人の五感の使い方は差があります。そこでどのような違いがあるのかを知っておいてください。

 

 

 

AUDIO

(トータル時間 34:27)

1.〜タイプの種類はVAK(06:22)

2.VAKはそれぞれどんなタイプ?(08:46)

3.アイアクセシングキュー〜タイプを理解してミスコミュニケーションを防ぐ(09:41)

4.ミスコミュニケーション例〜(09:38)

 

TEXT

使いやすい器官を優先的に使っている私たち

 

 

私たちは外界から無意識に五感を通じて情報を得て、それらの情報はそれぞれの「システム」によって処理結果を導き出すことは説明しました。その「システム」は個々で違うので、同じ事実を情報としてインプットしたとしても、違う考えや行動、記憶というアウトプットになることも説明しました。実は、その「同じ事実を感知」(インプット)の際にも人は個々の違いがあり、このことも私たちのパーソナリティ=個性を形成しています。おもしろいと思いませんか?

私たちは日常的に五感を使う中で、自分が使いやすい器官を無意識に優先して使っています。優先して使う器官によって、情報形態の得手や不得手、感じ方や記憶の仕方、心に響く言葉の種類にも差が出ます。

タイプの種類には何があるのか、タイプの差がどんな風に出るのか、そして自分と違うタイプの人と接する時にはどんな工夫が必要か、それらをぜひ理解し、相手の心理に寄り添えるようになることによって、望ましいコミュニケーションの成果を導き出しましょう。

 

 

 

タイプの種類は「V・A・K」

 

 

タイプの種類を知る前に、まずあなたが優先して使う器官について軽く診断をしてみます。

下記1、2の手順に従い、診断してください。

 

1.昔の記憶を思い出してください

 

あなたが小学生のとき(何年生の時でも構いません)過ごした、楽しい夏休みのことを思い出してください。 その場に戻ったように、できるだけ細かい部分まではっきりと思い出していただきたいのです。

できれば、下記のようなことを全て思い出して、思い出にしっかり浸ってください。

●自分から見える風景(海や山、家の中など)

●人の顔(一緒にいる友達や家族など)

●聞こえる音、人の声(セミが鳴く声や友達の歓声、「早く宿題をしなさい」という小言など)

●感じた感触(水がかかった感触、寝転んだ畳の感触など)

●温度(暑くて肌が焼ける感じ、涼しい風に触れた感じなど)

 

これらを細かく思い出し、その場にいるような感覚になってください。

 

2.すべて思い出したら、今度はその状態から記憶を削っていきます

 

今度はその思い出を以下(1)から(3)の順番で減らしていきます。

 

(1)その場にいるような感覚のまま、目をふさぐことを想像してください。

何も見えなくなりました。この段階で思い出のほとんどがなくなってしまった、という方は、情報を取り入れる時、記憶するときなどに目で見たもの、風景や画像や画面が感覚の拠り所として「視覚(Visual)」を一番優先して使っている可能性大です。

 

(2)その場で次は耳を塞ぐ想像をしてください。

音や声がすべて遮断されました。そうすると今まで実感できていた夏休みの思い出が感じられなくなった、という方は、耳で聞いたもの、何かの音、誰かの声、言葉の記憶などを拠り所とする「聴覚(Auditory)」を一番優先して使っている可能性が高いです。

 

(3)まだ思い出の中にいることを感じていられる、という人へ

今あなたの周りにはどんな思い出が残っていますか?

例えば、何かに触れた感触(水がかかった感触、寝転んだ畳の感触など)や、温度(暑くて肌が焼ける感じ、涼しい風に触れた感じなど)でしょうか? もしそうだとしたら、あなたは触覚や嗅覚、味覚といった体で感じる「体感覚(Kinesthetics)」を最も優先して使っている可能性が大です。

 

 

いかがだったでしょうか。五感のうちあなたが優先して使う感覚器官の診断結果は上のとおりでしたが、結果は人によって違います。

これを人の「表象システム」と言います。

 

表象システムは

「視覚派(Visual)」

「聴覚派(Auditory)」

「体感覚派(Kinesthetics)

の3つのタイプに分かれます。

 

あれ?五感だからタイプは視覚/聴覚/触覚/嗅覚/味覚の5つでは?と気づくと思いますが、触覚・嗅覚・味覚はまとめて「体感覚」と呼ばれます。

 

表象システムは「視覚派(Visual)」「聴覚派(Auditory)」「体感覚派(Kinesthetics)」それぞれ頭文字から「VAKタイプ」ということもあります。ここからはそれぞれと簡単に呼ぶようにします。

 

まず最初に理解していただきたいのは、表象システムとはのうちどれかたった一つだけ使うということではありません。あくまでインプットの際にのどれかが無意識に優位になり、それによって外界の情報の受け取り方のクセが出る、ということです。また、多くの人がの3つのうち一つが優位になる傾向ですが、人によっては2つがほぼ同じくらいに優位になることもあり、さらに3つがほぼ同じくらいの優位性を持つ、ということもゼロではありません。それも合わせて理解しておいてください。

自分がどの器官を優先して使っているかに気がついたら、あまり使ってない器官も使うことを意識してください。それによって感覚の鋭敏さが向上します。

 

 

 

タイプはそれぞれどんなタイプ?

 

それぞれの特徴を理解すると、自分の目の前の人がどのタイプなのかがわかりやすくなります。また、自分のタイプが相手のタイプに何かを説明するときには、どんなことに注意すべきか、どんな工夫が考えられるかを合わせて理解しておきましょう。商談、プレゼン、通常の会話までコミュニケーションの質をあげることができます。

 

 

視覚派

 

は視覚優先で情報をキャッチします。 そのため、風景や場面などの「画像」が優先的に入ってきます。写真や映画の一場面がそのまま一枚の絵として頭に入るような感じです。当然、記憶もその画像が中心です。

人と話をしていても、人から聞いた言葉や説明を画像でイメージしながら聞きます。「この前、海に行ったんだ」と言われると、すぐに海の画面が脳裏に浮かびます。言語がすぐにイメージ画像に変換される感覚です。

当然、自分から何か人に説明したりするときも画像が元になります。頭の中にはすでに画像が浮かんでおり、記憶も画像で脳の中に格納しているからです。ですから、何か言うときには、画像を言語化するようなプロセスが必要になります。頭の中に見えている画像を参照しながら言葉を繰り出して話すことになるのです。そのため、前に説明した出来事をまた説明しようとするときも、前と同じ言葉にならないこともよくあります。

そして、伝え方の特徴としては身振り手振りが多くなります。例えば、「そこにはこれくらいの石があって」というときに、実際にその石を形作るような動作になります。これは自分の中にある画像を実際に目の前で見ながら説明するような感覚になるからです。

使う言葉の特徴は「見る」や「図、絵、イメージ」など見るものを入れた言葉が多いことです。「話が見えた」「まず全体図を見せて」「見通しを立てよう」「イメージできた」などの言い方を使う人はが多いです。そして、実際に「見えない」と理解できない、納得できない、と感じるのがです。

 

がよく使う言葉

ビジョン
よく見る
絵にする
描く
○○が見えにくい
イメージする
とにかく会おう   …など

 

に伝わりやすい手段や言葉

まず全体図を見せたのち細部を説明する流れ
画像や映像的な描写
図やイメージ画像を使った説明
「○○をお見せします」
「こんな図を描いています」
「このようなビジョンを持っています」

 

聴覚派

 

は聴覚を中心に使います。「V」のように聞いたことを画像化することなく、耳で聞いたことをそのまま音や言語で取り入れます。

言葉や音を正確に掴んだり記憶に残したりしやすいタイプです。自分の頭の中にある事柄を説明しようとするときは、言葉をそのまま記憶から取り出せる感覚なので、他人からすると「記憶が正確」「細かいことまでよく覚えている」という印象を持たれやすい特徴があります。また本人も言葉の正確さにこだわる傾向があり、「あの時は『イメージ」ではなく「画像』と言ってましたよ」などと会話中に細かいことを指摘することもあります。

耳で聞くことが得意であるため「音」に敏感でもあり、オーディオなどの音質に凝ったり「音にうるさい」印象を持たれることもあります。また音に敏感なせいで、雑音などに非常に神経質である人もいます。微かな音にも反応することから、人や雑音が多い場所では全く仕事や勉強に集中できなかったりするのもに多い特徴です。

「聞こえ方」にこだわることから理論や言い回しにも人一倍注意します。「理論派で正確無比、記憶力が強い」などの評価はが最ももらいやすいと言えるでしょう。

使う言葉の特徴は、「音、言葉、話」に関する言葉を多く使うことです。「一通り聞かせてくれる?」「話を聞きたい」「響きやすい言葉だ」などはの傾向がわかりやすい言葉です。言葉による細かい説明を聞くことを苦にせず、また聞いたとおり理解しやすいのがです。

書かれた言葉の読解力もあります。これは文字を見ながら自分の中で音読を無意識にしていることで、聴力により理解・記憶が容易であるからです。

頭の中で「ここにこう書いてあるのは、どういう意味だろう? きっとこの意味だろう」と自問自答することもよくあります。頭の中で自分と自然に会話を始める傾向も他のタイプより多いのです。

(自分との会話傾向が非常に強い人は「内部聴覚派(Ai)」と、また別に呼び方をされることもあります。通常のは外部の音に敏感で外部の音から多く参照しますが、「Ai」は「自分の内なる声」に強く反応します。ひとたび何かを考え出すと、一人でブツブツと自分の考えに没頭するような人を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。)

 

がよく使う言葉

響く
不協和音
くどくど言う
調和している
雑音
とにかく話そう…など

 

に伝わりやすい手段や言葉

文字情報
論理を重視する姿勢
論理的な順番
「〜についてお聞かせしたい」
「詳しく話します」
「きっと響く内容です」
雑音がない環境を選ぶ

 

体感覚派

 

は身体全体でかみしめるように情報を理解しようとします。触覚、嗅覚、味覚を使う情報に敏感、かつ、こだわります。 「おいしい話だ」というときには、実際に何かの旨味を舌で味わうような感覚を無意識に持ち得ます。が「しっくり来ない」というとき、実際に体の感覚では自分が感じるはずの触感や熱量などが足りないと感じてそのような言葉となるのです。

たとえ、人が「この場でイメージして」と想像だけ求めても「実際に触らせてもらわないとわからない」「つかめない」と実際の触覚や体験がないと進めないことがあります。

ものの肌触りや周りの匂いが非常に気になりやすいので、「見栄え」や「聞こえ方」よりも、「実際にどうなのか」「自分がどう感じるか」を追求します。洋服で言えば見た目の良し悪しやブランド情報よりも着ているときの感触が心地よいかどうかがより大切に思えるタイプです。また、相手に自分の考えを伝えるときも、自分が感じた感覚を伝えようとします。そのため「サラサラ」「ふわふわ」など擬態語が必然的に多くなります。

こんなことから、が何かを理解・納得をするためにはその人の中に「実際にストンと落ちる感じ」や「ピタッとあう感じ」といったその人なりの感触が生まれないと難しい場合があります。理解や納得に比較的時間がかかりやすいタイプと言えるのです。このようなことから、「わがまま」「融通がきかない」「鈍い」という印象を与えてしまうこともあります。

一方でよりも物事の繊細な違いを感じやすかったり、人の気持ちに共感するのが得意だったりする面もあります。

 

がよく使う言葉

感じる
刺す 刺さる
(腑に)落ちる
触れる
探る
届く
…など

 

に伝わりやすい手段や言葉

言葉の合間に十分な「間」をとる
「実際に○○するのがいちばん」
「実際に○○すると、このような感触で…」
「いい匂いがする話」
触れることができるサンプルを用意する
現場で体験してもらう

 

 

相手の目でタイプがわかる? 「アイアクセシングキュー」

 

カウンセラーやメンタルトレーナーなどの心理学のプロは、簡単な会話を交わすだけでをある程度見抜く技法を持っています。その一つは上で説明したような「そのタイプがよく使う言葉」に注意して推理する方法です。

そして、もう一つ「相手の目の動き」からタイプのどれかを推察する方法もあります。この方法は「アイアクセシングキュー」と呼ばれます。意外とビジネス現場で活用する人も多く、例えば営業担当がこの方法で顧客のタイプを診断してアプローチ方法を変えるということもよく行われているようです。もしかしたらあなたも知らないうちに診断されたことがあったかもしれません。

 

「目は脳の一部が唯一外に露出した器官」と言われ、人の脳の動きが正直に出やすいことがよく知られています。「目は心の窓」とも言いますがこんなことからも来ているのでしょうか。

人は何かを質問されると、自分の中にあるデータを参照して回答しようとするため、反射的に目が目当てのデータがある場所へ動こうとします。そのとっさの目の動きでのどのタイプかがある程度わかるというのが「アイアクセシングキュー」という手法です。どうしてわかるかというと、「その人がどこにあるデータを参照しようとしているか」が目の動きに表れるからです。見分け方は以下のようになります。

 

例えば、「昨日、夕食は何だったか?」と聞いて、相手が答えるまでの目の動きでこのようにわかります。

 

●上の方に目が行きがちである人は画像や映像を参照している=

●耳のある横の方に目が行きがちである人は耳から入った情報を参照している=

●下の方に目が行きがちである人で、それが右下であれば自分の体に染み渡った実感を参照している=(一方、左下の方に目が行きがちである人は自分のインナーに注意を向けているのでAiと言われます。)

 

また、右と左のどちらに目が動いたかにも意味があります。 人間にとって右は「構築」「未来」の方向、左は「想起」「過去」の方向と言われます。これを知っておくと、過去に関する質問をしたときに、相手が真実を言っているかどうかがわかりやすいのです。

 

 

先ほどの例、「昨日、夕食は何だったか?」の質問に対して、その本人にとって右のほうに目が動くと、「構築」=脳は何かを今から作り上げようとしている、つまり「ウソをつこうとしている」可能性が高い、となります。左のほうに行くと、それが意味するのは「想起」=前にあったことの記憶の掘り起こしを行おうとしている、つまり「実際にあったことを思い出そうとしている=本当のことを言おうとしている」という推理になります。これでウソがバレてしまうかもしれません。そう思うと怖いですね。

ただ、実際は100%この通りとは限りません。そのため「アイアクセシングキュー」で相手をしっかり見分けようとする場合は、以下のような質問パターンを使ってよく確かめて見ることをお勧めします。これは会話をしながら、自然に相手の日常についての質問を挟む方法です。

 

1.まず相手の過去についていくつか質問をする

まず相手の「過去」についていくつか質問をして、相手のパターンを知りましょう。聞いた時に相手の目は上・横・下 どの方向に動くか、を観察します。(それに加えて、右に動くか、左に動くか、も見ておいてください。たまに上に説明した右・左が反対の人もいるので、念の為。)

例:「昨日はどんなものを召し上がりましたか?」 「日曜は何をされていたのですか?」

 

2.同じく相手の「未来」についていくつか質問する

聞いた時に相手の目は上・横・下 どの方向に動くか、そして右に動くか、左に動くか、を観察します。上・横・下 のいずれか動く方向が、1、2で共通しているときは、それでタイプをだいたい把握できます。

例:「今日はこの後どこかに行かれるのですか?」 「来週のアタマあたりはオフィスにいらっしゃいますか?」

 

3.さらに確認のための質問をする

相手が思わずドキッとするような質問をすると、タイプが何かの確信を得やすくなる場合があります。普段あまり相手が想像したことがないようなことについて聞いて見ると、とっさの正直な動きが観察しやすいので、これも試して見ると良いでしょう。

例:「誰かがいきなり一億くれたらどうしますか?」

 

 

 

タイプを理解して、ミスコミュニケーションを防ぐ

 

 

どのパーソナリティタイプでもそうですが、相手が自分と違うタイプであると、ミスコミュニケーションが起こりがちであり、またその原因を相手のせいと考えがちです。つまり、「普通なら、こう反応してくるはずだけど、あの人は変わっているな」などと思いがちなのです。

のどのタイプであっても、自分が優先する感覚器官以外を使う情報は理解や記憶がしにくいことがほとんどです。例えば、「視覚派(Visual)」は耳だけで情報を聞いても、なかなか頭に入ってこなかったり、逆に「聴覚派(Auditory)」はビジュアルが多く文字が少ない資料では満足できず、もっとしっかり文章で書いた説明が欲しいと感じたり、「体感覚派(Kinesthetics)」は流れるような説明では腹落ちせず、もっと感覚を伝えて欲しいと思ったり、など、皆それぞれ「これが普通なのに」と思うことがあります。こういった違いを「自分と違うから普通ではない」と考えてしまっては、お互いのコミュニケーションが平行線になるばかりなのです。

 

 

各タイプの傾向とミスコミュニケーション例

 

 

は私たちが持つシステムへの情報インプットの際の違いであると前述しましたが、情報の取り出し方の違いや伝え方の違いにも表れます。またその人にとって好ましく価値ある情報はどんなものかについても違いが生まれます。その違いは、人とコミュニケーションを取るときの言葉や態度の違いにもなります。ですから、それらについても理解をしておくと、タイプによってどんな伝え方がわかりやすくて納得しやすいか、そして、どんな伝え方がわかりにくくて納得しにくいか、が判断しやすくなります。

このことは、あなたにとって大きなメリットをもたらすことです。

なぜなら、相手の特性に合わせたコミュニケーションを考えられる視点があれば、相手にとってあなたは「話がわかりやすく、話して安心できる人」になります。これはそのまま良い関係を構築し、相手からの信頼感を得ることにつながります。「話がわかりやすく理解しやすい」と思われれば、その話の内容に対しても納得や賛同の気持ちが生まれます。営業、交渉、説得の際にはこれが「説得力」「影響力」になるのです。

しかし、逆に相手のタイプに何ら配慮がなく「こちらが普通で相手は変だ」と感じたままであればミスコミュニケーションが起こりやすく、実際それは方々で起こっていることだと言えます。ミスコミュニケーションとは、相手に物事をうまく伝えられずに間違いや誤解を生んだり、伝達が価値観の違いなどから対立感情に阻まれることです。

例えば、 が強い人は、電話で何か言われてもあまり理解できなかったり覚えていられなかったりすることがあります。また、感触や実感よりも見た目や見栄えを重視して判断する傾向もあります。また、が強い人は「その風景をイメージして」と言われても咄嗟にできなかったり、道順を地図で書いて渡されるよりも文字で「・・・で右に曲がる」などと書いてもらったほうがわかりやすいようなことがあります。また理論を重視するあまり、現場軽視という傾向があるときもあります。そしてが強い人は、なんでも実際に体験しないと気が済まなかったり実感が湧かずに理解できなかったりすることがあります。

このような違いは、違うタイプから見ると「話が通じにくい」「理解が遅い」「記憶力が弱い」などの欠点に見えがちです。

しかし、「欠点」ではなく単なるお互いの特徴の違いかもしれないという可能性に思い当たることで人としての視野は広がります。相手のタイプは何か? そのタイプに適切なコミュニケーションの取り方は? このようなことを一歩引いて考えることによって、相手への思いやりと自分の気分の余裕が生まれやすくなります。それは高いコミュニケーションスキルにもなるのです。

自分自身も違うタイプの他人から見るとどう見えているのか、についても知っておいたほうがいいですね。客観性が自ずと磨かれます。

 

ビジネスの現場で、友人同士で、家庭で。いたずらにミスコミュニケーションが生まれないよう、「違い」についてよく理解することが必要です。

ここでもう少しミスコミュニケーションの例をご覧いただきます。なお、これらはあくまで極端な例です。しかし、それにも関わらず、企業研修や講演でこの例を話すと「僕はまさにふだんこの悪い例になっている」「これは自分と部下の関係にそっくりだ」と驚きの声がしばしば上がります。あなたもぜひ自分と誰かの関係を振り返ってみてください。

 

 

ミスコミュニケーション例

 

例1  vs 

 

視覚派のと、聴覚派のがいます。

「あのとき、あの人はどう言ったか」ということを、二人で話しているとします。はその時のことを映画のワンシーンのように覚えています。周りの状況などもぼんやり覚えているので「あのときあの人はこんな感じのことを言った」と正確ではないかもしれないが意味は合っていそうなことを言います。それに対して、ほぼ発言の言葉通りを記憶しているは「いや、あのときあの人は絶対○○と言った」と正確さにこだわり、譲りません。

からすると「イメージがあっているから、いいじゃないか。同じようなものだ」と思うようなことです。しかし、からすると「曖昧にしか覚えていない。この人はいい加減だな」と思うようなことかもしれないのです。

 

 

例2  VS 

 

体感覚派と視覚派がこれからの業務について軽く打ち合わせをしています。

なんでも頭の中で画像や映像に変換するの頭の中は、映画のようにシーンがぱっぱっと切り替わります。何かについて話していたと思えば、「あ、そういえば」と全く別の話に切り替わることも珍しくありません。これは本人にとっては「画像つながり」で自然なことですが、実は他のタイプからすると「どうしてそう話がコロコロ変わるのか」とついていけないところでもあります。

特に、ひとつひとつの事柄に対してしっかりと実感を持ってから、その感覚と共に頭の中に取り込もうとするにとっては、の話し方は「話が変わりすぎてついていけない」と感じることがしばしばです。「え、ちょっと待って。さっきは○○について話していたよね?」と、話の流れを何度も確認しようとします。 しかし、からすると「さっきの話と関連しているのに、どうしてわからないのかな。少し頭の回転が鈍いのかも?」と面倒に思うことがあるのです。

 

 

例3  VS 

 

聴覚派のと体感覚派が参加して、企画の進め方について会議をしています。

聴覚派は「聞こえ方」にこだわることから、理論を重視します。企画や計画などについても理論的にまとまっているか、データとの整合性は、というとことが非常に気になります。しかし「実感」重視である体感覚派からすると、そういったものはあまり意味をなさないものに思われます。そのため「そんな机上の空論よりも、まず現場だ」「とにかく行ってみよう、やってみよう」という方向に主張しがちです。

これが聴覚派からすると「理論的じゃない」とまるでの知性が低いように感じることでもあるのです。そして今度はからすると、「理屈ばかりで実(じつ)がない」と批判したい気持ちになります。

 

 

いかがでしょうか? このようなことが起こっているとき、もしあなたが「それぞれの感覚の違い」が理解できていれば、相手が納得しやすいように言い方を変えたり、建設的な方向になるような提案ができる確率が高くなります。今度は自分と違うタイプへのアプローチの仕方を考えてみましょう。

 

 

各タイプそれぞれへの働きかけ方

 

仕事の上での色々なコミュニケーションで、日頃から自分と他人のVAKを意識しておくと、違いがよくわかり、コミュニケーションの取り方に幅が出て来ます。相手が注意を向けやすい、あるいは受け入れやすい言い方や情報提供の方法を工夫しましょう。以下は、それぞれへの働きかけ方の工夫例です。

 

<人数が少ない商談・会議などで>

 

の場合

 

何かを言葉で説明するよりも、ビジュアルで訴えることで関心が得やすくなります。画像やイメージシンボルになるものをできるだけ用意することです。業績の数字などは具体的に数字を言葉で示されるよりもグラフや図解などの資料で「どうなっているか」がわかるようであると、話が先に進めやすくなります。

「よく見てください」「成功した瞬間が見える気がしませんか?」という言葉は相手の想像を掻き立てる役割をします。「目の前に青い海が広がって・・・」などの情景描写がしてあげられると、相手にとっては実感が得やすくなります。

「見える」「見通せる」ということで安心感を抱くので、まず全体像を示してから細部説明に入る、ということ順序にしましょう。

 

 

の場合

 

説明が論理的であることが大事です。また相手が論理的であることを尊重していることを示すように、端々で褒める、認める、ということもポイントです。逆に「それはあまり気にしなくても」や「そこにこだわる必要はないでしょう」などの否定する言葉は、相手の聞く気を削いでしまったり、いたずらに反発を感じさせる可能性があります。

機能、スペック、具体的な数字やファクトなど文字や言葉の情報はできるだけ用意しておくといいでしょう。論理的に話を進める上で、全体の概要から細部へという流れは良いですが、細部が気になるといったんそこに納得してもらう必要が出てくるでしょう。そこで納得しないと前に進めない場合がありますので、細い答えを用意することに注意を払います。

 

 

の場合

 

サンプルの用意、実際に触ってもらう、という体験型のコミュニケーションが一番です。また「実際に見るとわかります」「ぜひ一度体験してほしい」と言った言葉は、相手の関心を引きます。

「肌触りバツグンで」といった説明より、「ふわふわの感触がホワッと柔らかい感じで頰に当たって」のように「擬態語(ふわふわの、ホワッと、など)」を使い、実際の感触を想像させやすくすると、納得感が強まります。

そして、話をするときは、それが一方的な説明であっても双方向の会話であっても、相手が「腑に落ちた」ようにわかるまで、あまり先へ先へと進めないようにします。

 

 

<大きな会議、広告など大勢を対象とした時は>

 

会議や広告などの多人数や不特定多数の人を対象として考えた時は、上のように一つ一つ上のような対応策は考えづらいでしょう。ですから、全てのタイプに通じやすいコミュニケーションを考えます。

 

大きな会議

 

図表やイメージ画像をできる限り準備し、具体的な数字をしっかりと抑える。自分のタイプに偏った言い方をしていることに気づいたら、他のタイプが好む言葉も混ぜるようにする。相手が「腑に落ちる」までの時間を考えて間をとる。こんなことが考えられます。

 

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それぞれのタイプが好む言葉を均等に混ぜ込むように工夫する。例えば、「あなたが成功した姿が見えますか?」「あなたを賞賛する人々の声が聞こえませんか?」「あなたの肌はその時あなたを包む熱気に触れ、グッと心の底まで熱い思いに浸れるはずです」

何か一文考えたら、それぞれのタイプに合わせて文章を変形させてみると良いエクササイズになります。

 

 

<家庭、パートナー、教育面では>

 

ビジネスだけでなく、プライベートでもコミュニケーションが重要です。ここにもの違いについて考える余地が十分にあります。

これは「よもやま話」ですが、は「愛の言葉を聞きたい」ので「愛している」などの言葉を求め、は「愛を見せてほしい」とプレゼントや献身的な姿など「形」にこだわり、はキスしたり抱きしめたりすることが「愛の示し方」と考えます。パートナー同士のタイプが違うと、お互いよかれと思うことをしているのに、これらの違いによりコミュニケーションでお互い不満を持つことも多いそうです。

親子でものタイプは違いますので、知らぬうちのコミュニケーションギャップが生じる可能性があります。例えばお母さんが、お子さんがだと、叱るときなどお母さんはパッパッと情景を切り替えながら「わかっているの?この前もこうだったよね、そういえばあの時も。どうして反省しないの』と早いテンポで畳み掛けます。それに対してお子さんは、なかなか反省の色を見せられません。自分の中で一つ一つの言葉を咀嚼しながら聞いているので、まだ反省の態度を見せるような段階に進んでいないだけなのですが。それなのに、お母さんは「全然反省していない、わかっていない」とさらに怒りを感じる・・・・ということが起こる場合があります。

 

自分と人は違う。それを意識しながら自分のコミュニケーションをみなおしてみてください。

 

 

いかがですか?  パーソナリティを知る手掛かりの一つ、3つのタイプ、タイプの差がどんな風に出るのか、そして自分と違うタイプの人と接する時にはどんな工夫が必要か、などについてご説明しました。タイプの見分け方も含めて、理解していただけたでしょうか。

 

「Vの私は、Kの部下に話が通じにくいと、いつもイライラしていましたが、タイプの違いだったのかとわかり、接し方を変えたら、うまく意思疎通ができるようになりました」

 

このを知って、上のような感想を漏らす人はかなり多いのです。いかに、人間が自分を普通に考え、違うタイプの他人に「できない」「話が通じない」と思いがちかがわかります。職場で、家庭で、さまざまなコミュニティで、「違い」に配慮し、よりよくコミュニケーションするには自分に何ができるかを考えることが大切です。