振る舞いを選べるようになることで、その場で際立ち、選ばれる人になります。

 

 

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「振る舞いを選べる人」は「選ばれる人」になる

 

 

ここに来るまでに知っていただいたことには、「印象コントロール」「人の本質的な心理」「信頼を得やすいコミュニケーションスキル」があります。これらは「相手の尊重」「敬意表現」を言葉だけではなく振る舞いで示すことができるためのスキルです。「マナー」という形式の知識をつけることで、行動選択の幅は広くなります。あなたはその場で意図することにより、自分の感覚でふさわしい振る舞いを選べるようになります。

日本人のメンタリティによる考え方の傾向に「義務感でとらえる」というものがあります。何かを習うと「そうしなければならない」と思い込むことです。マナーや振る舞いの分野ではその傾向が特に顕著に見受けられます。しかし、そう思ってしまっていたとしたら、その思い込みをはらってください。義務感で捉えてしまっては、「やらされ感」が漂い、すべき行動の本質を見失います。例えば、「人に近づく前にはいったん立ち止まらなければいけない」という覚え方をしてしまったら、機械的にその動作をしてしまうことになります。そのような芯のない無機質な振る舞いでは、存在感に繋がりません。

 

 

「そうしなければならない」ではなく「そうすることができる」と覚えてください。大事なのは、あなた自身が自分や周りのためにどうしたらいいのか、という意図を持って振る舞いを自ら選択することです。意図と行動を整合させる感覚が常に必要です。その整合が「芯」となり、存在感を高めます。顕在化し、選ばれやすくなる鍵です。振る舞いを選べるようになることで、その場で際立ち、選ばれる人になります。

 

 

独りよがりにならない

 

振る舞いを義務感で捉える弊害は他にもあります。それは、独りよがりになることです。「そうしなければならない」という思い込みは「そうしておけばいい」という感覚になりがちです。

マナーとは、今までの先人の経験で得られた最適解ですが、未来永劫全ての場所で通じる真理などではありません。状況によってカスタマイズする必要もあります。そのとき頼りになるのは自分の観察眼と「尋ねてみること」です。

 

例:何かをしてあげる前に「こうしていいか?」ということをきちんと聞く。

 

「失礼、ご挨拶をさせていただいていいですか?」

「よかったら、お手伝いさせていただきますが、いいですか?」

 

このように尋ねてみることで、「相手の同意」や「許諾」をもらえれば、問題は起こりません。しかし、それをせずに、自分の中で「こうしとけばいいはずだ」と考え、相手が予期せぬことをしてしまえば、それは「不調法」「不親切」「礼儀知らず」になる場合が往々にしてあります。相手の身になって想像し、観察し、迷ったら尋ねてみることも覚えておいてください。

ここで、わざわざこのような説明をする理由は、「そう習ったから」「あの人がそう言っていたから」と考えなく一律のルールで行動する人が意外に多いからです。仕事上のことならそのような理由は経験のない新人でもしないくらい稚拙な言い訳だと感じるはずです。もし、あなたがそんな言い訳を聞いたら、「習ったことに考えなく従うのではなく、習ったことをふまえた上で、自分の目で状況を見ること、そして臨機応変に判断するのが大事だ」とアドバイスするのではないでしょうか。

 

 

しかし、ことマナーや振る舞いのことになると、いい大人が「そう習ったからやったのに」「あの人がそう言ったから、あれでいいはずだ」と言い訳することが多いのです。そんな情けない態度はキャリアのある社会人にはふさわしくありません。自分で状況判断して適切な行動(振る舞い)を選択する意識が何より大切です。

 

 

メリハリがなければ伝わらない

 

マナーが敬意表現の手段であるからには、「そうとわかること」が必要です。ですからメリハリを大事にしましょう。

ここで言うメリハリとは、声の大きさやカツゼツなど言葉のことだけではなく、微笑みなどの表情、声のトーン全体、動作のなめらかさが加わり、しかも大げさではない自然な振る舞い方になることです。特に、挨拶や感謝、謝罪や礼の言葉は、表情や声のトーンをともない、明確に口にするようにしてください。

 

例:

「おはようございます」(相手の目を見てはっきりと)

「失礼しました」(人にぶつかった時や知らずに道をふさいでしまった時など、相手を見て申し訳なさそうに)

「ありがとうございます」(椅子をすすめられた時やドアを開けてもらった時など、嬉しそうな笑顔で)

 

このように、自分から積極的に声を出し、表情ほかでも同時に表現することが大事です。

 

 

ここからの説明では、先人の経験で得られた最適解から知識を紹介する都合上、「こんな時にはこうすべき」「これが正しい」という記述は多くなります。しかし、常にご自身でその理由や目指すところをしっかりと汲み取ってください。

繰り返しになりますが「自分はこの場ではどうすべきか」を考え、自分の責任において判断できるようにならなければ「卓越した存在感」は手に入りません。「やらされ感」をなくし、自分で行動選択する主体性を持つことが重要なのです。