロセスを入れます。こうすると、話の内容に「聞き手の身が入る」効果があります。なぜならば、人間は、自分が言ったことに対して、無意識に従おうとする習慣があるからです。話し手から「今からこういう話を聞いていただいてよろしいですか?」と言われて、いったん「はい」と同意したら、「聞こう」という姿勢が強くなり、集中力が増すのです。
もちろん、先に言ったように、「はい、いいですよ」というはっきりした答えは期待できません。せいぜいが軽いジェスチャーや聞こえない心の声です。しかし、どんな軽い反応であっても、同意した事実が聞き手の意識に組み込まれ、聞き手はその事実に無意識にドライブされるのです。
このプロセスは大げさに行う必要はなく、話す前のワンクッションとして使えれば結構です。このプロセスを話のポイントが変わるときなどのタイミングに入れていくことで、聞き手の関心をひきつけたまま話の展開ができます。
途中で理解の同意を得るプロセス
同意形成は、最初だけでなく、話の途中でもいれます。話し手がずっと話していると、聞き手側はついて行きにくい感覚を覚えることがあります。ひとたび関心が無くなると、再び話の中に戻るのが大変だからです。そういったことを防ぐために、言ってきたことを途中でまとめたり、内容を抽象化したりして、同意を得る方法を知っておくと良いでしょう。
例えば、このような言い方です。
(例)
さて、ここまでは○○について理解を深めていただくために、△△も含めて、最近の全体的傾向についてお話をしました。
全体的な傾向としては、□□ということでしたね。
何となくおわかりいただけましたか?
このように現時点までのサマリーを説明して、わかったかを聞いてみます。聞き手はいったん「わかった」ということを認めると、その前提でそこからの話を聞こうとします。その結果、さらに内容に集中するよう自分をドライブしていくのです。「一貫性の法則」とも言いますが、人間は自分で認めたことに無意識に合わせようとする傾向があります。
また、上のセリフでは「何となく、お分かりいただけましたか?」と話しかけていますが、実はこの「何となく」は同意を形成しやすくし、さらに一貫性の法則を効果的に使うためのテクニックでもあります。つまり聞き手側に多少理解不足なことがある場合。「わかりましたか?」とだけ言われると、「いや、一部はっきりしない」と否定の意識が入りますが、「何となく」がつくと、「何となくなら(わかった)」と同意しやすくなります。これが「この話を聞いて、理解している」と聞き手が実感する流れを作るのです。
この流れが、話し手と聞き手を結びつけ、話に集中させることに役立ちます。
最後にまとめ、同意を得るプロセス
話の締めくくりとして、話した内容のポイントをまとめて再度確認する人は多いと思います。そのときにも、「よろしいでしょうか」「おわかりいただけましたか?」などの言葉で、聞き手の同意を促してください。
(例)
「今日お話ししたポイントは、~、~、~、です」
「いかがでしょう。〇〇が〇〇であるのにはご納得いただけましたか?」
聞き手とアイコンタクトをしながら、にこやかに聞いてみましょう。このときも、はっきりと「わかりました」という人はいないことがほとんどですが、数人はあなたを見返して力強くうなづいてくれるはずです。
上で言ったように、人は自分が言ったことに無意識に従う傾向があります。同意のプロセスを使うことで、お話し全体に対して「わかった」「納得した」という印象を持ってもらいやすくなります。また、話し手自身に対しての親和性や信頼感も高まります。
いかがだったでしょうか。印象的なスピーチやプレゼンが出来る人は、このようなプロセスをおろそかにせず、きちんと取り入れている人が多いのです。
ぜひ、あなたもご自分の話の中で、試してみてください。