活躍するビジネスリーダーは身につけるものをわきまえていて、どんな場面でも人を魅了し信頼をたやすく受け取ります。そんなビジネスリーダーならドレスコードやTPOのことは頭でっかちに覚えるのではなく、感覚で身につけておきたいものです。ここでは、実際にどんな時にどんなものを着るかや、常識として知っておきたい暗黙のルールを見ておきましょう。
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知っておきたいルール
「ホワイトタイ」「ブラックタイ」と言われたら
正礼装である燕尾服は必ず白のボウタイ(いわゆる蝶ネクタイ)をしなければなりません。このことから、ドレスコードが「ホワイトタイ(white tie)」とあるのは夜の正礼装(女性はローブデコルテかイブニングドレス)を意味します。
同じく、タキシードが黒のボウタイをつける決まりから、「ブラックタイ(black tie)」と招待状に書いてあれば、夜の準礼装がふさわしい場面なのでタキシード(女性はイブニングドレスかディナードレス、カクテルドレス)を着てくるように、と指定されていることになります。
これらは、略語のようなものですが、正式な招待状でもよく使われるドレスコード。こんな略語でも、ピンとくれば服装のことがだいぶわかっている証拠です。ぜひ覚えておいてください。
民族衣装(和装)の扱い
「国際的なフォーマルの場面で着物は着てもいいのですか?」これは意外と多い質問です。国際的なステージでは着物がどう扱われるかも覚えておきましょう。
国際的なマナーでは、民族衣装は礼装として認められることになっています。日本人で言えば「着物」は「民族衣装」ですね。
ですから、周りが燕尾服、またはタキシードでも、日本人として着るなら着物で参加できるわけです。
正礼装を旨とするノーベル賞授与式やディナーでも、日本から着物を着て参加された博士がいらっしゃいましたね。民族衣装はその国ならではの文化を紹介し、プライドや美学を感じさせます。着物はアート的な評価も高く、着物での参加はいつも歓迎されます。
ただ、「格」は必ず合わせなければならないので、「正礼装」なら、その国の民族衣装の正礼装でなければなりません。日本の民族衣装の場合も着物であれば何でも良いわけではなく着物における「正」「準」は守らなければなりません。
下表が着物における正礼装、準礼装になりますので、参考として覚えておきましょう。
正礼装 | 準礼装 | |
男性 | 黒紋付(五つ紋) | 色紋付(三つ紋) |
女性 | 黒留袖(五つ紋)
厳格な場所でなく、ゲスト参加の場合は色留袖(五つ紋)もあり 未婚の若い女性は三尺三寸本振袖 |
色留袖(三つ紋)
未婚の若い女性は二尺五寸振袖
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着ていく場所や場面のイメージ
「正」や「準」それぞれのフォーマルはどんな時にどんな場所へ着ていくのでしょうか。下図はそれをわかりやすく示したものです。ご覧ください。
こうやって見ると、日本で普通の生活をしている限り「夜の正礼装」(男性は燕尾服・女性はローブデコルテ)を着る機会はまずないと言えるでしょう。
しかし、夜の準礼装(男性はタキシード・女性はイブニングドレスやディナードレス)であれば、日本でも最近ドレスアップして参加する会などが増えてきましたので、着ていく機会がないとは言えません。
海外出張や海外赴任などであれば、ちょっとフォーマルな香りのするパーティや華やかなイベントなどで着る機会が増えます。
昼間の正礼装である「モーニング」「ローブモンタント」は、日本ではせいぜいお子様の結婚式くらい。海外でもそれほど縁はないでしょう。
ただ、「こういうときにはこういうものを着る決まりがある」ということは、全体の理解として知っておくと役立ちます。
「平服」の常識
「平服でお越しください」「plain clothes」。
招待状で見る言葉です。しかし「平服とは何?」とあらためて聞かれて答えられますか?
意外とあやふやなイメージの人が多いのではないでしょうか。
まず、よくある間違いですが、「平服」とは、その人の普段の服、という意味ではありません。
ですから、「平服」と聞いて、Tシャツやジーンズ、スニーカーで行くのは大間違いです。
「平服」とは特にかしこまった服でなくて良い、という意味ですが、この場合の「かしこまった服」とはフォーマルウェアを指します。
先に「フォーマル」と「インフォーマル」という話をしましたが、
つまり「平服」は
「わざわざフォーマルを着なくていいですよ。
インフォーマルでいいですよ」
という意味です。
しかし、わざわざ「フォーマルでなくていいですよ」と伝えるくらいですから、格式が低いわけではありません。
ですから、インフォーマルであり、公的な場所(パブリック)でのスタイルと考えて、それ相応のきちんとした格好はしていかなければならないと考えてください。
ビジネススタイルと同じ程度とすればいいでしょう。
男性でしたらスーツとネクタイが適切ですから、女性もきちんと見えるスーツか、長袖で膝下丈程度のワンピースがスタイルとして適切です。
ただ、女性の場合は、参加する場面や会によって、少しエレガントな格好にした方がいい場合(エレガントなワンピースやドレスを選ぶ場合)と、昼間の仕事の延長で考えビジネスライクにした方がいい場合(スーツをベースにして時間帯によってはアクセサリーなど変更するなどの場合)があります。
「ものさし」でつかむルール感覚
先のページでフォーマルを中心にしたドレスコードの構造を見ていただきました。
その後で色々よくわかったところで、次に、私たちともっと関連ある「インフォーマル」も加えて、全体的に見てみましょう。
フォーマルは昼と夜の服装ははっきりと区別します。
インフォーマルは、フォーマルに比べればゆるいのですが、「これは昼っぽい格好がいいか、夜っぽい格好がいいか」くらいの意識は必要です。
特にビジネスシーンはどちらかというと「昼間の時間帯」中心です。そこに、夜っぽい雰囲気、例えば少しセクシーな雰囲気、エレガントすぎる雰囲気を持ち込むのは、常識的に考えてNGですね。
また、ビジネスのパーティなどが夜にある場合は、昼間の雰囲気丸出しのスタイルだと、あまりインテリジェントに見えません。逆に少しエレガントに見えるような工夫をしたいものです。
色や柄やアイテムについては、フォーマルは身につけるものがはっきりと決まっています。男性はネクタイ、シャツ、靴・アクセサリーに至るまでしっかりとしたルールがあります。それに比べると、女性はドレスのデザインにそれほど厳格な決まりはありませんが、それでも、デコルテや腕を出す形、靴はトゥがあるもの、正式なフォーマル用の靴はサテンなどの布帛製、などの決まり事があります。
インフォーマルの場合はルールはそれほど明確ではないですが「暗黙の了解」は多くあります。男性のスーツには特に多く見られ、女性の服装にもそれが影響を与えています。
フォーマルやその周辺に関しては、以上のことを頭に置いておいてください。
この表をものさしに、どの程度ルールの厳格さや時間帯を考えるべきか、自分の中で加減する感覚をもってください。
ビジネスアタイアの感覚
全体を見渡して、仕事服という意味のビジネスアタイアはどこに位置するかおわかりいただけたかと思います。「インフォーマル」であること、そして「パブリック」であることは仕事で何を着るか考える時に意識すべきことです。
パーティのような華やかな場面は別として、ふだん着る衣服にフォーマル的なデザインや布地、色が入ることはありません。
また、最近では服装のカジュアル化が進み、仕事とは思えないような服装をしている人も見かけます。しかし、自分の時間を過ごす時間のカジュアルと、パブリックであるビジネスタイムで身につけるカジュアルは「違う」ことがわかるはずです。
ですから、この先衣服のカジュアル化が進んでも、プライベートカジュアルとは一線を画した「きちんと感」を保ち、「信頼感」「大人としての成熟感」を感じさせる装いを目指したいものです。
特にリーダー格以上になったり、ご自身のブランドが大切なお仕事では、周囲からアドマイアできるような(憧れられるような、どこか感心するような)「ちょっと上のイメージ」は自然に求められます。それに応えていくことも大切です。
ここまでで、世界に通用する「ドレスコード感覚」を身につけたあなたは、ぜひ下記の講座でご自身の「ビジネスアタイア」を見直し、磨いていきましょう。