「聞き上手な人が本当のコミュニケーションの名手」と聞いたことがあるでしょう。「話す力」と同等に、いえそれ以上に大切なのが「聞く力」です。その極意を理解しておいてください。
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(トータル時間 12:44)
■聞き上手のルール・フィードバック(07:41)
■傾聴3種の神器(05:04)
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「聞き上手」のルールとは
「聞く」ことの意味を理解する
少し前までは「コミュニケーション」というと「どう話すか」「何を話すか」と自分による「発信」ばかりに気を取られている人が大半でした。しかし、今では「受信能力」こそがコミュニケーションにおいて重要な役割を果たすことがわかってきました。
もちろん、コミュニケーションは「お互いに伝えたいことを不足なく伝え合う」ことが最終目的です。「伝える」ためには、自分が「話す」というプロセスがより重要であると思うのは当然です。 しかし、「聞く」ことがうまくできると、「話す(伝えたいことを伝える)」ことも同じくらいうまくいくのです。
どうして「聞く」ことがうまくできると、「話す(伝えたいことを伝える)」ことも同じくらいうまくいくのでしょうか。ここで「返報性の原則」と「コップ理論」という説をご紹介しましょう。
返報性の原則
「好意の返報性」という言葉をお聴きになったことがあるでしょうか。 人間は他人から何らかの好意を先に、そして見返りなしに与えられると、その好意を何か自分の好意で返そうとする心理が働く、というものです。人は無意識的な反応として受けた恩義を自然に相手に返そうとするのです。
あなたが相手の話をうまく聞いてあげて、相手がそのおかげで心地よく自分が言いたいことを話せたとします。一通り話し終えた後に相手が「ぜひあなたの言いたいことも聞かせてほしい」という可能性が非常に高いはずです。聞き上手であれば、あなたの話を積極的に聞こうとする人間を増やすことができるのです。
人の無意識は、このように「知らないうちに」動かされるものです。 相手の話を聞こうとする姿勢を持つだけで、あなたの説得力や影響力は相手の中で自然に広がっていると想像してください。
コップ理論
「ここに一つコップがあるとする。そのコップになみなみと水が入っていると、それ以上の水は入らない。別の器から水を足すためには、そのコップにもともとある水をこぼす必要がある」。
「コップ理論」が示すのは、このような内容です。 つまり、人が言いたいことでいっぱいになっている時に、他の人間からの言葉は頭に入りにくいのは至極当然のことです。 そうであれば、まずはその人が言いたいことを聞いてあげたほうがいいでしょう。
相手は言いたいことが一通り言えれば、他の人間の言葉を受け入れる状況になりやすいのです。 前の章でお伝えしたとおり、人は本質的に自分自身を愛し、信頼する強い傾向を持ちます。そして、その自分を理解してくれていると感じる人に対しても信頼や親しみを感じやすいのです。
前の章でお話しした「同調スキル」は、相手の本能的な警戒心を下げ、受容度を高めるスキルです。「聞く技術」は、相手の言いたいことを引き出すことができるので、相手から信頼され自分の言うことも伝わりやすくなる環境を作るスキルです。これを磨けば、単に好意や信頼を受け取れるだけでなく、人の発想や成長を助ける力ともなります。
反応や表現に配慮する
自分自身ではわかりませんが、人間は無意識下で外部の状況をモニタリングしています。人間にとって特に重要なのは人の反応です。特に会話中であれば、人は相手の様子によって、何をどんな風にどれだけ話すかを無意識で繊細に選んでいると思ってください。
話す相手の態度とは、表情や視線や声や話し方の調子、姿勢やちょっとした動きまでが含まれます。あなたがそれらを「聞いていて楽しい」「この話は興味深い」「あなたの話をもっと聞きたい」と相手に伝わるようにチューニングすれば、相手のコミュニケーション意欲は刺激されます。脳が活性化し、言葉や発想が湧き出しやすくなります。
その結果、「この人との話はたのしい」「こんなに色々話せたのは初めてだ」と相手は満足感を味わいます。そして、聞き手である人物への評価は高まり、信頼感が生まれます。「聞き上手」というのは「反応・表現上手」であり、それゆえに人として評価され信頼を受け取ることができるのです。
逆に相手のコミュニケーション意欲が減退するような態度を示すと、相手は言うべき言葉を見つけにくくなり、発想もしぼむような閉塞感を味わうことになります。その結果、お互いのコミュニケーションの質は低下します。
相手のコミュニケーション意欲を減退させる態度とは以下のようなものです。
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- 「相手の話に対する反応が薄い」
- 「相手から見るとネガティブな反応になってしまう」
- 「いや」「違うよ」など否定言葉が口癖にある
- 「すぐ反論めいたことを言う」
- 「余計な言葉や合いの手を入れてしまう」
- 「相手の話に自分の話をかぶせてしまう傾向がある」
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自分のふだんの会話を省みて、自身に上記のような傾向がないか見直してください。もしも、顧客や上司、部下に対してこのような反応になっていては評価を下げる元です。 この機会に「聞き手としての態度=傾聴の態度」をあらためて整えましょう。
フィードバックの種類を選ぶ
聞き上手は相手の話す意欲をうまく引き出すことができます。つまり、相手を「ノセる」ことができるのです。それは相手にとって意味ある「フィードバック」ができているからです。
「フィードバック」とは、行動などに対する反応や結果に対する評価を、その行動や結果の当事者に対して返すことを言いますが以下の種類に分けられます。
1 感謝/賞讃
2 改善などの指示、アドバイス
3 次段階への指示、アドバイス
4 批評/批判
いずれもフィードバックとしては大切な項目ですが、相手の話を促し良いコミュニケーションを取ろうとするとき、選択に配慮する必要があります。
人が無条件に心を開きやすいのは、「1 感謝/賞讃」です。ですから、会話の開始直後は、まず「1 感謝/賞讃」をできるだけ選択すべきです。
「2 改善などの指示、アドバイス」「3 次段階への指示、アドバイス」は、相手が心を開き、あなたの言葉を聞くための「受容度」がある程度高まってからでないと、相手の中に入りにくい項目です。相手の様子を見ながら移行していくよう配慮した方がいいでしょう。
「4 批評/批判」は言い方にもよりますが、相手に本能的な「不快」を感じさせやすく、反感や反発を引き起こしやすい項目です。この項目について言及する場合は、コミュニケーション全体でも十分にラポールが築いた関係性が望まれます。そのため、聞き上手な人は会話の始めの段階では言及しません。その前に十分に話を聞き、相手が受け入れる環境になるまで待ちます。コミュニケーションに失敗しやすい人は、それがなかなかできない人に多いのです。
フィードバックの選択に気をつけながら会話を行うと、相手は適切に評価されていることに心理的な安心感を感じたり、自己をもっと開示したり表現したりする意欲を持てるようになります。相手にとっては実のある会話となり、聞き手への信頼感はより一層高まります。
傾聴・3種の神器
誰でもできそうだができている人は少ない
「傾聴の態度」つまり、人の話を聞く態度では「三種の神器」と言われる3つのポイントがあります。 それは「笑顔」「あいづち」「うなずき」です。
誰もが普通にできそうなこの3つのポイント、残念ながらきちんとできている人はそれほど多くありません。このような簡単なことであればあるほど「知っているができない/有意識無能」の状態になりやすいのです。
「笑顔」「あいづち」「うなずき」の目的は、あなたが話している人に対し、その人の話が「楽しい」「興味深い」「もっと聞きたい」と感じている、という反応を返すことです。相手から見てあなたの「笑顔」「あいづち」「うなずき」それぞれが、その反応を十分に伝えるものでなければなりません。
聞くときの笑顔
このポイントは表情や笑顔の基本を身につけたことを前提にお話しします。わかりにくいところは、印象コントロールのトレーニングの基本の部分を見直してください。
目をきちんと開いて、相手とアイコンタクトしながら口角を十分にあげてください。知的で暖かな雰囲気を作ります。ここでのポイントは「話が興味深い・おもしろい」「話を楽しんでいる」「もっと話してほしい」ということが表情で伝わることです。
基本はアルカイックスマイルです。話の盛り上がりによって、ハーフスマイルやさらに笑顔になったりと、相手の話に反応して表情にも変化をつけてください。
最もダメなのは、薄ら笑いや冷笑、ニヤニヤ顔といった表情です。 薄ら笑いは口角が十分に上がりきっていない顔、冷笑は口角は上がっていても眉根が寄っていて小バカにしたような表情、ニヤニヤ顔は惰性で笑っているような笑いで反応しているような顔です。
あいづちのバリエーション
あいづちとは、相手の話に調子を合わせて短く応答することです。「うんうん」から始まって、「ふーん」「なるほど」「そうか」「へえ」など、色々なバリエーションがありますね。
「いいね」「よかった」「嬉しいですね」など、相手の感情に沿うような言い方も効果的です。
同調スキルである、相手の言葉の反復「バックトラッキング」も一種のあいづちです。「へえ」「なるほど」など単調なあいずちが続いたら、「バックトラッキング」を入れてみてください。「昨日はゴルフだったんだ」と相手が言ったら、単純な反復で「ゴルフに行ってたんだね」と言ってもいいですし、「昨日ゴルフ?」と短く差し入れる言い方もあります。
人がする話の中身には主に3つの要素があり、その3つそれぞれを意識したあいづちを打つように考えると、あいづちのバリエーションは広がります。
話の3つの要素とあいづち例
⚫︎その人に起こった出来事・その人の体験
→その出来事や体験に対して
「わあ」「ほお」「すごい!」「そんなことがあったんですね」…etc.
⚫︎その人の行動(○○した、○○できた、○○しなかった、○○できなかった)
→その行動に対して
「すごい!」「やりましたね」「惜しかったですね」…etc.
⚫︎その人が感じた感情や思い
→その感情に対して
「それは嬉しいですね」「感激ですね」「楽しいですね」「残念ですね」…etc.
話を深める「うなずき」
「うなずき」は、肯定や同意、承諾などの印として首を縦に振ることです。相手の視覚に肯定反応をはっきりと示しやすいので、相手の話を自然と促し、話を深めることに役立ちます。 単調なうなずきばかりでなく、バリエーションをつけて感情の強弱を表現しましょう。
最初は「うんうん」と単純なリズムで相手に「興味あり」と伝えます。いったん話がわかると「うーん」と大きいうなずきを入れると「納得、同意」が相手に伝わります。
視線をフォーカスにし、笑顔で「うん、それで?」とあいずちと組み合わせながら言うと、相手に話の展開や進展を自然に促せます。 このように、話の内容に合わせて反応を変えるようにすると相手が話しやすくなります。
うなずきのバリエーション
1. 小さくリズミカルに「うん、うん」=興味や同意を示す
2. 大きくゆっくりと「うーん」「うん!」=納得を示す
3. うなずき+あいづち=もっと話してほしいと強い興味を示す
(例:「うん、うん。なるほど」「うん、うん。それで?」
いかがでしょうか。聞き方が上手い人は、ただ聞いているだけでなく細かい気遣いや工夫をしています。それが「聞く技術」なのです。いずれも難易度は高くないので、ぜひ技術を磨いてください。