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色や柄、素材や質感などで出す「格」

 

「格(クラス感)」を意識しましょう

 

存在感を出したいあなたには服装にも「格(クラス感)」が必要です。この言葉はこれまで何度か出てきました。感覚的なものなので、説明が難しい言葉でもあります。

「格(クラス感)」とは、その人を「社会的に上位である」と感じさせる要素です。ライフスタイル・経済状況、ポジションや立場、社会的な成熟度など「人間としての上質さ」「付き合うに値する人間である」と感覚的に示せることです。

「格(クラス感)」を上げることは、自身という存在の人間としての上質さを示せるだけでなく、自身が場所や相手への一定以上の敬意を示せることです。

服装はあなたのラベルですが、安っぽいラベルをつけたくはありませんよね。 適切な「格(クラス感)」を意識しましょう。それが自身のセルフイメージを上げ、周囲の人の信頼にも応えることになります。

品格や威厳を服装で表現するときには、その「色や柄」「素材や質感」は「格(クラス感)」に大きな役割を果たします。特に色や柄は視覚に訴えやすいものです。それぞれの考え方と各場面の演出方法をご説明します。

 

色や柄にはルールがある

 

ビジネスドレスコードの「硬い」「華やか」「日常的」それぞれの場面を使い、適切な色や柄の選び方を考えていきましょう。  

硬い場面では

もともとフォーマルに使われる色である、黒やシルバーグレーは、通常はインフォーマルであるビジネスアタイア(ビジネス服)には使われません。それは儀礼的であり、日常には向かない色と考えられるからです。

インフォーマルでは、儀礼に使われる色は使わず、それに近い色を使います。儀礼に使われる色に近い色は重みがあり、威厳が出る色なのです。それに近い色とは、次の3つです。

 

●濃いネイビー

●ダークグレー

●チャコールグレー

 

これらは謹厳なイメージの色であり、威厳とともに混じり気のない清廉さを表す色でもあります。中でもネイビーは清廉のイメージが強く、信頼感を演出するいちばんの色です。ネイビーのスーツは必ず持っておきましょう。

硬い場面では、ネイビー、ダークグレー、チャコールグレーの無地が基本です。柄がある場合も織り柄であるシャドーストライプや目立たないグレーのピンストライプ(ピンでついたような点の細いストライプ)くらいにとどまります。

硬い場面では、中に着るシャツまたはインナーは白以外になく、例え薄い色であっても向きません。カラーシャツやカラーインナーは「華やかな場面」から着ていい、という感覚が妥当です。

男性の場合はネクタイの柄はピンドット、小紋、そしてソリッド(無地)。この3種から選べば間違いありません。

女性は代わりにスカーフを、と言いたいところですが、硬い場面でのスカーフはお勧めしません。代わりにパールや一粒ダイヤなど、シンプルで品の良いアクセサリーを加えることをお勧めします。  

 

華やかな場面では

 

男性スーツの色は、品格を演出しやすいダーク色をベースにした方がいいでしょう。特に時間帯が夜になる場合はダークスーツが知性や品を感じさせます。柄も控えめなほうがいいですが、硬い場面とは違い、ピンストライプのほかにペンシルストライプ、織り柄のヘリンボーンなども合います。華やかな場面のネクタイは、ピンドット、小紋、ソリッドに加えてペイズリー柄などの古典柄も綺麗です。

女性は、アクセサリーを大ぶりな輝きのあるものに変えると、華やぎが出ます。  女性もダークな色のスーツなどに華やかなアクセサリーをつけるのは格が高く感じさせます。また、場面によっては、華やかな色合いのスーツも適切です。インフォーマルドレスを身につけるときには少し光沢のあるダーク色か無彩色が品があります。黒、ミッドナイトブルー、グレーなどはアクセサリーの付け方や肌の出し方でシックでありながらゴージャス感が出ます。

 

 

日常的な場面では

 

日常の場面では、やや明るめのネイビー、ダークブラウン、やや明るめのグレーなど、色に幅を持たせても良いでしょう。 女性はさらにベージュやピーチベージュなどの薄くて明るい色、赤やグリーンなどはっきりした色を使えます。

ただし、ポイントとなる一色以外は無彩色に抑えてください。また、身につける色は合計で2色以内を原則とします。

男性のネクタイは、赤系やオレンジ系が入ったストライプ(レジメンタル)やスーツ色に合わせたソリッド(無地)など明るいものもいいでしょう。 しかし、強い原色を使ったり、チェック柄や大きなドット、非常に派手な柄は選ぶべきではありません

 

 

色や柄のイメージと「格」

 

ここまで見ていただいてわかるように、色は無彩色に近く濃いと重みや近寄りがたさが出ます。反対に色が明るくなると、軽さと親しみやすさがだんだんと増してきます。

ネイビーやダークグレーなどの重く色味がない色は、落ち着きや思慮深さを感じさせ、カラフルになるに従って元気さや躍動感が加わってきます。

柄も同様です。無柄、非常に抑えた柄は格調高さや品を感じさせ、それが威厳のあるイメージにつながります柄が大きく、また使う色が多くなると、親しみやすさや軽妙さ、可愛さなどが出てくるのです。

自分のイメージで品や威厳をより強く感じさせたければ、ダークな色や無地の衣服を身に着けることを多くします。

反対に気楽さや親しみやすさをより必要とするなら明るめの色や多少目立つ柄が効果を上げます。

また、毎日の服装を選ぶときに、「今日は重々しく、硬く」というなら濃い色や無地、ごく小さな柄の選択になり、「今日はより親しみやすく」というならカジュアルさが醸し出されるような明るい色や少し目立つ柄という選択になります。 

 

ビジネスでの「黒スーツ」について

 

ドレスコードに照らし合わせると、「黒をビジネススーツとして着るのは間違い」ということになります。

リクルート活動のときには制服のようになっている「黒のスーツ」ですが、本来は「黒」はフォーマルの色であり、インフォーマルであるビジネスで着て良いとされる色ではありません。 誰が始めたか知りませんが、日本のリクルート活動ではマナー違反が奨励されているのです。海外では、皆が制服のように同じスタイルで活動することも含めて不思議がられていることです。

なお、略礼装ではもちろん黒のスーツはありえますが、ヨーロッパなどではダークグレーのほうが好まれます。

女性の場合は、ビジネスで黒を身に着けても男性ほどおかしな感じはしません。ただし、ビジネスの「硬い場面」つまり初対面や商談の大事な場面、敬意を表す場面、謝罪の場面では、避けたほうが賢明です。男性ももちろん、これらの場面では絶対黒のスーツなどは選ばないようにしてください。

 本来はビジネス色でない黒がスーツに登場したのは、1970年代頃が顕著と言われています。ファッション界で黒を使ったモードが大胆に登場し、斬新なおしゃれ感から身につける人が続出しました。 その中で黒のスーツもモード服として、最先端のオシャレを楽しむ人に支持されたのです。黒はあくまでファッションを楽しむ人の「モード服」 だったのです。

ただ、残念なことに「ルールを守った装い」と「オシャレな装い」が区別がつかない人も現れ始めました。特に日本では基本的な洋服の色や柄のルールを知る機会がない人が多いため、普通のビジネススーツでも着ていい、と思ってしまう人も多かったと思われます。

さらにリクルート時には、目立ちにくい色として皆が合わせるようになったのではないか、というのが通説です。 勘違いがこれ以上蔓延しないうちに、企業も当たり前の服装教育を計画すべきでしょう。

いずれにしても、 男性でも女性でも、黒のスーツは「モード寄り」と理解しておいてください。繰り返しますが「硬い場面」では選ぶべきスーツの色ではありません。 目立たないから、とか、無難な色だから、と考えなく着ていると「常識のない人」になる恐れがあるのです。    

 

 

素材や質感の格(クラス感)

 

素材や質感は大事な要素

 

「何だか野暮ったい」「何だかカジュアルすぎてマナー違反のような・・・」こんな印象を人に与えるのは、着る服や小物などの素材や質感を間違えている場合です。

「素材や質感」をもう少し詳しく言いますと、素材の種類、見た感じの光沢感、手触り、起毛具合などです。スーツ生地を中心に説明します。  

 

素材の種類

 

ウールがスーツ生地では一般的であり、シルク混やカシミヤ混などで光沢感やスムーズな手触りがあるものは格(クラス感)が高いと言えます。

ポリエステル、レーヨンなどの化学繊維で作られた生地は、特に男性スーツなど品質が目立つものとしては安易に買わないことです。ただ、見た目や手触りはなめらかで美しいものも出てきているため、女性のスーツでは以前より増えてきました。用途に合わせて選びましょう。コットンのジャケットやスーツはカジュアルなものとして扱われます。  

コットンは男性シャツの場合は、どんな場面でも大丈夫です。柔らかく程よいツヤやスムーズな手触りのものを選んでください。シャツの素材は、意外にスーツスタイルのイメージを左右します。

 

光沢感について

光沢感やツヤは品質の良さによるものなら、あるほうが格の高さが感じられます。(謝罪の時などは光沢感やツヤは相応しくないので気をつけてください)。  

 

手触りについて

手触りがスムーズなものは格が高く感じられます。ゴワゴワした感触やシワ感が強くなるについれてカジュアル色が強くなります。ツイードなどは凹凸がある生地はカジュアル色が強いものです。ビジネスフォーマルなどには着ていけません。  

 

起毛具合

表が毛羽立っている生地より、それが目立たないスムーズな生地のほうが格が高く感じられます。

革の場合は、表革のようにツルツルしたものが格が高く、起毛素材(スエードやヌバック)はカジュアルなアイテムになります。  

 

「由来」の影響

 

ここまで、どんなものが「格(クラス感)」があるものかを見てきましたが、このような基準は、その色や素材などが「もともと何に使うものだったか」という「由来」によって左右されることが多いのです。

人が感覚的に「格が高い」と感じるものは、元々宮廷や貴族の家屋で用いられたものを中心としています。素材の場合はスムーズな手触りで繊細であり、それが「格がある」印象となります。

それに対して、屋外の作業、スポーツ、軍隊などのために、防寒などの目的で作られた素材は目が粗かったり、堅い手触りだったりするものが多く、カジュアルに着られることが多くなります。そして、そのぶん格は下である感覚になります。

リネンやコットンなど、細い糸で細かく薄く織られたものは上質となり「格」も上のため、フォーマルでも用いられたりしますが、そうではなくゴワゴワとした手触りのものは、野原や海辺などで汚れても構わない服装のために用いられたことが多く、そのためカジュアルな素材として格は低くなります。

この「由来が格に影響する」のは素材だけでなく、ジャケットや靴などのアイテムでも同じです。そう考えると、区別がつきやすくなりますね。 

 

いかがでしょうか。このような観点でモノを見ていると、見る目が磨かれ「これはこの場面にふさわしいかどうか」が判断しやすくなります。いろいろなモノを見て目を養いましょう。