序列は意外と気にされるもの。まずは紹介の順序を理解しておいてください。

 

 

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 人の紹介には順序がある

 

ポジションが上がると色々な機会に人と人をつなぐような役をすることも増えます。「紹介の労をとることが増えてくる」ということです。そのときに注意したいことが、世界、国内に関わらず、「挨拶の順番」「紹介の順序」を誤ると人の感情や立場に障る可能性があるということです。例えば誰もが「目上」と目する人をさしおいた紹介の仕方をすれば、わだかまりが残る場合があります。

国際マナーの説明で「序列と格を気にするのはどちらも同じだが、世界標準がややシビア」とお伝えしたのを覚えているでしょうか。日本よりフラットに見える海外の文化ですが、時として厳しさが違うと感じることがあります。まずは紹介の順序を理解しておいてください。

 

一般的な挨拶や紹介の順序の考え方

 

ポジション・社会的な序列への配慮

例えば、あなたが経済界の重鎮Aさんと経済誌の新人記者Bさんを引きあわせ紹介の労をとるとします。このような場合、あなたの紹介のセリフとして以下の1と2はどちらが正しいでしょうか。

(1)

「Bさん、

こちらがAさんです。偉大な仕事をされてきた人なので色々と勉強させてもらってください」

「Aさん、この人はBくんと言って、経済誌の新人記者さんです。よろしくお願いします」

 

(2)

「Aさん、

この人はBさんと言って、経済誌の新人記者さんです。これからよろしくお願いします」

「Bさん、こちらはAさんです。偉大な仕事をされてきた方なので、この機会に勉強させてもらったらいいですよ。」

 

正しい順序は(2)です。

一般的なルールでは、目下である人を目上の人に先に紹介することになっているからです。これは、もともと階級制度があった時代に、目下の者から目上の者に先に挨拶をし、その後目上の者から目下の者に挨拶の言葉をかけることが正しい挨拶の順序として決まりになっていたからです。誰からみても「目上」「目下」がわかりやすい場合は、その順序を守ったほうがいいでしょう。

 

【注意】名刺交換時の「順序」

名刺交換の順序も同様です。自分のほうを目下と考える者から、先に相手に自分の名刺を渡す、という順序になります。その後、目上とする相手から相手の名刺を受け取ります。

これも目下の者から目上の者に先に挨拶をし、その後目上の者から目下の者に挨拶の言葉をかける感覚の名残です。日本では謙虚さが強く、通常自分を目下と考えます。ですから、自分の名刺を先に差し出し、相手に先に受け取ってもらうことで礼を尽くそうとします。(実際はほぼ同時に差し出し、受け取る、という動作になります)

注意したいのは、この順序を全く逆に覚えている人がいます。その場合は相手が名刺を差し出すのを待ってそれを受け取り、その後で自分のものを渡すことになりますが、横柄な印象は否めません。ご自身の振る舞いだけでなく、後輩や部下の振る舞いについても注意してください。もし、あなたが明らかにいつでも誰より目上であれば、相手の名刺を受け取ってから自分のものを渡すことも許されるでしょうが、当然のようにそうすると、やはりやや横柄に見えます。

 

 

年齢差への配慮

 

あまり年齢に囚われるのはよくありませんが、明らかに年齢的な貫禄のある人と、若年に見える人の順序を間違えるべきではありません。紹介や挨拶では年を重ねた方には相応の配慮をしたほうがいいでしょう。通常は、年少の人間を先に年長の人間に紹介します。つまり、年少の人間が先に年長の人間に挨拶をする順序となります。

 

 

関係性による順序

 

身内の人間と外部の人間の順序があります。会社、家族などの単位で考えた場合、身内の人を先に外部の人に紹介することになります。

例えば、自社の人間と他社の人間がいれば、自社の人間を先に他社の人間に紹介します。自分の家族を友人や仕事関係の人に紹介するなら、自分の家族を先にその友人や仕事関係の人に紹介し、その後家族に友人や仕事関係の人を紹介する順序になります。

 

 

レディファーストによる順序

 

従来の社交マナーでの原則論では、人を人に紹介する場面では、レディファーストの考え方が最優先されます。そのため、女性を先に男性に紹介することはしません。まず男性を女性に紹介するのが先、そのあとに女性を男性に紹介します。

レディファーストに関しては、ビジネスではことさらに言われなくなりましたが、食事やパーティなどの社交的な場では変わらず暗黙のルールであるなど、「ダブルスタンダード」の様相が続いています。食事やお酒が入るような場、エレガントなイベントなどにおいてはレディファーストは意識したほうが良いでしょう。

純然たるビジネスの場では、社会的な序列が優先される傾向ですので、女性を上のポジションの男性に先に紹介することは自然です。また、その女性が上のポジションの男性に先に挨拶をし、名刺を差し出すのもごく当然のことです。また、関係性の点から見て、自社の女性スタッフを他社の男性スタッフに先に紹介することも差し支えありません。

 

 

 

 

人の紹介の作法

 

人を誰かに紹介する、ということは、その人たちを「つなぐ」ことです。そのための配慮ができる人と、そうでない人とでは、紹介された人たちが育める関係性(つながり)に大きな差が出ます。それは、自分自身のネットワークの広がりや質にも影響を及ぼすものです。

どうせだったら良いつながりを持たせてあげられるよう、紹介の作法として下記の点に配慮してください。

 

人を紹介するなら「準備」をしておく

 

いきなり人と人を引きあわせると、良かれと思ってしたことでも、裏目に出る場合があります。人によっては、歓迎しない場合もあるからです。そのため、紹介する前に、紹介しようとしている人たちに知らせて許可を取っておきます。

例えば、このように伝えて、相手から「いいですよ」や「お願いします」という言葉をもらっておきましょう。:「今度こんな人を紹介したいのですが、いいですか?」「◯◯さんという人から、ぜひ紹介して欲しいと言われているのですが、機会があればご紹介してもいいですか?」

 

また、実際に紹介するときに戸惑わないよう、紹介する順序もあらかじめ考えておくことをおすすめします。

 

 

十分な情報を与える

 

紹介の労をとるなら、それぞれの人に関する十分な情報を与える親切を忘れないでください。そうでなく単に名前や会社名を言って引き合わせるだけでは、当人同士の話が発展しにくいはずだからです。そのためにも以下のポイントに注意してください。

 

名前はフルネームで紹介する

紹介する人の姓だけではなくフルネームを伝えましょう。厳密な紹介の作法ではフルネームを伝えないのは「マナー違反」です。姓だけでは覚えにくく、ちゃんと扱われている感じがしません。

例えば「こちらはイシダさん」VS.「こちらはイシダ タロウさん」自分を紹介してもらえるなら、どちらが良いですか?

「尊重されている感覚」はフルネームの勝ちでしょう。また紹介を受けている人にとってはフルネームのほうがその名前の持ち主により強い信頼感を感じるはずです。フルネームでの紹介にはメリットしかないのです。

 

 

自分との関係性を知らせる

紹介の労を取るあなたとはどんな関係なのか、は紹介される側それぞれに説明しましょう。そうすることで、紹介される側それぞれにとって相手を知る重要な手がかりになりますし、お互いにどういうつもりで接すればいいか、判断するための材料ともなります。逆に、そのような情報を与えないままで「こちらは○○さん、あとはお互い仲良くしてください」では、話もはずみにくくわかりあうのに時間がかかるでしょう。それでは紹介の意味がありません。

 

知らせる関係性の例です:

・いつ頃からの知り合いか

・知り合ったきっかけ

・どの程度の付き合いか、年数や会う頻度など

 

また、なぜ紹介したかったのか、を説明するのも効果的です。例えば、「どちらも素晴らしい活躍をされているので」「◯◯の点で気が合うのではと思って」などの言葉を添えると、紹介される側にとって今後紹介された人とどんな関係を構築していこうかと考えるときのキーになります。

 

 

美点を言い添える

加えて、それぞれの美点や優れた点についても必ず加えるようにしましょう、「○○さんはすごく有能な人で、知り合いからとても信頼されている人なんですよ」「○○さんは本当に経験豊かな人で、いつも色々話を聞いてもらったりしているんですよ」。こんな言葉を添えれば、紹介される側のお互いへの関心も高まります。それだけでなく、そんな人間味のある紹介をしてくれるあなたへの感謝や好意、敬意が高まります。

 

 

 

 

いかがでしょうか。細かいところですが、以上のような点に気をつけて紹介すると、紹介される側がお互いに非常に良い印象を持つことができます。それが紹介の労を取ってくれたあなたへの感謝や信頼感となり、それを繰り返すことによって後には良いネットクワークの構築、影響力の高まりにつながります。