さまざまなメッセージを伝える「アイコンタクト」。この使い分けを知っておくだけで、相手に自分を印象付けたり、コミュニケーションで影響力や説得力を高めることができるようになります。

 

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アイコンタクトについてもっと知りましょう

 

「アイコンタクト」とは何か?

アイコンタクトとは?とあらためて聞かれたら答えられますか? 当たり前に使う言葉ですが、この際ですからもう少しよく知っておきましょう。

「アイコンタクト」は心理学の定義で言うと、互いの「目の部分を含む顔」を見ることです。「注視」することと顔の表情の変化が人の知覚に刺激を与え、さまざまなメッセージを伝えるとともに、相手の心理に何らかの反応や感情を起こします。

「注視」とは、視点を合わせていくことです。この時、カメラのレンズのように目の焦点の合わせ方がポイントとなります。

「アイコンタクト」という場合、基本的には1m以内の距離でのことを想定していますが、実際には遠く離れた場所からでも、アイコンタクトで人の知覚に刺激を与えることは可能です。多勢を相手にするスピーチやプレゼンが良い例でしょう。あなたが聞き手を見る視線に「アイコンタクト」の意識を持つだけで、聞き手があなたに持つ関心やあなたの話を聞く意欲は変化するのです。

 

アイコンタクトの力

そのアイコンタクトの力を使いこなすヒントになるのが、非言語コミュニケーションの研究者ヴァーガスの言葉です。  ヴァーガスは、アイコンタクトの「注視の度合い」の違いについてこのように言っています。

 

「見ると眺めるは違う」

 

 この言葉の意味は、対象に焦点を当ててアイコンタクトする「見る」と、広い範囲に向けてただ視線を向ける「眺める」では、全く異なる印象になる、ということです。 あなたは何となくいつも「眺める」になってしまっていないでしょうか。  

「焦点」を中心に、アイコンタクトの「使い分け」を知っておきましょう。焦点の使い分けを知っておくだけで、相手に自分を印象付けたり、コミュニケーションで影響力や説得力を高めることができるようになります。

 

アイコンタクトの3段階のコントロール

 

注視の度合いや表情が違う下記の3つのアイコンタクトを状況に合わせて使い分け、あなたが伝えたいことをより的確に伝えましょう。

 

1.視野が広くて優しい「ソフト」

2.相手の顔や、もっと絞るなら眼に向けて、ぐっと焦点を絞る「フォーカスド」

3.焦点は少し絞り、眉や眼を意味ありげに動かす「デビルス」  

 

 

「ソフト」は見えるものをふわっと見る感じです。上で言えば「眺める」のほうです。対象となる相手の顔を含め、周囲の背景まで視界に入れるようなイメージです。柔らかな印象を生みたいとき、対象となる相手にあまり圧力をかけたくないときのアイコンタクトです。

「フォーカスド」は焦点を絞ります。例えば相手の顔全体を見るより、目に焦点を合わせたほうが印象や圧力は強まります。「フォーカスド」はさらに目の瞳孔に合わせるかのような焦点の絞り方で相手へ強いインパクトを与えます。重要なことを伝えるときや、相手の関心をそらしたくない時に向く、強い視線です。

「デビルス」は、相手の目に焦点を合わせると同時に、眉の上げ下げをすることによって作られる、どこかユーモラスで印象深いアイコンタクトです。慣れないと特に難しいですが、海外の映画で表情豊かな役者を参考にすると雰囲気がわかりやすいでしょう。  

 

(眉のニュアンスの例)

下記の写真は俳優のジョージ・クルーニーが米国の対談番組に出た時のものです。観客を見渡しながら、ソフトなアイコンタクトで答えているのが上の写真、面白い声掛けに眉を上げて「デビルス」的に目で応答したのが下の写真です。

観客を見渡しながら、「ソフト」答えている

眉を上げて「デビルス」的に目で応答

 

「色目」に見るアイコンタクトの技術

 

色目の使い方?

 

「色目」という言葉があります。色っぽい目つきとか誘惑する時の眼差しですね。これもアイコンタクトの一種です。

表情研究家による「色目」の具体的な方法はこうです。

●ふと、目を上げる(相手が予測していないときに急に目線を合わせる)

●相手を深く探るように見る(アゴを少し下げて、やや下から「フォーカス」で見る)

●視線を相手から外して落とし、元に戻す

 

この間の表情は、基本的にポーカーフェイスです。見られた相手からすると「な、なに?」とドキドキしそうですね。ビジネスでは使わないアイコンタクトですが、例に出したのは、わかりやすく技術が入っているからです。

 

目を合わせるだけではない、「アイコンタクトの技術」

 

この中には、ただ目を合わせるだけではない、「アイコンタクトの技術」というものがつまっています。簡単にご説明しましょう。

 

1 相手を見るスピードとタイミング

何も見ていない状態から相手を見るまでのスピードが速いだけ、相手に与える刺激は強くなります。

礼儀正しく見る場合は、相手にいたずらな刺激を与えたくありませんので、相手とタイミングを合わせながら、徐々に相手に視線を合わせていくような行動になります。そして、相手の注意をすぐに引っ張りたい場合や強い感情を与えたい場合は、素早く目を合わせることが効果的です。色目などはまさに「不意打ち」のタイミングです。

 

2 アイコンタクトの焦点と目の角度

アイコンタクトの焦点は「アイコンタクトの3段階のコントロール」でお伝えした通りです。ここに目の角度を合わせると、かなりバラエティに富んだアイコンタクトが実現できます。

少し下からの目線で「フォーカスド」、やや上からの目線で「ソフト」など、焦点と角度の組み合わせで印象は全く異なります。また、他にも顔の動きを取り入れると、心情表現は無限に近いくらい生まれます。

例えば、いったんは真正面から見ていたのに、あるタイミングでアゴをサッと下げ、下から見るような目線にすると「本当ですか?」と疑いのニュアンスが伝わりますよね。自然に行っているときも多いでしょう。

 

3 視線のはずし方

相手をずっと見ているわけにもいきません。適度とされる注視の長さは3.3秒との研究結果も出ています。どこかで視線を外さなければならないですが、そのはずし方でニュアンスが異なります。

礼儀正しいはずし方は基本的に下方向です。人と話している最中も、ゆっくりと書類に目を落とすなどしてはずすのが適切です。

真横にはずすと、少し穏やかではない雰囲気が伝わるでしょう。人と話をしている最中に何かに関心が急に引かれた場合でも、相手に変な印象を与えたくないときは、いったんは下に視線を落とすようにします。

 

これらの技術は、意識しないで自然に使っている人もいれば、まったく無頓着でいる人もいます。考えすぎは良くないですが、ご紹介した1〜3で自分のアイコンタクトや表情はどんな風に工夫できるのか、いちど試してみてください。

 

 

口元の表情との組み合わせ

 

目元と表情の組み合わせをパターンで覚えておくと、人に与える印象をコントロールしやすくなります。

 例えば、人との挨拶などの時や名刺交換のとき、下記のような組み合わせのうち、表現したい自分に近い印象のものを選んでみてください。口元の表情については「スマイルライン」の章で思い出してください。

 

ソフト×ハーフスマイル =非常に好意的な印象。ゆったりと優しい雰囲気が伝わります。  

フォーカスド×アルカイックスマイル =少し厳しく引き締まったイメージになり、「甘く見ないでください」というニュアンスが伝わりやすい  

デビルス×アルカイックスマイル =ユーモラスながらひと癖ありそうなイメージが印象を強める。「油断しないでください」といったニュアンスが伝わりやすい    

 

これらは例に過ぎません。他にも「×フルスマイル」「×ポーカーフェイス」を加えると、色々な表情パターンが考えられます。

 

 

いかがでしょうか。場面や状況、あなたが相手に与えたい印象によって適切と思える表情とアイコンタクトを「選択」することで、相手に与える印象をコントロールすることになるのです。これに限らず、常に「選択する」意識を持ちましょう。

そうすれば、あなたは自分が意図した印象や心情を自在に表現できる力を持てるようになります。