理解しやすく、日本でもビジネスや研修などで広く応用されているパーソナリティ分類法をご紹介します。

 

 

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(トータル時間 17:04)

1.〜4 自分のタイプの基本的な性質を知る(07:04)

2.5 それぞれの「良い点」を理解する〜(10:00)

 

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   「ソーシャルスタイル」とは

 

「ソーシャルスタイル」というパーソナリティ分類法のことを聞いたことはあるでしょうか? 米国で教育研究を手がけていたDavid Merrill が1964年頃に提唱した「人間の社会的な特性」を評価するツールです。その人の社会的な特性がわかると、より客観的にその人について判断することができ、その人に適した接し方もできるようになります。

 

例えば、あなたはこんな課題を感じたことはないでしょうか。

 

「部下それぞれに合った指示や指導の仕方を知りたい」

「相性が合わない人間の考え方が理解できず、やりにくい」

「相手の気持ちを動かし、行動させたい」

 

もし、自分や相手のタイプを知り、自分と相手の合わない点や歩み寄り可能な点が具体的にわかり、相手が動くポイント(刺さるポイント)は何かがわかれば、上の課題は解決できます。ソーシャルスタイルは、それらをわかりやすく示してくれます。

ソーシャルスタイルは人のパーソナリティを4つのタイプに分類して価値観や考え方の傾向を捕らえるもので、理解しやすく、日本でもビジネスや研修などで広く応用されています。

 

 

タイプを知るために、有料の100を超える質問リストに答えるブラックボックス的な方法もありますが、ここでは日常で使いやすい簡便なスケール法をご紹介します。

スケール法は人の中にある「Assertiveness」=主張性と「Responsiveness」=反応性が、どのように組み合わされているかで、その人のタイプを判別する方法です。

慣れてくるとスケールがたやすく頭の中で動くようになり、すぐに相手のパーソナリティが想像できるようになります。この診断ツールをぜひ使いこなしてください。

 

では、その簡単な方法を使って、早速あなた自身の診断を行いましょう。

 

<「ソーシャルスタイル」スケール法診断>

 

  下記の手順に従って、「自分のタイプ」を診断してください。

 

 

1.スケールからあてはまるローマ数字とアルファベットの組み合わせを選ぶ

 

下の図の「主張性スケール」があります。

「人の話ばかり聞いているほうだ」から「自分の話ばかりしているほうだ」まで、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ とローマ数字があります。自分に最も当てはまる数字を選んでください。

次に、「反応性スケール」から、同じようにA、B、C、Dのうち自分に最も当てはまるアルファベットを選んでください。

 

2.タイプ名を知る

 

数字とアルファベットの組み合わせを見て、4つのタイプのうち自分はどれかを知ってください。

 

「アナリティカル 管理専門型」

「ドライバー 率先支配型」

「アミアブル 親身調和型」

「エクスプレッシブ 斥候偵察型」

 

 

3.自分のタイプ傾向の強さを知る

 

あなたのローマ数字とアルファベットの組み合わせはどれでしょうか。その位置によって、あなたのタイプ傾向の強さがわかります。

 

 

<タイプの傾向が強く表れる人>

上にある図のⅠーD、ⅠーA、ⅣーD、ⅣーAのようにそれぞれのゾーンの端っこに位置するタイプはそのタイプの強い性質を持ち、そのタイプの傾向が強く表れるとされています。

 

<他のタイプの影響も受けている人>

 

他のタイプの性質がミックスされて現れる人は、図ではそのミックスされているタイプに隣接しています。

自分の数字×アルファベットの下に小さく「アナリティカル エクスプレッシブ」などと書いてありますね。それが細分化されたあなたのタイプ名です。

この場合、先に書いてあるタイプ名が主、後ろのタイプ名が副、という感覚でとらえておいてください。(例:「アミアブル ドライバー」だとアミアブルの性質が主、ドライバーの性質が副。)

 

 

4.自分のタイプの基本的な性質を知る

 

自分のタイプはわかりましたか? それでは、それぞれのタイプの特徴を見ていきましょう。  ここでは、前に説明した「ビッグ5の性格因子も絡めて説明します。

 

 

「アナリティカル 管理専門型」

一言で言えば「職人」。自分が得意とすること、興味があることに一途に取り組むタイプです。物事を深く分析し、定義・解明することにモチベーションを感じます。システマティックな考えを好み、どちらかというと見栄えよりも機能を優先します。物事を管理し、深めることに適しています。

ビッグ5では、非情動、内向性、現実性、分離性が目立つ傾向です。

 

「ドライバー 率先支配型」

一言で言えば「起業家」。先に進むこと、人より優れていることに強いモチベーションを感じます。支配欲、統制意欲が強く、他人を律するのと同様に、自分自身もきちんとコントロールできていることを好みます。物事の決断をするために必要な分析はしますが、分析自体を好むタイプではありません。

ビッグ5では、非情動、外向性、現実性、分離性、統制性 が目立つ傾向です。

 

「アミアブル 親身調和型」

一言で言えば「世話人」。人に対する関心が高く、周囲との調和や共感を大切にします。そのため、感情移入が人一倍強いタイプです。自然と人の世話を焼こうとしますので、親切で面倒見が良いタイプです。人とのコミュニティの中で調和していること、役立てていることにモチベーションを感じます。

ビッグ5から見ますと、情動性、愛着性が他のタイプより目立ちます。

 

「エクスプレッシブ 斥候偵察型」

一言で言えば「クリエイター」。発想力があり、進歩的な考えや未来的な創造をします。フットワークが軽く、あまり安定に執着しません。発想を広げ新しい情報に触れることが何よりのモチベーションとなります。その気になればあまり周囲のことは気にしませんが、良い考えは人とシェアしようとするような協調性があります。

ビッグ5から見ますと、遊戯性、自然性が他のタイプより目立ちます。

 

 

 

5.それぞれの「良い点」を理解する

 

前に「誰にも「欠点」はなく、「特性」があるだけ」とお伝えしました。 ただ、各タイプの特性はその時のコンディションや人間関係の中で「良く思えるとき」と「悪く思えるとき」があります。それがその人の「良い点」「悪い点」と一般的に人が感じることです。 一般的に仕事や人間関係で相性が良い人同士はお互い「良い点」を強く感じます。「良く思えるとき」それぞれのタイプはどんな人に思えるでしょう。  それを考えていきましょう。

 

「アナリティカル 管理専門型」

安定している、思慮深い、根気強い、責任感がある。

物事を深く分析し、定義・解明を好む態度は、思慮深さに通じ、興味があることに一途に取り組むところは他のタイプから見ると根気強く責任感があると感じられやすいところです。このような態度全般がこのタイプを落ち着きがあって安定している性質に見せています。

 

「ドライバー 率先支配型」

自制心がある、エネルギッシュ、進歩的、面倒見がよい。

先に進むこと、人より優れていることを自然に求めるので、他のタイプから見るとどんどん前に進めるエネルギッシュさが強く感じられます。また、支配欲が強い傾向は「親分肌」のように他者の面倒見が良い性質を生みます。他者だけでなく自分をコントロールしようとするので、自然に自分の行動も規則正しく制御できます。このような態度全般がこのタイプを「強く進歩的な人」に見せています。

 

「アミアブル 親身調和型」

世話好き、親切、忍耐強い、欲張らない。

人に対する関心が高いので、何かと人が気になり世話をやいて自然に親切な行動をします。人との調和を第一にして自己主張を好まないため、他のタイプから見ると忍耐強く、出すぎない、欲張らない性質に思うことが多いです。また、ドライバーが支配欲から周囲に対して親分肌的な面倒見の良さを見せるのに比べ、アミアブルはただ相手のことを思い献身的に世話をやく傾向となります。このような態度全般がこのタイプを「面倒見がよい親切な人」に見せています。

 

「エクスプレッシブ 斥候偵察型」

人を元気づける、感性が高い、順応力が高い、未来志向。

新しい考えや変化に価値を感じるタイプであるので、発想や行動が目立ち、それが周囲を元気づける明るさにつながります。自分のやり方や安定、伝統に固執しないところは順応力の高さとして他のタイプに見られます。分析して慎重に考えるより、物事のポジティブな側面や自分の勘所によって判断する傾向も他のタイプより強く、このような態度全般がこのタイプを「フットワークが軽い未来志向の人」に見せています。

 

 

ここまで見ていただくとわかるように、それぞれの特徴は他のタイプから見ると、「こういうところがいいな」と思われる点となります。特徴がうまく受け入れられている環境では、その良い点が強みや才能として受け取られやすいと言えます。つまり「特性」はそのまま自分の「強み」なのです。まず自分自身でこの強みを意識し、生かすことが、信頼を置かれ存在感を際立たせることに役立ちます。

 

 

6.それぞれの「悪い点」を理解する

 

タイプの特徴は、強みとなる一方で、「悪く思える点」になります。特に、仕事や人間関係の相性が良くないとか、あるいは本人単独で体調や精神状態が良くないときは、悪く見える傾向が色濃くなります。

それぞれのタイプは悪く見える時にどんな人に思えるでしょう。

 

「アナリティカル 管理専門型」

冷たい。利己的、理屈っぽい、粘着質、批判的。

物事を深く分析し、定義・解明を好む態度は、時として理屈っぽく批判的に見えることがあります。それが冷たい利己的な性質と受け取られることもあります。また、興味があることに一途に取り組むところは他のタイプから見ると、意味がない深掘りのようにも感じられ、分析や思考への偏りがあると「行動しない」「腰が重い」などの批判を受けることもあります。

 

「ドライバー 率先支配型」

高圧的、傲慢、イライラしやすい、無神経。

先に進むこと、人より優れていることを自然に求める傾向は、他者にも自分と同じように進歩や自律を自然に求める態度を生み、他のタイプから見ると傲慢さや無神経さに映ることがあります。他者に、自分と同じようにできることを期待し、それが期待通りにいかないとイライラした態度になりやすいタイプでもあります。また、エネルギッシュなところがたちまち高圧的な印象を与えることもあります。

 

「アミアブル 親身調和型」

煮え切らない、自己責任能力が低い、なれなれしい、おせっかい。

何かと人が気になり世話をやくことが他者からするとおせっかいに感じられることがあります。また、人との調和を第一にして、他者もそうだと考えるあまり、なれなれしいと受け取られるような態度になることがあります。周囲の考えを気にして、煮え切らない態度に映るときがあります。他者の意見や動向を参考にしすぎるところが、自己責任で決断する覚悟を妨げることがあり、それが他のタイプから見て自己責任能力の低さにうつることがあります。

 

「エクスプレッシブ 斥候偵察型」

調子がいい、軽い、無責任、自分勝手、協調性がない。

新しい発想や行動を好み、自分の勘所によって判断する傾向は他のタイプから見て調子の良さや軽さ、無責任さと映ることがあります。フットワークが軽く、自分の感性の赴くままに行動を起こすところが周囲への説明不足、調整不足となり、協調性がないと批判を受けることがあります。

 

 

周囲のことが目に入らず、自分の主観のみで考えているときや、人間関係がうまくいっていないときなどは、先ほどは「強み」だったものが、周囲から見て「気に触る点」となることがあります。

しかし、これも「欠点」ではなく、「他人からそう思える点」として理解することが重要です。 そして、自分自身もコンディション次第で自分が持つ「特徴」が他人からは悪く見えることがあることを知っておかなければなりません。

 

 

以上がソーシャルスタイルおよび各タイプの説明です。

パーソナリティの違いを知ることは、ソーシャルスタイルに限らず、このような「相対的な見方からのそれぞれの人間の違い」を意識できるようになることです。 この意識により、人への接し方に幅がでてきて、人に接するときの態度の余裕や落ち着きを生みます。

 

人間は何をどうしても自分中心であり、自分が一番正しいと思う感覚を持ちます。生まれた時から自分が世界の中心ですので、それは仕方がない、というか自然なことです。しかし、だからこそ「人と自分を客観的に見る感覚」「それぞれの違いを相対的に捉える感覚」を意識的に育て、少しでも大所高所から物事をつかむことができるようにしたいものです。

 

 

他人のタイプについて考察する

 

ご自分のタイプがわかったら、自分の身の回りの方のタイプもチェックしてみてください。よりスムーズにその方を理解し、関係性を構築するのに役立つでしょう。

まず、改めて自分のタイプと持つ特徴を考えて下さい。 用紙を使い、あなたのパーソナリティは下のどこに位置するかを考えて印をしてみてください。最初にやったテスト結果も参考にしていただいて、もちろん結構です。

次に、自分のことを書き込んだ同じ用紙に、周囲の人の印も書き加えてみましょう。 改めてお互いの傾向や、どのように違いがあるかを実感できるでしょう。「なるほど、ここは似ているけど、ここは違うな」と自然に思え始めたらしめたものです。あなたは頭の中に人のパーソナリティ分析のスケールを手に入れたことになります。

 

(上の図はPDFでダウンロードできます→こちら

 

 

注意

 

周囲の人を診断する時には最初にあった診断スケールを使っても良いですし、あなたが評価して密かに診断しても良いでしょう。この時気をつけていただきたいのは、以下のことです。

●この講座内ではわかりやすいよう「このタイプはこう」と決めつけた説明の仕方になっていますが、あくまでタイプそのものの定義であって、すべての人が完全にそれと一致するわけではありません。

●この講座でのタイプに関する記述や情報は、その人の人格を決めつけるためのものではありません。あなたが他人と自分の特性の違いを感覚的に理解し、より大きな視野や多角的な視点でご自身や他人を見ることができるための補助材料として用意しているものです。

●もし他人(ご友人や部下など)に対してチェックテストなどを試した場合、その結果情報は個人情報として保護されるべきものです。情報漏洩にあたることをしないようご注意ください。

 

 

 

パーソナリティについてのお話と、人のパーソナリティを理解するためのツール「ソーシャルスタイル」をご紹介しました。ここでは自分の傾向、他人の傾向、を相対的に理解していただければ十分です。