日本人ビジネスパーソンは他国の人と比べ、自己紹介や初対面のアピールがあまり上手ではないことが言われています。印象的な自己紹介を「エレベーターピッチ」から習いましょう。

 

 

 

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エレベーターピッチとは何か

 

エレベーターピッチという言葉をご存知ですか?

エレベーターピッチとは30秒以下ぐらいの短い時間の中で、要領よく自分または自分の商品やサービスを売り込むビジネストークのことです。

もともとは米国で生まれた言葉です。アグレッシブなエネルギーが渦巻く米国ではチャンスはどこに転がっているかわかりません。また、それを自分でつかんでいけ、と奨励されるような雰囲気の社会です。

例えば、ビジネス街の有力な企業が入っている大きなビルにはエレベーターが何基もありますね。そのエレベーターで出会いを待つこともあります。狙っていれば、たまたま有名企業の経営者などの有力者と同じエレベーターに乗り合わせるチャンスもあるわけですが、その出会いをムダにせず、目当ての有力者に近づき、さっと簡単な自己紹介をしながらトークに巻き込んで、自分のビジネスへの出資やその他のビジネスチャンスにつなぐ、そのようなショートプレゼンがエレベーターピッチです。

 

 

このようなやりとりは米国のように基本的にオープンで野心が嫌がられない社会だからこその話で、日本でのビジネスではあまりなじまないかもしれませんが、エレベーターで話すほんの30秒程度の間に自己紹介をして自分の話に引き込み、連絡先を入手したりアポイントメントを取ったりできるとすれば、それは優れた「セルフプレゼンテーション」と言えます。

「ピッチ」というのは売り込むとか説得するとか投げ入れるなどの意味があります。「ピッチャー」というのはボールを投げる人ですが、そのイメージで「一石を投じる」といった意味合いを持ちます。狙ったところに要領よくまとめた内容を投げ込んでストライクを取るような感じですね。

そのコツや決まり手を理解し、自分の自己紹介をより効果的に変えませんか?

 

日本人ビジネスパーソンは他国の人と比べ、自己紹介や初対面のアピールがあまり上手ではないことが言われています。いっぽうで、前述のとおり米国ではチャンスは自分でつかむものという意識がすごく強いですし、ピッチが実際に街中で行われるのは珍しいことではありません。エレベーターばかりではなく、例えば催事やパーティーで、ホテルロビーなどいろいろな場所で、ショートプレゼンが展開されているわけですね。

他のビジネス先進国でも行動は積極的です。誰かを捕まえては、自分を知ってもらい話を聞いてほしいとか、この案件に協力がほしいといったビジネス上の要望を伝えられる人が多く、日本と比べて自分をうまく売り込んで希望を実現していく力が強いと感じられます。このような国々では、キャリアが上がるほど、あるいはエグゼクティブとして役割や責任が重くなるほどピッチは巧みになっていき、要望の伝え方もスマートになっていきます。

「エレベーターピッチ」にならい、印象的な自己紹介、人を動かす自己紹介ができる「セルフプレゼンテーション力」を身につけましょう。

 

 

エレベーターピッチにならった印象的な自己紹介のポイント

 

 

エレベーターピッチにならって印象的な自己紹介にするためのポイント、それは自己紹介を次の3つのパートで構成することです。

●客観情報

●バリュー

●出口

 

この3つについて言える準備をし、適切な時間配分で自分のことを印象的に伝えましょう。

 

ではこれら「客観情報」「バリュー」「出口」それぞれのパートを説明していきます。

 

客観情報

客観情報というのは、氏名、会社名、役職や肩書など、あなたについて客観的に見て言っている情報です。つまり誰でも事実と理解できることです。この仕事をして何年です、など数字が入った情報もわかりやすい客観情報です。

あなたが誰か、を知りたい人にとって必要なパートです。

 

例えば、このようなことを言っているのが客観情報のパートです。

 

「◯◯株式会社の田中一郎です

企画部マネージャーをしており

この仕事に就いて3年目です」

 

こんなことであれば、簡単に言えると思ってはいけません。何を言うかはきちんと考えて準備することが必要です。準備していないと、思い出しながら言うことになるでしょう。そうするとムダな時間が多くなり、聞く人の集中力がなくなります。

つまり、あなたのことについて聞く気がなくなってしまうのです。

例えば、こんなことを言っている人が全部話すまで、あなたは我慢できますか?

 

「田中一郎です

えーと、◯◯株式会社です。

やっているのは

企画部の、

えーと

マネージャーです。

あ、一応

この仕事に就いて3年目です」

 

たぶん、途中でほとんどの人が、あなたへの関心を失っています。

また、氏名や会社名、所属などの固有名詞は相手が分かりやすいように、フルでゆっくりはっきり言う必要があります。

よく「田中です」などと名前の一部しか言わない人がいますが、印象が薄くなって覚えられにくいだけでなく、不親切です。ぶっきらぼうに感じて、失礼な人のイメージになる恐れもあります。もともと、自分の名前をちゃんと名乗らないことは失礼な行為にあたりますから、覚えておいてください。名乗るならフルネームを名乗りましょう。

 

 

バリュー

客観情報だけで自己紹介を終わってしまう人が多いのではないでしょうか。しかし、それでは誰の記憶にも残りにくく、またあなたがどんな人なのかも伝わりません。あなたという人のユニークさを知ってもらうことが大切なのです。

日本人は自己紹介や初対面のアピールがヘタであると、海外のビジネスパーソンからよく聞きますが、その理由は自己紹介は自分の客観情報を言って終わり、となる人が多いからです。

名前や会社はわかった。それで? あなた自身はどんな人ですか?

これを伝えるパートが「バリュー」です。

バリューとは、一言で言うとあなたの価値。あなたが人に与えられるメリットです。「自分はこう言う価値がある人間です。あなたにこういうメリットを提供できます」。このような説明ができることで人はあなたへの関心を持ちます。

しかし、このような説明を聞くと、「自分には 価値なんてそんな大したものはない」と決めつける人、「人にメリットとしてあげられるようなお金やモノなどない」と狭い想像しかしない人がいるのではないでしょうか。

しかし、その考え方や想像は間違いです。

もちろん、どうしても言葉の固定観念がありますから、価値やメリットなどと大層な言葉を聞くと最初はそう感じるのは無理ないかもしれません。

まず、「価値」や「メリット」という言葉について重たく考えるのはやめてください。

ここで言っているあなたの価値は、あなたの今持つ知識や経験からすでに生まれているユニークさで、必ず自分の中に見つかるものです。

そして、メリットとは何か相手のためになるもので、それは「へえ、おもしろい」、「話を聞きたい、興味がわいてしまう」、「おもしろうそうだから、知り合いになりたいかも」と、こんな風にかすかでも相手が意欲や刺激を感じるものであればいいのです。

 

例えば、あなたはこれに似たようなことを何か言えませんか?

 

営業畑に10年いました。◯◯にはけっこう詳しいです。

実は◯◯の趣味があります。マニアックなお話しができますよ。

◯◯について詳しいので情報交換いつでも受け付けます。

 

また

実は最近発売の著書があります。こう見えて◯◯の専門家です。

 

というオーソリティ(権威や著名さ)を感じさせるものでも他人から見ると大きなメリットです。

 

まずは、自分に何ができるか、この場所にいる人たちに何かできないか、そんな視点で考えればいいのが、このパート「バリュー」です。これがスムーズに言えれば今までより強く暖かい関心を人から向けられるでしょう。

ただし、注意が必要なのは、ここで言うことが鼻につくような自慢や自己宣伝になってはいけないということです。

「え、自分の価値やメリットを語ったら、どうしても自慢や宣伝になってしまうのでは?」と難しく思ってしまうかもしれません。そうです。それがこのパートの難しさであることは確かです。

しかし、この難しさは「いかに自己紹介を聞いてくれる人たちの感情に焦点を合わせるか」ということで回避できる可能性がぐっと高まります。つまり相手が聞いて不愉快に思わず、関心や感心が勝つような言葉や言い方を考えることが大事な点になるのです。

また、表情や話し方でも人の受け留め方は変わります。印象良く堂々とした表情や話し方も同時に身に着けていきましょう。

 

 

出口

 

もう一つ 大事なパートとなるのが「出口」です。「出口」とは相手に指し示す「結論」。 相手に対してしてほしいことをいうことで相手の行動を促し完結することです。

すでに「私にはこんなバリューがありますよ」と伝えました。しかし、それだけでは人は動けません。

例えば、テレビなどのショッピングチャンネルで「これはとても良い商品です」と言っても、どうやって買うかがわからなければ、誰も買えません。「今すぐこちらにお電話ください」などと具体的な行動を示さなければ、難しいですよね。実はこれと同じことなのです。ですからここでは、あなたに関心を持った人がどうすればいちばんいいかを教えてあげてください。

そう言われても、すぐにはピンときませんよね。でも、難しく考えることはありません。

例えば「ぜひ名刺交換をお願いします」というのもひとつの出口なのです。

 

この出口は、大勢の前で自己紹介をするのか、それとも少人数に対してするのかによっても違うでしょう。

パーティ会場で大勢の前で話しているのなら、「あとでぜひ私に話しかけてください」というのも出口です。 「今日はできるだけ多くの皆さんと名刺交換をさせてください」というのもあります。

少人数の中であれば「私を今日から仲間に加えてください」、「近々、ぜひみんなでランチでも」などもありますし、セールスなどでしたら、「お一人お一人のところに伺いますので、アポをよろしくお願いします」という具体的なお願いもあります。

 

何を言うかはあなたの自己紹介の目的次第です。取り立てて何もないなら「よろしくお願いします」程度で済ませるのもいいですが、本当にそれでいいのかは真剣に考えてみてください。

余談ですが、「出口」は自己紹介のときに限らず相手の決断や行動を望む場合には示したほうがいいものです。ビジネストークでも「こんなアイディアです」「これはいいものです」と説明で終わってしまい、頭の中で「この件で連絡くれるといいな」と思うだけではうまくいきません。

 

「今ぜひこの資料を見てください」

「今ぜひこの返事をください」

「明日この件で時間をぜひください」

「アポを取らせてください」

「詳しいメールをあとで送らせてください」

「お電話ください」…

 

あなたが望む行動を相手に対して明確に言うことで、相手は自分の次の行動を想像できます。「出口」を意識するのとしないのとでは、結果が大きく違ってくるのです。

 

「客観情報」「バリュー」「出口」、それぞれ意義や内容をご理解いただけましたか?

ではこれから実際に自分のセルフプレゼンテーションを作っていきましょう。次のページへ