ビジネス先進国では、社会上層部にある人間は「成功する」ために声や話し方のトレーニングに投資します。そのような人たちの声や話し方にはいくつかの興味深い特徴があります。あなたにも真似できます。
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(トータル時間 14:51)
■成功する人の声や話し方の特徴(05:24)
■信頼される人のしっかりした発声を身につける(09:27)
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成功する人の声や話し方の特徴
声や話し方は成功に直結する
ビジネス先進国では、社会上層部にある人間は、外見のみならず、表現力を高めます。人間の持つ印象が人を魅了したり、説得するためにいかに重要かを知っているからです。それがエグゼクティブプレゼンスです。
特に声や話し方は、人の感情や思考を動かし、説得力を高め、自分の影響力を直接高める要素なので、政治家や企業トップなどはボイストレーニングやスピーチトレーニングをするのが常識です。それは「成功する」ための当然の投資なのです。そのような社会上層部の声や話し方についていくつかの興味深い研究結果が出ています。あなたも真似できることですので、ぜひ参考にしてください。
成功したいなら低い声で話せ
成功者には「声が低い人」が多い、という研究結果が2013年に出ています。アメリカのデューク大学による研究発表によると、700人のエグゼクティブを対象とした調査では、一般より平均で22.1ヘルツ低い層が一般と比べて日本円にして年収が約1,900万高いという数字が出たと研究発表がされています。
つまり、声の周波数(声の高さ・低さ)と成功度(年収の高さ)には相関関係が認められることがわかったということです。
なぜ、声が低い方が成功するのか?という直接要因までは解明できていないそうですが、人間の本能の研究からすると、甲高い声よりも低く落ち着いた声の方が相手の意識に染み込みやすいのではないか、ということが考えられます。
私たちの本能的な部分は警戒心が強いのです。警戒心を呼び起こすような刺激は、説得したいときや影響を及ぼしたいときには不向きと言えます。ですから甲高い声のように、神経に触る声はプラスに働きません。低く穏やかな声のほうが、功を奏するのです。、それが最終的に説得力や影響力を高めているのではないでしょうか。
催眠術師はほとんどの場合、低い声で話します。それは相手の無意識下に働きかけるときに効果があると悟っているからではないでしょうか。
また、男性と女性では声域が違い、女性のほうが高めの声になりますが、この研究結果からいくと、女性も比較的低めの発声をしたほうが説得力や影響力の点では有利となることが考えられます。「成功したいなら低い声で話せ」と覚えておいていいでしょう。
聞きやすいスピードの研究結果
聞きやすい話し方とはいったいどれくらいのスピードだと思いますか? これもある研究結果が出ています。
国際パフォーマンス研究所代表の佐藤綾子氏(パフォーマンス学博士)の研究によれば、日本人が対話の中で最も聴きやすい速度は「266文字/1分」であることがわかっているそうです。説の一つで、絶対ではありませんが、実際にこのスピードで話してみると、なるほどわかりやすく遅すぎもしないスピードであるのは確かです。
相手との関係性によっても適度な速さかどうかは変化するので、気の置けない2、3人での日常会話では少し遅すぎる感がありますが、もう少し公的な立場にあるところではちょうどいいでしょう。例えば、会議での意見発表、プレゼンテーションやスピーチなどの場面です。
「あの人の言うことはわかりやすい」「納得できる」という印象は、こうしたスピードも関係があるものなのです。ついていけないスピードで話されると、人の無意識は聞く気をなくします。反対に遅すぎるスピードでも同様に聞く気がなくなります。自分が話すスピードを意識して、「落としたほうがいいか?」「上げたほうがいいか?」と考えるくらいの客観的な耳を持ちましょう。
サンプルを聞いてみて、ご自身でも266文字/1分のスピードをいちど体感しておきましょう。自分で話すのを録音して、確認してみるといいでしょう。
サンプル:
信頼される人のしっかりした発声を身につける
「説得力ある声」を生む腹式呼吸
成功する人は、人から信頼されやすい人です。声や話し方でそのような印象を与えたいなら、「腹式呼吸による発声」は欠かせません。「腹式呼吸による発声(腹式発声)」は、演劇や歌唱に携わる人は必ず身につけます。ビジネスでも、リーダーポジションにある人間の話し方には必要です。特に人前でスピーチなどする機会の多い人は必須です。
「腹式呼吸による発声」は、落ち着いた安定感のある発声になります。声の深み、大きく通る声も出しやすくなります。これらは話すときの「説得力」を高めるのに欠かせない要素です。 まだあまり知らなかった場合は、ぜひこれから身につけていってください。
腹式呼吸・腹式発声とは
呼吸には大きく分けて「①胸や肩の筋肉を使ってする呼吸の仕方」と「②横隔膜を使ってする呼吸の仕方」があります。
①を「胸式呼吸」、②を「腹式呼吸」と言います。 どちらも呼吸を行うのは「肺」で変わりありませんが、空気を肺に取り込む時に①を使うか、②を使うかで呼吸をするときの様子や、取り込める空気の量が違います。
①(胸式呼吸)の場合は、呼吸の時に肩や胸が上下するのがわかりやすく、空気の量も多くありません。そのため、①は、大きな声が出しにくく、ハアハアと呼吸をする様子が外に現れて、落ち着いた雰囲気は出しにくい呼吸方法です。
それに対して②(腹式呼吸)は、はたから見て呼吸に伴う動きがわかりにくく、比較的空気を多く取り込むことが可能です。ですから、深みのある声を出しやすく、声の大きさなども加減しやすくなります。そして話している最中に安定した印象を見せることができるのです。
腹式呼吸の練習方法
Step 0
やったことのない人は、まず自分の呼吸はどこでしているかを確認してください。 息を吸ったり吐いたりする時に胸から上にかけてがよく動くようであれば、胸式呼吸を普段使っています。そうであれば、「動くのは胸より下、お腹のほう」とイメージしましょう。
Step 1
お腹に手を当てます。ずっとお腹の動きを確認しながら練習を行います。
Step 2
口を閉じ鼻からゆっくり息を吸ってください。空気はお腹に入っていくイメージです。実際に入らなくても、腹筋を使ってお腹を膨らませていってください。そのまま息を吸えるだけ吸いますが、肩や胸を動かしたり体をそらしたりしてはいけません。動かすのはお腹です。姿勢を変えず、静かに吸っていってください。
Step 3
限界まで吸ったら、口を軽く開けて歯の隙間から押し出すように息を吐いてください。その時腹筋を使ってお腹を引っ込ませていき、空気を押し出していくイメージで行います。そのまま静かに同じペースで、息が続く限り吐き続けます。最後の方は腹筋が硬くなりお腹のあたりが疲れてきます。
Step 4
1〜3までを何度か繰り返しましょう。 その都度、息を吸うとお腹が膨らむ→息を吐くにつれてお腹が引っ込んでいく→吐ききったところでお腹のあたりが硬くなる、という感触を手で確かめます。
Step 5
まず、呼吸がどれくらいもつかを確認します。 呼吸の仕方は2、3と同じですが、3で息をはく時に、歯の間から空気を強く出して「スーッ」という音を出します。息がもつ限り「スーッ」と音を出し続けてください。 このとき守っていただくのは、音の出し始めから終わりまで、同じ音の大きさ・強さを保っていただくことです。20秒以上、音が同じ大きさ・強さを維持できるのが理想です。 息が続くようであれば、「あー」と声を出して、やはり20秒以上安定した音の大きさ・強さで出せるまで練習してください。
このような練習で、呼吸をするとき横隔膜を利用して肺に大きく息を吸い込むことを身体に覚えさせることができます。 あとは日常で、鼻から静かに息を吸い、息を吐く時に口を開いて話す、ことを意識してください。自然と腹式発声になるはずです。
では、最初の部分をやってみましょう。
・お腹に手を当てて確認しながら行ってください。
・口を閉じて、鼻から息を吸ってください。お腹が膨らむイメージです。お腹に空気が入っていきます。
・十分吸ったら、口から息を吐いてください。
・お腹から空気を出すイメージで吐き続けてください。腹筋がだんだん硬くなります、
・もう一度、鼻から息を吸ってください。お腹に空気が入っていきます。お腹が膨らんでいきます。
・今度は歯の間から空気を押し出しましょう。スーッと音を出していきます。
・お腹がだんだんへこんでいきます。腹筋が疲れたようだとうまくいっています。
最初の練習はこのようになりますので、参考に練習を行ってください。
お腹の力(丹田)を意識する
安定感と精神力の強さはこの場所から
日本語では「肚を決める」「肚が座る」などの言葉があるように、腹部は身体的なことばかりでなく精神的な強さにも重要な部分です。
その「肚の力」や気を集める場所を、武道の世界では「丹田」と呼び、ここに力を込めることを教えます。 丹田は人間のおへその下3〜5cmほどのところにあると考えられています。「考えられている」という表現になるのは、実は医学的、解剖学的にも裏付けがあるわけではないからです。
ただ、武道の達人、舞台劇の俳優などは、腹部の安定を示し、また身体のエネルギーが集まる場所として、丹田の存在を信じ鍛えます。いわば、体内のパワースポットのようなイメージです。 実際に丹田を鍛えようとすれば相当な鍛錬が必要ですが、簡単なメンタルコントロールとして、イメージワークだけでも結構です。
では、いちどイメージワークをやってみましょう。
1 鼻から息を吸いながら、手をゆっくりと上げる(肘をのばして、手で円を描くように上げていく)
2 自分の中にある「気(エネルギー)」を上に集めていくイメージを持つ
3 気が集まったら、その気を押し下げるようなイメージで手を下げていく。
4 「丹田」となる場所に、手で「気」を圧縮して集めていく。
お腹に力強さを感じましたか? 丹田は、腹式でのしっかりした声の出しかたや、正しい姿勢・歩き方ができていると、力が集まるのを体験できます。ぜひ、話すとき、立つ時、歩くとき、この「丹田」の存在を意識してください。
いかがでしょうか。成功する人に必要なのは、頼りがいや安定感、信頼に足る様子です。それは一部の社会上層部の人たちにだけ必要なものではなく、社会で活躍するビジネスパーソンにもいつでも必要なものです。
頼りがいや安定感、信頼に足る様子を声や話し方で実現しようとするときにはご紹介したような要素が大きく寄与します。そして、それらは決して難しくないことがわかったと思います。ぜひこれから意識してください。