国際標準のマナーでは、ホスト、ゲストなどの役割感覚が強いです。その感覚を理解しておいて下さい

 

 

AUDIO

(トータル時間 26:43)

1 〜ゲストケアと進行の管理(2 ゲストを席に案内する)(08:31)

2   ゲストケアと進行の管理( (3 料理をオーダーする)〜ゲストの役割(08:40)

3 エスコート(09:32)

 

TEXT

ホスト/人をもてなすときの留意点

 

「ホスト」とは、イベントやパーティ、食事会などの中でゲストをもてなす人です。仮に友人同士でも、その友人をもてなすために食事の店を決めたりするなら「ホスト」と言えます。そしてその友人は「ゲスト」になるのです。

「ホスト」は誰でも知る言葉ですが、日本での「もてなし役」の感覚とはややニュアンスが異なるところがありますので、国際標準マナーの一環として、その役回りなどを理解しておいてください。

 

「ホスト」の役割

 

「ホスト」は、元々は西欧の文化の中の「城主」など権力者による饗宴で、権力者自身が務めた役がルーツです。日本の「もてなし役」には、お客となった人をあれこれ世話するような感覚がありますが、「ホスト」は、いわば「総合監督 兼 プロデューサー」です。手配し、進行を管理するような俯瞰的な視点が必要な立場であり、責任者としてプランニングし、ゲストを迎え、もてなしの采配を行います。

心得としては。ミスや失態に関しては責任を負う役ということです。部下に采配をさせ、自分もゲストのつもりでいることは許されません。そして、うまくもてなしが成功すればチームのおかげであることを監督として喜ぶというのが正しいスタンスです。

ご存知のように大陸続きのヨーロッパでは情勢が複雑であったため、力関係のバランスを取ったり、国力を見せつけて牽制したりする政策が日常的に行われていました。ですからコミュニケーションしやすい「食」は昔から利用され、賓客を招いては外交のため、権勢を見せつけるため、とさまざまな饗宴が行われてきました。そんな饗宴が失敗すれば、外交上のリスクとなり、また権力者としての恥にもなります。ホスト役としての強い責任感とプライドは非常に強いものであり、ホスト役をちゃんと務められるということは「上に立つ人」として持つべき大切な資質と認識されてきたのです。ですから、ホストとしての役割や義務を正しく理解しておくことはビジネススキルとしても大切なことです。

 

 

 

ここからその役割や義務についてお伝えします。

 

 

ホストがすべき「事前手配」

 

「総合監督 兼 プロデューサー」であるホストは、直接のゲストのケアやアテンドをする担当を他の人間に任せても構いません。自身は司令塔として機能する役割がありますので、もてなしの規模によってはむしろ任せないと、うまくゲストをもてなせません。いっぽうで最終責任者となりますので、何か采配ミスがあったり、他の担当の失態があった場合も、ホストに責任が行きます。その自覚をもって、ホストがすべき、または担当に指示すべき事前手配と言えるものがあります。その内容を確認しましょう。

 

1 招待者の決定

呼ぶ人によって、会の性格は変わります。接待なら誰をもてなすかで成果も変わります。予算や人数から決まる場合もあります。主役だけでなく、場を盛り上げてくれそうな人などメリットがある人との組み合わせも考慮します。それらを考えて招待者を戦略的に決めていきます。

 

2 場所の選定

人数、公共交通機関による交通の便、駐車スペース、サービスレベルや場所の格式など、もちろん予算も考慮して場所を決めます。その他おみやげ物の用意や花束、ケーキなどの手配について依頼できるかどうかも必要ならチェックします。

重要であるのはもてなしの目的に合った雰囲気の場所だということです。味やサービスのレベル、インテリアの質感、照明の明るさ、天井の高さ、全体のキャパシティ、席間の余裕、階数などは雰囲気を左右します。例えば、高級然としたところである程度の緊張感があったほうがいいのか、開放的な雰囲気でリラックスしてもらったほうがいいのか、こじんまりしたところで親睦感を高めたほうがいいのか。このような検討の答えは、もてなしの目的が商談を一段階進めることか、慰労や顔合わせか、などで違うはずです。

 

3 ドレスコードの決定

小規模な接待であれば必要ありませんが、パーティやイベントを開催する場合は、招待状や案内状でアナウンスするドレスコードを設定します。必ず必要というわけではありませんが、来場者からするとそのほうが迷いにくいため親切です。また、そのパーティやイベントの雰囲気が統一されて、印象が強くなります。場所の選定にもよりますが、そのパーティやイベントの目的によってどんな服装をリクエストしたいかで決めましょう。

なお、小規模な接待であっても、質の高いホテルやレストランなどの施設で行うときには、そこのドレスコードはホスト側がチェックし、必要があればゲストに事前につたえなければなりません。格の高い店などはジーンズやキャップ(帽子)、サンダルなどのカジュアルアイテムを禁じていることがありますが、昨今のカジュアル化やサテライト業務の増加で、ゲストが何も知らずごく気軽な格好で来てしまうこともあるからです。

 

4 席の決定

 

席の配置や席次はゲストの満足感や盛り上がりに影響します。ゲストに座らせる位置、席次を決めておくことも重要です。1~2名のゲストの場合は上座に座ってもらうだけでいいですが、ホストもゲストも複数名いる場合は、あらかじめ考えておかないと混乱が生じる恐れがあります。席を決めるときには、ポジションなどによる序列と、隣や前にホスト側の誰を配置するかも考慮しておくべきです、

日本では、ホストグループとゲストグループで分けたり、男性女性で分けたりすることが多いですが、国際標準的な考え方では、夫婦や親しい友人同士を離して、男女交互に座らせるような席の組み方をします。知っている人同士で会話が固まってしまうより、いろいろな人と親しくなったほうがいい、という考え方が中心なのです。このときに、まだ親しくない人同士の会話の橋渡しをしてうまくコミュニケーションさせるのも、またホスト側の役目です。そのため、あらかじめまだ皆と話しなれない人を非常に社交的な人の近くに座らせて会話が進むように考えることもあります。

そこまで綿密に考えなくて良い席であっても、中心になって誰がどこに座るかを指示するのはホストの役目です。

 

5 飲食物の内容(メニューをどうするか)の決定

 

飲食を伴うもてなしにはメニューこそ重要な役割を果たします。先に場所が決まれば、メニューはある程度自動的に決まってしまいますが、着席でしっかり食事をとるような会であれば、予算やお好みから決めるだけでなく、考慮しなければならない項目があります。

 

その主なものは、

・苦手な食材

・アレルギー

・ヴィーガンやベジタリアンの人がいるかのチェック

・食材や調理法の宗教的な制約がないか

 

ただし、事前にチェックしてもゲスト側からきちんと情報を返してもらえなかったり、当日に成人病による食制限などが急にわかるときもあります。そんなときに完璧な手配は難しくても、できる限りの柔軟な対応ができるよう、あらかじめ会場側と打ち合わせしておくことが望ましいでしょう。

 

 

ゲストケアと進行の管理

 

ホストが当日すべきケアと進行の管理は以下のものがあります。

 

1 ゲストを迎える

イベントやパーティなら、入り口のところでゲストを出迎え、歓迎の意を表します。式次第によってはずっといられないこともありますが、少なくとも最初は自らが出迎えをすべきです。

接待においても、ホスト役は先に着き、ゲストを迎える立場でないといけません。役職が上でもホスト役が遅れることは本来あってはならないことなのです。それでも万が一、遅れてしまうときは会場である店側の人に案内を十分にするよう指示する責任があります。そのために、複数でもてなす場合は必ず誰かが先に着くようにして的確に指示を与えます。例えば「先にお飲み物を出しておいて」「先に乾杯して食事をスタートさせて」などです。もちろん、どんな場合でも遅れたなら到着後に真っ先にお詫びをゲストに伝えなければなりません。

 

2 ゲストを席に案内する

 

ホストは席次を決めた責任者ですので、席を案内するのが当然です。ただし自らがゲストを全て直接案内しなくてもいいのです。大事なのは「采配」ですので「◯◯さんは、ぜひいちばん奥へ」「◯◯さんが来たら、あの席へご案内して」などと、位置を明確にして人に頼んでもいいのです。

 

3 料理をオーダーする

 

少人数の会食などであらかじめメニューを決めていないのであれば、メニューを決めて店側に指示するのもホストの役目です。ゲストに嫌いなものはないかなどを聞いて、店側の人とも相談して決めればいいでしょう。ゲストにメニューを渡して「お好きなものを」というのは実はホストの責任放棄なのです。ゲストも場所に慣れていないために何がいいのかわからないことがほとんどです。また予算にかまわず好きなものを頼むわけにもいかず困惑します。

ゲストには制約なく好きなものを食べてもらいたい、というのであれば、店側からお勧めなどを聞いたり、ゲストの好き嫌いを聞いたりして「では、こんなメニューではどうでしょう?」と提案の形で好みのものを引き出していくのがスマートです。ゲストの好きに、というときにもその場のイニシアチブをとるのはあくまでホストです。

 

4 飲み物を選ぶ

 

飲み物を決めるときも、料理のオーダーと同じくイニシアチブを取るのはホストです。ワインのオーダーで、よく「私は詳しくないので」と詳しそうなゲストに丸投げする人がいますが、それもホストの責任放棄と思ってください。

詳しくなくても、ゲストに好みを聞いて、店側の担当にそれとなく予算を知らせて提案をしてもらうことはできます。ゲストがよっぽどワインに詳しくても、担当が提案してくれた後で「◯と◯と◯でしたら、何がいちばんお好みですか?」と聞くくらいにとどめましょう。

 

 

5 ワインのテイスティング(必要な食事形式の場合)

テイスティングは古(いにしえ)からホストの役目でした。昔は今のように保存を完璧にするのは難しかったため、ワインの品質が著しく劣化することもありました(違うワインでごまかすようなこともあったそうです)。そこから、ワインの品質は大丈夫か、オーダーしたワインに間違いないかをホスト自らチェックすることが当たり前となったのです。ですから、「ワインのテイスティング」は、ホストが担うセレモニーとしてお考えください。

この場合、ホストが確認するのはワインの品質や品物であり、美味しいかどうかとはまた違うことです。

ワインのテイスティングでは、ソムリエが目の前で抜栓し、抜いたコルクをホストの前におきます。そして、ほんの一口程度をホストのグラスに注ぎます。ホストはコルクの様子や香りを確認し、ワインを口に含み、鼻から抜ける香りを確かめてから飲み込みます。ホストが「結構です」とOKを出したところで、ソムリエははじめてゲストのグラスにワインを注ぎ始めます。そして、最後にホストのグラスに普通の量を注ぎ、ここから飲み始めることができます。これがこのセレモニーの流れです。

時々、グラスをぐるぐる回したり、口に含んだワインを口の中でクチュクチュ言わせたりする人がいますが、それらはこのような場ではしないほうがいい行為です。そういった音をさせてワインの味を確かめるテイスティングもあるのですが、それはワインの買い付けなどの時に商人やソムリエが行うワインの味チェックの時の方法です。食事の時には、相応しい作法ではありませんし、よほどのワイン通でないと行っても意味がないものです。

品質管理が徹底されてきた現代ではワインのテイスティングはごく形式的なものではあります。ですから省くことはできますが、せっかくのセレモニーですからぜひ行ってください。信頼する店舗やソムリエなので、チェックなどしない、と考える方もいますが、ホスト役の人がきちんとした作法に則ってくれると店側もソムリエ側もかえって嬉しいものです。

 

 

6 食事をスタートさせる

 

イベントやパーティなら、挨拶、乾杯、スタートとなりますが、レストランなどでの食事であれば、誰かが食事のスタートを知らせなければいけません。

「どうぞ召し上がってください」とゲストに声をかけ、食事をスタートさせるのはホストです。こんな時に自分の役を果たさず、自分の会話に夢中になっている人は「ダメホスト」ということです。また、何も言わずに自分からいきなり食べ始めるのも、無作法です。

国際標準のマナーでは、ホストがナプキンを取るのが食事の合図となっています。ただこれは大宴会で声が届かないようなときのための合図でもあるので、やはり少人数の時には、「どうぞ召し上がってください」の一言が欲しいものです。

 

 

7 食事をテンポよく進める

 

着席で一皿ずつ出てくるような場所では、食事はおいしいうちにいただかないと意味がなく、作ってくれた側にもいらぬストレスをかけます。しかし、会話に夢中になってくると、料理をほったらかしの人も出て来ます。そんな人には「熱いうちにどうぞ」などと声をかけ、食べることを促すのもホストの役割です。ホスト自身も周りと合わせながら、テンポよく食べ進めるよう気をつけます。ただし、あまり強制的に食べるように言ったりするのは好ましくありません。適度な声がけになるようにしてください。

ビュッフェパーティのような場合なら、サービスを補完したり、人の動きを活性化することもホストの役目です「たくさん召し上がってください」「お飲み物は足りていますか」「デザートが出たようですよ、ぜひお楽しみください」などと声をかけたりするのも、おもてなし役として必要なことです。

 

 

8 テーブルに目を配る

 

レストランでの着席の場合は、テーブルでそれぞれが楽しめているかを注意深く見るのもホストの役目です。

食べ物は順に従ってでてきますが、飲み物がいつの間にか足りなくなっていることがよくあります。。飲み物が切れてしまっても、ゲストが勝手にオーダーすることはできませんので、不満を感じさせる元となります。こまめに気を配り、飲み物の追加をオーダーしたり、水を持ってこさせたりします。料理が滞っていないかにも気をつけたいものです。

また、会話が滞っているところはないかにも目を配ります。できるホストは、会話にうまく入れない人を見つけると、話題を差し向けたりして、皆が楽しく過ごせるよう気を使います。

 

9 食事を締めくくる

 

イベントやパーティの場合は、ホストは適切な時間に挨拶して中締めをします。レストランでの食事であれば、食事の終わりを告げます。

国際標準のマナーでは、着席の食事でホストがナプキンを置いたら、食事が終わった合図となります。実際は、その前にちょっとしたまとめや感謝の言葉などを述べれば良いでしょう。

ゲストが戸惑わないよう、今日はここでお開きか、二次会などの用意がしてあるか、などの案内も早めにします。

 

 

 

 

スマートな会計

 

ホストが費用を負担する接待などの場合、ゲストがいる前でお店のスタッフと金額のことを言ったり、カードも含めた金銭のやり取りをするのは「無粋」な行為です。もてなしを受けたゲストとしては自分の前でそんなことをされると、所在ない思いになります。相手にプレッシャーをかける意図があれば「見せつける」ということもあるでしょうが、あまりいただけない方法です。せっかくですから、スマートに会計を行い、最後までゲストとして楽しんでもらいましょう。

さりげなく会計をすませるために、以下のいずれかの方法をあらかじめ決めて必要な手配をしておきます。

 

・ゲストが食事後にお手洗いに立った時に会計を行う。

・メインホスト以外のホスト側の人間が密かに行う。

・請求書を後から送ってもらう手配をあらかじめする。

・会員制の場所など後からまとめ払いができる場所を選ぶ

・ゲストを先に送り出し、その後で行う。

 

 

ホストの責任

 

前述の通り、ホストは「監督 兼 プロデューサー」なので、自分が全てを行わなくても、一部を部下に任せたり、店側の心遣いに頼ったりすることは別に間違いではありません。場合によっては部下などに全てを任せることも間違いではないのです。

しかし、「ホスト」であるということは、そのもてなし、イベント、パーティにおける「監督責任」「統括指示責任」があるということです。「当事者意識」を持って、自分の役割をこなす責任を忘れないようにしなければなりません。この役割を果たすのは必要なビジネススキルなのです。

 

 

ゲストの役割

 

ホストと対になるのが「ゲスト」。つまり、”招待された客”や”接待を受ける人”です。 ホストに役割があるように、ゲストにも役割があります。この役割の確認もしておきましょう。

ただ親切にもてなされ、それに甘える、というのではゲストとしてもの足りません。ゲストにはゲストの役割があります。その役割とは「ホストの心づかいに応え、その場、その時間を楽しむ」ということです。積極的にホストに協力し、良い時間や場面を作り上げるのがゲストです。

ゲストとして呼ばれたら、時間通りに着く、指定されたドレスコードを守る、ホストの指示を尊重する、積極的に人と交流する、などは自分の責任ととらえておいたほうがいいでしょう。

国際標準のマナーでは、ホストやゲストの役割が明確で、それぞれが権限や義務をわきまえる感覚があります。グローバルに活躍する人は、その感覚を理解しておく必要があります。

 

 

 

エスコート

 

 

日本では「エスコート」と聞いても、どこか自分とは別世界の話と感じる方も多いのですが、実際は「できない」「わからない」では通らない「グローバルスタンダード」です。基本を理解しておきましょう。

 

正しいレディファーストの感覚

 

国際標準のマナーでは「エスコート」は男性が女性をリードして行うものと理解されることがほとんどです。これは欧米の「レディーファースト」というマナー感覚に基づき、女性は厚く遇されるものとされるからです。

「レディーファースト」とは、女性は弱く、守るべきものとして、男性が先に立ってリードしながら最大級に尊重するような振る舞いです。ただ、ご存じのように人権意識が高まり、ジェンダーによる差別の解消が進む昨今では「レディーファースト」のあり方を疑問視する声は少なくありません。

しかし、「レディーファースト」は、国際標準のマナーではずっと「欠かせない礼節」として伝えられてきました。日本では一般に伝わったときに「男性が女性にもてるためのスマートなデート術」のように伝わったため、軽く考えられることがよくありますが、そういう感覚とは全然違うものです。頭で考えるより身体が動くようなDNA的に刷り込まれた、無意識レベルのルールであり、心得がなければ当然のように軽侮されます。グローバルに活躍することが期待されるこれからのビジネスパーソンは、一応の心得として持っておく必要があります。

もちろん、いたずらな性差別は不必要なので、その場その場での判断が求められます。今のところ、ビジネスシーンではレディーファーストはどちらかといえば無視されています。しかし、会議室の入り口で自分は一歩引いてさりげなく女性を先に通すなどの小さな振る舞いは時々見られます。これは本人たちもほぼ無意識でやっていることでしょう。また、昼間の会議でレディファースト的な振る舞いはまったく見られなかったのに、夜の懇親会ディナーでは男性が女性を優先したりエスコートしたり、といった場面は増えます。これは、その場の雰囲気に合う振る舞いとして双方が自然に選ぶからでしょう。

レディファーストは一部の格式高い場面を除いて無理強いされるような強いルールではありません。しかし、ビジネス先進国で活躍するエグゼクティブは心得ており、選択すべきところではする、という風に振舞います。レディファーストは一種の教養なのです。ですから、「知っているが、あえてしない」という選択は理解されますが、「わからない」「照れてできない」はそれとは違う次元のことであり、「無教養」ととられかねません。

日本では「レディファースト」「エスコート」というと、多くの男性が弱った顔を見せます。照れたり不動でいたり、あるいは、「デート術」と勘違いしている人が多いせいか、好きな女性とデートするときのように、やたら腰などを支えようとするセクハラまがいの振る舞いになってしまう人もいます。また、不慣れなのは日本人男性だけでなく、日本人女性もです。レディファースト的に遇されたときに変に遠慮したり、照れたりする人数の多さはたぶん世界でもかなり上位をいく多さです。男性が国際標準的に振舞おうと思っても、変な遠慮や照れで返されると、そこから後に続きません。何より見た目が不自然で卑屈な印象になり、美しくありません。女性もレディーファーストで堂々と振舞えないと、誰も得をしないのです。

重ねて言いますが、レディファーストは一種の教養です。仕事ができても教養が感じられない人は、ビジネスの場であっても尊敬されません。男性でも女性でも、実力があり、人の上に立つくらいの人間であれば、できない方がおかしいくらいと思っておいてください。難しくはありません。ただ親切にし、必要を感じたら手を貸し、そうされたほうはにこやかに感謝を堂々と伝えれば良いのです。

なお、今後は女性もホスト役として人を遇することが増えてきます。女性ホストが男性ゲストに対して「エスコート」をするという場面もあります。そのときに適切な振る舞いをするには、まずよく中身を知っておくことが必要です。

 

レディファースト的な行動

 

「レディファースト的行動」は、すでに説明したホストの役割+アルファという感覚で捉えていただければ結構です。パーティや食事なら、一般的には男性がホストとして、上の手配と進行管理の役割を担います。

それに加えて、男性は女性を優先する、女性に少し手を貸すという振る舞いがあれば十分スマートです。それに対して女性は堂々と優雅に振る舞う、感謝を示す、という行動で応えることで調和が生まれます。

振る舞い方のセオリーは以下の3種類があると考えてください。

 

ーー1ーー

男性:「女性を守り、リードする振る舞い」

女性:「男性のリードを受け、余裕をもってそれに従う振る舞い」

 

ーー2ーー

男性:「女性に手を貸す振る舞い」

女性:「臆せず堂々と、その手に応える振る舞い」

 

ーー3ーー

男性:「女性を尊重する振る舞い」

女性:「感謝し、優先に応える振る舞い」

 

 

振る舞い方の例

 

上の振る舞い方のセオリーは、具体的にどんな振る舞いになるのかを例でお伝えします。「絶対こうしなければいけない」と思い込むより、「こうすると相手が助かることがあるんだ」と客観的にとらえておいたほうが自然に動けます。

 

 

「女性を守り、リードする振る舞い」

 

●男性は女性といる時、常に「ホスト役」に徹する

●道では、女性は車道側と反対を歩かせ、男性は車道側に行く

●階段や坂、水たまりなど、足元が気になるときは手を貸す

●レストランなどでは女性を席までリード(先導)して歩く

※レストランのほとんどの場合は、店側のスタッフが先導して案内しますので、そのときは男性は女性の斜め後方を女性を守るように歩く位置になります。

その場合、歩く順番は①スタッフ ②女性 ③男性、です。

 

レディファーストにおける男性の振る舞いは元々は「騎士」の精神から来ていますので、外敵や危険から女性を守るような振る舞いが良いとされます。

女性はこのような男性の振る舞いをうけて、男性のリードに自然に余裕をもって任せるよう振る舞います。

 

 

「女性に手を貸す振る舞い」

 

●レストランなどで、女性がコートを脱ぎ着するのを手伝う

●レストランなどで、女性が着席するとき、立つときに椅子を引く

※ただし、上のどちらも店側のスタッフが気を利かせて行ってくれる場合もありますので、そのときは任せて大丈夫です。

●重い荷物などは女性の持たせず、代わりに持つ

※ただし、女性のハンドバッグを男性が持つことはしません。女性のハンドバッグは装いのひとつですから、それを男性が代わりに持つと奇妙に見えます

●車に乗るときは女性が乗る方のドアを支える。乗ったのを確かめてドアを閉める

●車を降りるときは先に降りて女性側のドアを開ける

 

「弱きを助ける」ということで、必要な時は手や力を貸します。

女性はこのような男性の振る舞いに対して、臆せず堂々と任せます。そしてほがらかに「ありがとう(ございます)」と感謝を伝えてください。

 

 

「女性を尊重する振る舞い」

 

●レストランなどでは、女性を奥の席(上位席)に座らせる

●女性が座ってから、男性が座る

●女性が中座して立ち上がる時には、男性も立ち上がって見送る

●女性が中座から戻ってきたら、立ち上がって迎える

●紹介の時に男性、女性がいれば、男性を先に女性に紹介する(社交的な場面の場合)

 

女性という存在を尊び大切にしている、という事を動作で表します。女性はこれらの男性の行為に対して、「感謝し、優先に応える振る舞い」で応えます。微笑み、「ありがとう(ございます)」という言葉、軽い会釈などがそれにあたります。

 

 

和の所作ではどうすべきか

 

ホテルやレストランなどの洋風の空間ではしっくりくるのですが、和風な作りの旅館や料亭といった和の空間では、どこか違和感があり、男性女性とも少し浮いて感じることがあります。前に、食事のマナーの国際基準と和の振る舞いの違いをお伝えしましたが、この違いは「エスコートの仕方・され方」にもあると言っていいでしょう。

レディファースト的なエスコートの仕方は、騎士が貴婦人に付き従ってさりげなく背後を守るような所作がふさわしいですが、和の空間では男性が前に立って後ろの女性を守るようなサムライ的な振る舞いのほうがしっくりきます。騎士とサムライではリードの仕方が違うつもりでいてください。

 

 

 「エスコート」は男女間に限らずスマートなサポート

 

エスコートの基本動作として先にレディーファーストについて解説しました。先にも言いましたように「エスコート」という場合、ほとんどが上のように男性がレディファーストの精神に基づいて、女性を遇する事を言うからです。

しかし、「エスコート」自体は男女間に限ったものではなく、ホスト的な立場の人がゲスト的な立場の人に対して行うものだと認識していただいたほうが良いです。パーティやイベントでは、女性が男性をエすコートすることもあり得ます。同じく男性同士でも、女性同士でも、男女混合でもあり得ます。そこに必要なのは、男性らしさでも女性らしさでもなく、人として人を遇する心と、想像を一歩先に働かせる気働きです。ですから、これからは一流のビジネスパーソンとして、性別に限らず、エスコート役の心得を持っておいてください。

 

エスコート役の心得

 

エスコート役の重要な心得は、ホストとして脇役に徹し、主役であるゲストを引き立たせることです。ですから、歩く時、立ち位置などでは「脇にまわり、中央をゲストに譲る」という動作が必要です。

衣服の選択においても、エスコート役は「主役を引き立たせる」という事を念頭におかなければなりません。男性フォーマルの色は黒が主体であるのは、女性をエスコートする際に女性のドレスの色を引き立てるため、とも言われています。男性がオシャレなことは良いことですが、男女でいる際に自己主張が強い男性のファッションに内心眉をひそめる人が多いのは、「ホスト役なのに」という感覚がどこかにあるからです。女性がドレスアップする際も、ゲストとして招かれた時の衣服の選択は華やかなもので良いですが、ホスト役としてゲストをエスコートする側にいるのでしたら、控えめな色や形を選ぶ、という分別が必要です。

男女間に限らず、自分の立場や役回りを考えて、自分が目立つべきか、人を引き立たせるべきかを線引きしてください。

 

 

いかがでしょうか。ホストとは何をすべきか、エスコートとはどんな振る舞いかを「レディファースト」の考え方とともにお伝えしました。ビジネスでも普段の生活でも、男女差別はあってはなりませんが、区別は必要な時もあります。そして「様式美」が必要な場面もまだあるのです。

加えて「人をもてなす」「大切に扱う」ということは具体的にどんなことが必要かは情報としてもっていただきたいと思います。