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「似合う」だけではない「ふさわしい」服装の選び方

 

ここまでで、ただ「似合う」「魅力的」という考えの服装選びとは違う、積極的なそして戦略的な服装選択についてお伝えしてきました。これは、あなたが自分をどのように見せたいか、はっきりとした意図を感じられるようになったときのための予備知識です。

あなたは人に自分をどう見せたいのか、その意図が大切です。

「意図」というのは人が動くときの目的地です。どこかに移動する際に目的地を認識せずにどこかへ向かおうとしても難しいのはわかりますね。そして、目的地がはっきりすればするほど、正確に到達できますし、到達も速くなります。

しかし、日々の振る舞いでは、多くの人が自分の「目的地」をよく知覚せずに振る舞っています。

誠実できちんとしたイメージがあれば良いのか、格や上品なゴージャスさがあったほうがイメージに合うのか、それとも個性を前面に押し出すことが必要か、あなたの目的地を今一度考えてみましょう。つまり、あなたの意図をいちどきちんと掘り下げて考えて見るのです。

それが単純に「似合う」だけで終わらない自分に「ふさわしい」服装の選び方であり、際立つ存在感を見にまとう方法です。 それでは、あなたの意図を掘り下げていきましょう。    

 

あなたは何をしている人かを考える

 

あらためて自分と周囲を認識してみましょう。

あなたは、どんな人たちと一緒に、あるいはどんな人たちに対して、「何を」している人ですか?

あなたは、人々にどんな価値を、どれくらいの対価で与えている人でしょうか。

そこから、あなたが示すべきクラス感や「格」を考えてみてください。    

 

 

人にどんな印象を与えたいかを認識する

 

自分がどんなイメージを与えたいか書き出してみましょう

前項の「あなたが何をしている人か」から、「あなたはどんな印象を人に与えるべきか」または「自分としてどんな印象を人に与えたいと願うのか」を考えてみてください。そしてそれを書き出します。

プロフェッショナルなイメージ、硬くて厳格なイメージ、誠実だが親しみも感じさせるイメージ、ひたすらリッチなイメージ…。 ぜひ、考えつく限りのイメージを書き出してみましょう。

これは頭の中で考えるだけではダメで、自分の字で書き出すことが重要です。なぜならそこに「思考の言語化」というプロセスが生まれ、それが脳を活性化させるからです。それにより、より自分の深部の心理を覗けるようになります。

思い切ってたくさん書き出してください。そして、ピタッとくるイメージ語を2〜3個くらい選んでください。 書き出しにくく感じる場合は、反対に人に持ってもらいたくないイメージも考えてみましょう。避けたいことを考えると欲する事を思いつきやすくなります。    

 

 

今日のあなたは何を意図しているか考える

 

予定に合わせた「意図」でドレスコード、色、ニュアンスを選択しましょう。

今日のあなたは、何をするのか、誰に合うのか、人にどんな作用を及ぼしたいのかを想像してください。場面や会う人から、適切なドレスコードを考えてください。 

その場面ではマナーとしてどのような服装を選択すべきなのか。初対面と何回も会った人とでは示すべき敬意やフォーマル度(ある意味の堅苦しさ)は違ってくるはずです。また、場所や場面の格式も無視できません。

自分のイメージをどう伝えればいいでしょうか。自分の格を落とさない服装はなんでしょうか。 どんな色を選ぼうか、少し硬い感じがいいか、親しみを加えたほうがいいか、考慮しましょう。

相手や周囲にどんな感情を与えたいのでしょうか。気さくなくだけた雰囲気でいてほしいでしょうか、それとも少し緊張して真面目に事に当たって欲しいのでしょうか。

今日の予定は何でしょうか。社内で何件かのオンライン会議をこなした後に、大事な取引先と会食、であれば会食に合わせてきちんとしたスタイルがいい、という判断もあります。同じオンライン会議でも、社内会議と社外の方との会議で同じポロシャツスタイルでいいわけがありません。オンラインだから相手に気を使わなくてもいい、という勘違いは少なくとも社会的知性のあるエグゼクティブがすべきではありません。

あなたが示すべものは何か、服装でそれを示すためにどんなアイテム、色、コーディネートをすべきかは常に考えるべき事です。それを構えず、自然に、仕事の段取りをするかのように、考えられると活躍するステージは自ずと上がっていきます。

 

自分に合う服だけを選ぶ気持ち

 

これからは自分に合う服だけを選びたいですね。それには似合わないものは排除する、という考え方が重要です。

パーソナルカラーや格、サイズなどについて知ると、「合わないものを今まで身につけていた」と気づくこともあると思います。「これは合わない」と思ったら、クローゼットからどかせることを考えましょう。

もったいないと思うかもしれませんが、似合わないものや格が落ちて見えるものを着ていることによる「見えないイメージダウン」や「機会損失」の方が、よっぽどもったいないのです。

また、自分のステージが上がっていけば、セルフイメージも同時に上がります。そのときあなたは「前の自分の服」は気に入らなくなるのが自然です。そのまま以前のものを身につけて行くと、せっかく上昇したセルフイメージがダウンしてしまいます。それも大変もったいないことです。

すぐ捨てたくない、というアイテムがあるときは、せめてそのアイテムは「ビジネス以外」を着るためのものにしましょう。もったいない、と思うなら寄付したり、売ったり、目下の人にあげてもいいでしょう。

自分に本当の意味で似合う(表現したいものも含めて自分にふさわしい)服だけを選ぶ、というのは服装戦略の最も基本的にして最も重要なことです。

これからは、「お得」「ついでに」で安易に服を買わないようにしましょう。自分の個性はもちろん、役割や望む機能に「似合う」ものを厳選するつもりになってください。

それでもたまに失敗はするでしょう。しかし「自分のイメージを選び取る」という意識が重要です。     

 

 

「似合う」「かっこいい」だけで終わらず、本当の意味での自分を表現するのが「イメージをコントロールする」ということです。

服装が持つメッセージ性を理解し、多角的に自分の装いを考える意識が、「ここぞ」という場面はもちろん、日常でもあなたの存在感をより強いものにしてくれます。ここで学んだことを覚えておいてください。