「人には欠点はない。特性があるだけ」。ただし、仕事においては「適性がある/無い」という評価は必要です。

 

 

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(トータル時間 16:42)

1.〜仕事の「適性」「進め方」の違い(07:53)

2.この場面ではこういうことが起こり得る〜(08:29)

 

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  仕事の「適性」「進め方」の違い

 

 

何度もお伝えしているように、人には欠点はなく、特性があるだけです。それが時により強みや弱みになり、相対的な関係性やその人のコンディションによって長点に見えたり欠点に見えたりするだけです。

ただし、仕事においては「この役割、この場面での適性があるかないか」という評価は必要です。その評価を公平にできるようになるためにも、人のパーソナリティとその違いはよく理解する必要があります。

ソーシャルスタイルで、パーソナリティのそれぞれの傾向を知っておくことは、人を公平に評価する上で役立ちます。 ここから各タイプの仕事の仕方の違いを見ていきましょう。

 

 

ソーシャルスタイルで見た、仕事の中で現れやすい違いを以下に説明します。

 

 

1.安定を維持するか、変化に向かうか

 

 

新規開拓などの業務は自分の環境の変化を恐れていてはできません。むしろ、そういった変化が「おもしろい」「やりがいがある」と感じることができれば、楽しく仕事に取り組めます。いっぽうで、たんたんと安定して同じ水準を維持することが必要な仕事や、物事を深く分析、調査するような仕事は、変化を好む人には苦痛に感じることがありますが、逆にそのような安定の維持や一つのテーマを掘り下げていくようなことにやりがいを感じる人もいます。「変化と安定」どちらを志向するのかがわかれば、適性を見誤ることは少なくなります。

4つのタイプのうち、変革を好み、環境の変化を自然に受け入れる(むしろ嬉々として受け入れる)傾向を持つのは「ドライバー」「エクスプレッシブ」です。

逆に、秩序やルールの維持を好む「アナリティカル」や、人と歩調を合わせ安定した環境を好む「アミアブル」は、変革を自分から進んで行うことや環境の変化への対応がしにくい傾向があります。

このことから、市場開拓や営業といった仕事は比較的「ドライバー」や「エクスプレッシブ」が対応しやすく、後の2タイプはやや苦手です。

逆に、淡々と必要な業務をこなし、それをいかに効率よく正確に行うかということにモチベーションを見出すアナリティカルや、人のケアや多くの人と足並みを揃えることが得意なアミアブルは管理業務に最適ですが、後の2タイプはそのような業務の場合はやりがいや刺激が見出せずに意欲がしぼむ場合があります。

 

 

 

2. 協調性が強いか、単独タスク重視か

 

 

人と協調して仕事をすることに意欲を感じるタイプもいれば、自らのタスクを一人でやり遂げることに意欲を感じるタイプもいます。前者は協力しあうことを自然に考えられますが、後者は人との協力もまたひとつのタスクと考え、余計なことのように感じることもあります。独立した仕事を前者に任せる場合、また後者をチームリーダーなどに任命する場合、それぞれその適性に応じてフォローを入れる必要があります。

自分の仕事と決めたものに没頭する傾向があるアナリティカルは、他人と協同して何かを進めるよりは、単独で物事を進めるのを好む傾向です。

人を動かすのが好きなドライバーは、一方で人と歩調を合わせるよりは自分のペースで突き進みたいタイプで、協調性という点においてはそれほど得意ではありません。

4つのタイプでいちばん協調性があるのはアミアブルです。周囲に気を配り、個々の人間にも気を配ることが自然にできるため、人と動くのが得意です。

エクスプレッシブはフットワークが軽く、必要があれば単独でもサッと動くタイプですが、人にアイディアをシェアしたり手を取り合い協同して何かを進めることは苦にならないタイプです。

 

 

3. 仕事のスピード感

 

 

仕事の進め方にも特徴があり、その特徴によって何かを成し遂げるスピード感も違います。仕事は速いが他の要素に注意が必要な人もいれば、他の要素を重要視してスピード感自体は落ちる人もいます。それぞれの特性を見て、無理のない進め方や期間を考慮すると思わぬトラブルも防げます。

4つのタイプのうちで比較的スピードが早い、というのはドライバーとエクスプレッシブです。ドライバーは何事も自分から率先して動き、状況をコントロールしようとしますので、判断の早さはピカイチです。エクスプレッシブも思い立ったら行動が先に立つタイプでフットワークも軽いので何事も躊躇なく先に進めていきます。

じっくり腰を据えてしまいがちなのはアナリティカルです。さまざまな情報を収集し、全ての材料を分析した上で最良の結論を得たいという欲求が強いため、情報収集や分析に時間を費やしてしまい、実行や次段階への進行が遅くなる時があります。

アミアブルもどちらかというとスピードは遅い傾向です。人や周囲が何より気になりますので、自分で分析、判断して率先して動くことを不得意とする場合が多いからです。人の意見をよく聞き、そこから結論を得てから着手するというプロセスになるため思いのほか時間がかかります。

 

 

 

4. リスクへの恐れや対応の仕方

 

 

リスクを恐れていては仕事はできませんが、慎重であることも必要です。それぞれの特性をつかみ、チームであればリスクテイカーと慎重派のバランスをうまくとることで、健全な判断がしやすくなることが考えられます。また、自分自身がリーダーである場合は、自分の特性と違う特性の人間の意見もよく聞き、自分の判断のバランスをとりやすくすることを考慮してください。

リスクはあるのが当然だと考えるのがドライバーです。恐れずにリスクの可能性も含めてタイミングを合理的に判断、実行します。エクスプレッシブもリスクは恐れませんが、そもそも気にしない、といった方が正しいかもしれません。持ち前の楽観的な性質があり、起こったら起こったでしょうがないという姿勢です。

アナリティカルはリスクについても分析し、計画着手前に比較検討できることはすべてしたい考え、実際にそこに時間をかけすぎることがあります。

アミアブルはリスクを怖がり、避けようとする傾向が4タイプの中でいちばん強いと言えます。非常に用心深い行動をとったり、周囲の動きにより注意を払いすぎて行動が遅れることがあります。

 

 

5. 結果重視かプロセス重視か

 

 

主にその人の自分の仕事の評価において、結果重視かプロセス重視かは影響が大きい部分です。プロセスを重視するタイプは結果よりもそのプロセスを自分で評価し、また他者からの評価もそこに求めがちです。いっぽうで結果重視のタイプはプロセスに対してそれほど重きをおかないため、他者のプロセスについても評価する気持ちが希薄です。

使った手法やかかった苦労や手間、時間などのプロセスはどうでもよく、結果が全て、という傾向がいちばん顕著であるのはドライバーです。業績や数字などについて他人にも厳しいですが、自分に対する評価も結果が全てです。

結果重視であるのはエクスプレッシブもです。フォーカスするのはアイディアや新しい情報という結果であるので、それをどうやって手に入れたりするかのプロセスは目に入りません。

アナリティカルとアミアブルは結果よりもプロセスを重視し、自分の仕事としてもそこを評価されたいと考えます。アナリティカルは何か大きなことをするよりも、どのように分析するか、工程にどんな工夫を施すかという「進め方」にこだわります。アミアブルは誰とどんな風に進めるか、どうチームで動くかという「人」にまつわることに関心が集中し、それがもたらす結果は付帯的なものと感じがちです。

 

 

 

いかがでしょうか。

上で説明したのはあくまで大まかな傾向です。 わかりやすいように極端な説明になっていますが、どれも「〜気味である」と考えてください。

誰もが「どんな仕事の進め方がいいのか」についてはきちんとわかっているものです。 ただ、各タイプの「傾向」というのは「わかっていても、無意識にそうなりがち」ということを表しています。つまり、それ以外の方向へ自分を持っていくことは、それなりに負担が心理的にかかるということです。心理的に負担がかかるということは、時間や手間などの物理的な負担にもなってきます。その結果、本人が仕事にストレスを感じたり、業務の進行トラブルとなることも起こりえます。

相反する傾向をそれぞれが持つかもしれないと知っておくことは、誰かとのパートナーシップや、部下の指導、チーム編成を考えるときに重要な参考になります。

 

 

 

この場面ではこんなことが起こりえる

 

 

ここまで見てきたあなたは、各タイプがどんなところでどんな様子を見せるかが予測できるようになってきたのではないでしょうか。次はいくつかの場面で、タイプの違いによってどんな反応があるかを比較してみて、さらに理解を深めましょう。

 

 

1. 判断・意思決定の場面

 

日々の業務で判断や意思決定の必要があった場合、各タイプの予測される反応や行動は以下のとおりです。

 

●大きく分けて、直感型で早いのはドライバーとエクスプレッシブです。反対にゆっくりと分析・検討して決めようとするのはアナリティカルとアミアブルです。

●アナリティカルは、十分な情報収集が何よりも大切。全てを参照して総合的に判断することが意思決定にどうしても必要なプロセスと考えます。

●ドライバーは、検討材料と判断するポイントを絞り込みます。そこさえクリアできればあとは即断・即決。スピードが何よりも優先します。

●アミアブルは、自分が判断する前に人の意見や考えをとにかく参考にしたいと考えます。調和や一致の感覚を非常に大事にしますので、人の意見を総合して意思決定をします。

●エクスプレッシブは、感覚的な部分を重要視します。「いける」「新しい」と確信が持てれば自分を理屈で納得させる必要はなく、すぐに決断ができます。

 

 

 

 

2. チームでの仕事の時

 

チームで業務を行う場合は、それぞれの協力の仕方などに違いがあります。

 

●チームで仕事を進めるのがやや苦手なのは、アナリティカルとドライバー。どちらも自分のタスクを自分のペースで進めたいタイプです。 反対にチームでの仕事が得意なのはアミアブルとエクスプレッシブ。「自分のタスク」という概念があまりなく、自然に人と協調します。

 

●アナリティカルは、どんな業務も自分の興味の赴くままに掘り下げていきたいタイプです。「そこまでやらなくてもいい」というところまで深く到達しようとします。気が済むまでやりたいので、自分で計画し、自分で進めることがいちばんやりやすく、人とやりとりをしたり歩調を合わせなければならない部分が増えるとストレスになります。

 

●ドライバーは、自分で決めた目標に向かいどんどんと必要なことを進めていくタイプです。自分で決めて自分で責任を持った行動をします。そのため、人がついてこなくても、構わずその人の分までカバーして進みます。そんな中で人と歩調を合わすのは、やや厄介で時間の無駄のように思ってしまうことがあります。

 

●アミアブルは、人と一緒に何かに取り組むことは本質的な喜びを感じます。また、人への関心が強く共感も豊かなので、自然にチームを支えることに長けています。ただ、協調ムードや人との関係性を重視するあまり、タスクへの責任感の弱さを見せる時があります。

 

●エクスプレッシブは、自分と人との境界線をあまり引きません。おもしろい考えやアイディアがあれば自然にシェアしますし、タスクを進める上で人を巻き込んでいくのが得意です。そのようなことから意図せずムードメーカーにもなれるようなところがありますが、人のケアができたり共感を示すことにはそれほど強くありません。

 

 

 

 

3. 人を指導する時

 

 

人を指導する時は、各タイプの自然に人を引っ張ろうとする力が強いか弱いか(牽引力)と、人と自分を隔てずミスなどに対しても受け入れようとする感覚が強いか弱いか(受容度)のバランスが影響します。それぞれ指導される側の意欲を左右しますので、慎重に考えたいところです。また、パワハラなどの観点から注意すべき点もありますので、それぞれの特性をよく確認しておいてください。

 

●人を引っ張る力、巻き込む力が強いのはドライバーとエクスプレッシブです。その意味でこの2タイプは指導力は強いです。逆に人をぐいぐい引っ張るようなタイプではなく、そういう意味で指導がやや苦手なのがアナリティカルとアミアブルです。

 

●アナリティカルとドライバーは「自分にも人にも厳しい」ところがあります。相手へはルールをきちんと守ることを求め、ミスなどに対しては厳しく接しがちです。「厳しいから従う」という意味では、指導力はあると言えます。アミアブルとエクスプレッシブはルールやミスについては甘めの傾向です。指導の上では「一緒に考える」という姿勢が幸いすることも多いです。

 

●アナリティカルは共感が弱いところが、指導だけでなくすべての人との接し方で注意したいところです。相手の気持ちに構わず、理詰めで指導を行ってしまうと、納得を得られず終わることになります。

 

●ドライバーは高圧的に人に接する傾向が出やすく、相手へのプレッシャーが強くなりすぎるとうまく行きません。

 

●エクスプレッシブは感覚的な部分でものを言ってしまうことがよくあり、そのままだと行き当たりバッタリな指導と不満を持たれることもあります。

 

●アミアブルは相手への過度の気遣いや無意識の「嫌われたくない」と思う気持ちが出ると、気弱さや言うことの曖昧さを生み、指導がうまくいかなくなります。

 

 

 

 

4.「リーダー」として振る舞う時

 

どのタイプがリーダーとして向いているかには、もちろん一長一短があります。どのタイプもリーダーに向き、一方でリーダーとしては不完全です。プロジェクトの性質やタイミング、自分に求められている役割を冷静に考え、自分の傾向と照らし合わせて、適性が強いところはそのまま、弱いところは工夫をしていくことが理想です。

 

●牽引力が強い、という力があるタイプを上げるなら、ドライバーやエクスプレッシブが先に上がります。いちばん「リーダー」らしいイメージを持つのは、自分が率先して行動しながら周りに適度なプレッシャーをかけるのがうまいドライバーです。 ただし、リーダー研究ではその一見リーダーらしいリーダー像が「短期プロジェクトに向くが、長期にわたりチームを率いるには向かない」という説もあります。

 

●アナリティカルは、単独で行うタスクのほうが力を発揮しやすいため、リーダーとしての適性は強いほうではありません。しかし、専門的な分析や研究をするような分野では的確な判断をしてチームを引っ張っていけそうです。

 

●アミアブルは、共感に優れ人へのケアが得意なタイプであるとされます。力強く率先して引っ張っていくイメージにはなりにくいですが、長期的にチームを支えていくことには向いています。

 

●エクスプレッシブは遊軍や斥候のような身軽な動きに力を発揮しやすく、チームの長としての重みに欠ける印象の場合があります。しかし持ち前の進歩性や楽観性、人を巻き込む力は天性のリーダーとして自然に人を引っ張っていける可能性を示します。

 

 

 

いかがでしょうか。各タイプの違いからくる反応や行動の違いがだいぶ想像しやすくなったのではないでしょうか。こうして特徴がつかめてくると、誰を見た時も「あの人はきっと○○」と予測しやすくなります。そして、このタイプにはこう接してみようとか、戦略や工夫が思いつきやすくなると、あなたの「人間理解力」はかなり高まり、また実際にコミュニケーションの質も上がってきます。