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「プロフェッショナルイメージ」のアーキタイプ
アーキタイプを知って、自分のスタイルを選ぶ
あなたがどんな仕事の方であれ、またどんなブランディングをしているのであれ、一般的に「プロフェッショナルさを感じさせる服装」がどのようなものであるか「アーキタイプ(典型)」は知っておいてください。
それは「できる人」の印象をつくる鉄板スタイルであり、ビジネスリーダーだけでなく一般的ビジネスパーソンとしても真似て損のないスタイルです。特に初対面の時には、一定の効果をお約束します。
ビジネスで信頼を勝ち取るために、人の期待に応えることも大切なことです。誰もがビジネス相手には「プロフェッショナルであること」を期待します。そのためのセオリーを理解してください。その上で、自分に必要なイメージを選びとっていただきたいのです。
プロフェッショナル感がある服装
服装では着ているアイテムだけでなく、色や柄、小物などもプロフェッショナル感を左右します。
アーキタイプでは、ダークな色合いで上質な素材感のスーツが鉄板です。また、タイトなシルエットやルーズなシルエットが流行していたとしても、「フィット(つかず離れず)」というノーマルなサイズ感であることです。
インナーは白で、スーツとのコントラストがはっきり出ていたほうが知的で明朗な印象を与えます。特に初対面の場合はそのようなコーディネートがいいでしょう。
小物、ビジネス小物は黒を基調としたほうがビジネスに真摯な印象を与えます。
女性のアクセサリーは、「シンプルな本物」というイメージが存在を引き立てます。
もちろん、あなたのお仕事の内容によって、選ぶべきアイテムが上記に当てはまらない場合もあります。 また、個性やキャラクターの演出が必要なので、あえて違う方向性のものを身につけようとお考えの方もいるでしょう。
しかし、まず知性や品格を服装で演出する簡単な方法は、上図のような選び方だということは知っておいてください。 はじめに、知性や頼り甲斐を演出した方が、かえって個性やキャラクターを発揮しやすいこともあります。
個性やキャラクターは、本来は滲み出るものであり、無理に肉付けするものではないからです。 まずあなたは本当はどんな印象を与えることが成功か、をよく吟味してください。
威厳や格を醸し出すスーツディテール
男性のスーツは、もともと長い歴史の中で培われた「ビジネスのための服」です。着た人が、自動的に威厳があり有能に見えるように作られていると言っても過言ではありません。その中でも「威厳」や「格」に関係のあるディテールを見ていきましょう。
それは「テーラードジャケットの襟の角度」です。
これは、女性にも取り入れられるものです。女性は後から社会進出をしてきたという経緯があるため、ビジネスの時には男性のスタイルを取り入れる必要がありました。もちろん女性らしさも残しながら有能さを表現してきたわけですが、これらはぜひ男女とも意識していただきたいポイントです。
まず、テーラードジャケットの襟の説明をします。この襟は、首周りにある上衿(カラー)と、胸の方にある下衿(ラペル)がつながったものです。
つながったところは「ゴージライン」と呼ばれます。
このゴージラインは上の方にあるほうが威厳がありキリリと見える効果があります。また、ゴージラインの角度が上がっているのと下がっているのとでは、人に与える印象が変わります。
そして、ラペルの角度も印象に大きく影響します。ラペルが剣のように尖った「ピークドラペル」は威厳やフォーマル感が強くなる仕様であり、ラペルの角度が柔らかく下に下がるほど、見せる表情はソフトに優しくなります。
「どうも頼りなく見られがちで」と言っていた男性のスーツの襟のゴージラインとラペルの角度をグッと上げただけで「以前より頼られるようになった」という例もあります。 服装で扱われ方が変わったという人は少なくありません。気が強く勇ましく見えるか、優しく親しみ深く見えるか、ゴージラインとラペルは印象を変えることができます。
これは女性のスーツやジャケットでも同じことです。女性用のスーツは、既製服である場合、ほとんどが「ノッチドラペル」で作られています。これは女性用の衣服として「優しい印象」「中庸」が意識されているからだと考えられます。もし、もう少し強さや際立った存在感を出したいときには、このラペルのせいで物足りない印象になることがあります。これからぜひ気をつけてみてください。
持ち物・小物で差がつく「本物かそうでないか」
あなたがビジネスで持ち歩くものには何があるでしょうか。名刺入れ、手帳、ペン、時計、そしてビジネスバッグ。それらは本当にあなたが表現したい「格」を表していますでしょうか。
あなたは、自分の小物、特に仕事の時に見られる小物が、 「あなた自信がどの程度の仕事ができる人かを、そのまま相手に印象で伝えている」 ことを知っておくべきです。 特にプロは仕事で使う小物にはこだわるもの。ビジネス上での「投資」と考えて周囲から見た印象、実際使う時の機能ともに神経をかたむけます。
つまり、「(プロフェッショナルとして)本物かどうか」ということを周囲に無言で伝えやすいところなのです。 おろそかにしていていいものではありません。
一般的に下記は「ダメな小物」です。
●安っぽい印象のもの、関係ないロゴなどが入っているもの
●すぐわかるブランドもの、大きくロゴが目立つもの
●汚れているもの、摩耗が激しいもの
●全体的に統一感が感じられないもの
●持つ本人に合ったストーリー性が感じられないもの
社会で活躍し、見る目が備わっている人ほど、服装と共に小物類に鋭い目を向けます。ビジネスに関わる書類のように、その人の内容を読むつもりで見ている人も多いのです。それでは、小物別に少し詳しくみていきましょう。
<名刺入れ>
●黒などシックな色か、自分の他の持ち物と統一性のあるカラーを推奨。有名ブランドのロゴがこれ見よがしに入っているものは勧めない。爬虫類柄・アニマル柄・その他のカラフルな柄は避ける。
●本革であること。くたびれにくいしっかりした皮革と作り。汚れや傷が目立ちにくいものにする。なめし革など手指の脂で味わいが出てくるようなものはビジネスには向かない。
●折りたたみ型で、2つ以上のポケットがある形を推奨。自分の名刺ともらった名刺の区別ができにくいワンポケット型(上部が開いた形)は勧めない。また、金属やプラスチック製のカードケースは勧めない。
●一目で「くたびれている」とわかるものは即買い替えを。
●財布との兼用は、絶対にダメ。
<手帳・手帳カバー・スマホカバー>
●自社以外の企業手帳は避ける。
●黒などシックな色か、自分の他の持ち物と統一性のあるカラーを推奨。有名ブランドのロゴがこれ見よがしに入っているものは勧めない。爬虫類柄・アニマル柄・その他のカラフルな柄は避ける。
●一目で「くたびれている」とわかるものは即買い替えを。
<ペン・万年筆>
●「自分の一本」を持つようにする。高品質なブランドの、手にしっくりくるものを持ち歩く。人前で何か書くときにはペンが見られる、という意識を持っておいたほうがいい。
●自社以外の企業の景品は持たない。
●カラーボールペンや鉛筆など、複数持つ場合は、ペンケースを洗練されたものにしておく。
<ビジネスバッグ>
●自立するものを持つ。床に置いたとたんにフニャッとなるものは、書類の取り出しに不便であり、またビジネス姿勢も疑われる。
●量販店にあるような安っぽいものは避ける。
●黒などシックな色を推奨。有名ブランドのロゴがこれ見よがしに入っているものは勧めない。爬虫類柄・アニマル柄・その他のカラフルな柄は避ける。
●ショルダーバッグは、スーツなどの衣服の肩を痛める。補助パーツとしてのストラップはいいが、基本はハンドルで持つタイプをお勧めする。
●バックパック、ボディバッグ、トートバッグは基本的にカジュアル・レジャー用のバッグ。本当に持つ必要がある仕事であれば、持つべきだが、そうではなくただのオシャレなら子供っぽく見えるだけなので避けたほうが良い。
<財布>
●長財布を推奨。
●ポイントカード、大量のレシートが入っている財布は整理能力が疑われてしまう。スッキリ整理をした財布を持つ。男性の場合は身につける場合が多いので特に注意。
●本革のものを持つ。布やビニール、パラシュートクロスの財布は即買い替えること。
●黒などシックな色を推奨。有名ブランドのロゴがこれ見よがしに入っているものは勧めない。爬虫類柄・アニマル柄・その他のカラフルな柄は避ける。
<時計>
●ビジネス用とレジャー用は分けて持つ。
●ビジネスフォーマルの時計を1本持っておく
男性用=黒革ベルト・シルバー、白フェイス、直径3.5〜4cm、厚み1cmくらいまで
女性用=黒革ベルト・シルバー、白フェイス、直径2cm前後、厚み1cmくらいまで
●硬い場面では上のビジネスフォーマル用をつける。
●営業職や接客ならお客様より目立たないものをきちんとつけたほうが仕事がうまくいく。
ヘアスタイル・髪にプロ感を持たせる
服装や持ち物は良くても、肝心の自分はどうなのか。 例えば、表情や視線、動作、話し方などとともに「身だしなみ」も大切です。
そして、ヘアやメイクも服装コーディネートの一環です。しっかりスーツを着ていても、ヘア(メイク)が着る服にあっていなければ、台無しです。カジュアルでラフな雰囲気ではちぐはぐ。服装で作ったイメージが台無しになる恐れもあります。
ヘアスタイルなどにも「プロフェッショナル感」と「そうではない感」を分かつポイントがあります。そのポイントは以下の5つです。
1. 前髪スッキリ
(男性・女性)額はスッキリ出した方が「できる」イメージになる。前髪はどこか幼さを演出するので、若さや可愛さには繋がってもプロフェッショナルイメージにはなりにくい。
2. 「ゆるフワ」はNG
(男性・女性)「ゆるフワ」のルーズなセットは「×」、プライベートカジュアルには合っても、きちんとした服装にはまず合わない。同じく「前髪やてっぺんツンツン」も「×」。「経験が乏しい若者」のイメージになりがち。
3. 痛んだ毛先はマイナス
(男性・女性)髪の毛のケアができておらず毛先が傷んで見えるのは何よりのマイナス。ヘアオイルやヘアクリームで艶が出る工夫をする。
4. 目立つヘアアクセサリーもマイナス
(女性)色がカラフル、大きい、キラキラする、など目立つヘアアクセサリーは、どこかプロフェッショナルらしく見えない。下手をすると品が悪く見えることがある。服装の雰囲気や色との統一感があった方が「できる」感が漂う。
5. ヘアカラーはメンテナンス命
(男性・女性)ヘアカラーをしている人は、メンテナンスに神経を配ること。褪せたカラー、カラーのしすぎで艶が無い髪、根元の伸びがはっきりわかる状態は、「プロフェッショナルイメージ」以前に「ちゃんとした社会人」には見えない。
なお、(男性)髪の毛が薄い場合は、ただ伸ばさずに、サイドをスッキリさせた「ソフトモヒカン」など、積極的にスタイリッシュに見える刈り上げにしたほうが、「できる」に加えて「かっこよく」見えます。
ヘアスタイルやメイクは顔の印象を変えるものです。よくよく吟味して選びましょう。下の画像は男女それぞれ同じ人物ですが、これだけ変わります。
ソフトモヒカンの例
©︎www.horipro.co.jp/
「若さ」「かわいい」にとらわれない
海外のビジネスパーソンとお会いし、その服装やスタイル、振る舞い方や話し方を見ていると、日本のビジネスパーソンとの根本的な差異を感じることがあります。その差異を一言で言うと「大人っぽく、洗練されている」ということです。
日本は世界でも「年齢や若さにこだわる」とよく言われ、また「Kawaii(かわいい)」は日本の優れたソフトコンテンツとも言われるくらい、浸透した価値観です。それぞれの価値観でいいわけですが、私たち日本人の無意識に優先すべきことのように刷り込まれており、それがグローバルなシーンやビジネスシーンにおいては、少々奇異に感じられることがあるようです。
つまり、その人のポジションや役割と照らし合わせるとバランスを欠いているような、服装やスタイル、振る舞い方や話し方となっていることが目立つことがあるのです。
上のヘアスタイルにしても、無意識の「若さ」「可愛さ」にとらわれ、クラス感やプロフェッショナル感が感じられないような選択になっていないでしょうか。もちろん、価値観は人それぞれです。しかし、自分は価値観をどこにおいているのか、はぜひいちど振り返って見てください。
いかがでしょうか。こうすればプロフェッショナルに見られる、という服装や小物、ヘアスタイルなどをご紹介しました。よく吟味して自分に必要なイメージを選びとってください。