人は論理より先に感覚で判断します、話し手が聞き手に与える印象のコントロールの大切さと方法を学びましょう。
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プレゼンに共通する意識すべきポイント
効果的なプレゼンテーションでは、内容の質だけでなく、話し手の印象も重要な要素です。聞き手が話し手にポジティブな印象を持てなければ、内容や意図がうまく伝わらないことがあります。ここでは、聞き手にポジティブな印象を与える、基本的な印象コントロールのポイントを紹介します。
1 姿勢
姿勢は常にその人物の輪郭を表し、単純な外見だけでなく自信や権威性など内面まで見られる最初のポイントです。また、姿勢は話し手自身のメンタルにも影響しますので、適度な緊張感があるポジティブな精神状態を保つためにも軽く考えてはいけない部分です。
良い姿勢を保つことと共に、お腹にしっかりと力がある状態にすることも意識してください。基本的な立ち方は足を肩幅ほどに開き、安定感があるようにします。
2 表情
1対多の場合、話し手の表情はあまり見られないのではないかと思われがちですが、人間の本能は無意識で対象となる人の表情を認識します。遠目で微細な判別は難しいことがありますが、話す内容に合致しているかどうかは判別できると言っていいでしょう。表情の豊かさは内容表現の豊かさにもつながります。また、表情の様子によって声の調子にも変化が出ます。
変化のない平坦な話し方は早々に聞き手を飽きさせてしまいます。1対1で話しているつもりで表情を意識しましょう。
3 目
目を積極的に使う、アイコンタクトを上手にする、ということを心がけてください。
人の脳は無意識のうちに相手の目の状態をモニタリングすると言われています。目はそれだけコミュニケーションで重要な要素で、会話のときなどは視線やアイコンタクトが重要だということはお分かりの方も多いと思います。
ただし、これは通常の会話にとどまらず、プレゼンテーションやスピーチのような1対多の関係性でも言えることなのです。話している最中に目を使って相手と積極的にコミュニケーションを取ることは、以下の点で非常に重要です。
・話し手と聞き手の親和性
・話し手や話の内容の信頼性
・内容の強調
・聞き手心理の誘導
4 身体のパーツの状態
オープンポジションを意識し、クローズドポジションは避けましょう。「オープンポジション」「クローズドポジション」はボディランゲージの研究から生まれた言葉です。
「オープンポジション」とは、手を開く、自分の正面を見せるなど、体や身体のパーツを開く動作や開いた状態を指します。この状態を見せると、聞き手は話し手に対して誠実さ、明るさを感じやすくそれが親しみや信頼感へとつながります。いっぽうで誠実さを伝えることができます。
「クローズドポジション」は、手を握ったり腕を組んだりして閉じた状態にしたり、体を斜めにして見る人から身体を隠すような動作や状態を言います。防御的な印象や誠実さや公正さが感じられない印象を与えるため、特にプレゼンのような場では避けるべきです。
以下がよく使われる身体のパーツの例です。
手のひら
オープンポジション 開く・見せる
クローズドポジション 隠す・握る
手
オープンポジション 見せる・上げる・差し出す
クローズドポジション 隠す・固く組む
腕
オープンポジション 広げる・上げる
クローズドポジション 組む・下に下げっぱなしにする
身体
オープンポジション 相手に向ける・正面を向く
クローズドポジション 身体を斜めにする・後ろを向く
足
オープンポジション 肩幅程度に広げる
クローズドポジション 閉じる・クロスさせる
オープンポジションは常にそうしていなければならないということはありませんが、聞き手への働きかけをしたり印象を強めたりしたい場面では意識してください。
5 声の高さとスピード
低めの発声とミドルスピードから始めてください。
冒頭での低めの声は聞き手に落ち着きや安心感を与えます。話し始めは、意識して少し低めの声で話すことを心がけましょう。話や感情が盛り上がると、自ずと声のトーンが上がりますが、最初から自然な高さで話してしまうと、途中で声が高くなりすぎて、耳障りな声になる危険性があります。
話すスピードも同様です。話始めはミドルスピードをキープしましょう。話が盛り上がってくると、自身のスピードのクセが出やすくなりますので、最初から飛ばさないようにするほうがいいのです。なお、日本語の場合、1分間に266文字話すくらいのスピードがいちばん聞きやすいとの研究結果がありますので、参考にしてください。
高さもスピードも、最初は聞き手が安心して聴けるレベルを意識して始めることがいちばん大切です。最初に聞きにくい印象を与えると、話し手を受け入れる気が削がれてしまい、そこから先の話へ集中してもらえない可能性が一気に高まるからです。 話し手は、まず自分の存在に慣れてもらうことを第一に考えましょう。そうして聞き手に受け入れられれば、だんだんと自分のペースにしていっても、聞き手の集中度はあまり下がりません。そうすれば、話の内容が伝わりやすいのです。
6 腹式発声
腹式発声で通る声を出せるようにしてください。
腹式発声は安定した声を力強く出すことに役立ちます。声を大きくする際、ただ声を張り上げるのではなく、腹式発声で響く豊かな音声を発することが大切です。あくまで腹部からの支えを使って声量をコントロールすることで、自然で聞き取りやすい発声が可能になります。このような発声は、より説得力のあるプレゼンテーションに繋がります。
声の大きさは、ちょうどよく伝わる「ミドルボイス」を意識してください。聞き手の最後部まで直線で届くようなイメージで発声してみましょう。
7 口の開閉のメリハリ
1対多のときに、聞き手にとってわかりにくくなるのは読唇(口の動きによる発音の判別)です。話がわかりにくいということは聞き手にとって非常にストレスを感じることであり、参加意識を損ねる元です。ふだんの会話でも、口の開閉にメリハリを持たせることでカツゼツをよくし、わかりやすい発声をすることは大事ですが、1対多の場合はさらにメリハリを強く意識する必要があります。
話す前には「あ・い・う・え・お」を大きく口をあけて繰り返す発声練習をして、口を動きやすくしておきましょう。
以上のポイントを意識することで、聞き手に対して好印象だけでなく、話し手としての信頼感や話の内容への関心を高めることができます。プレゼンテーションは一方通行の情報伝達ではなく、双方向のコミュニケーションです。話し手の印象をコントロールし、聞き手とのつながりを深めることが成功の鍵となります。