この単元では、人の印象を変える服装のディテールをご紹介します。どれも何気ないようですが、品格を左右したり、TPOに合う合わないが決まったりする要素です。
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印象を変えるディテール
この単元では、人の印象を変える服装のディテールをご紹介します。どれも何気ないようですが、品格を左右したり、TPOに合う合わないが決まったりする要素です。
色の心理
色彩は人間の網膜から脳に伝わり、人の無意識に働きかける力があります。そのような研究を色彩心理学といい、今では建物の内装から商品パッケージまでらゆるところに利用されています。
例えば、ピンクは人の肉感などを本能的に思い出させ、優しい気持ち守られたい気持ちなどに働きかけます。
熱感を思わせる赤系統の色は活動意欲や食欲などに働きかけることが知られています。逆に熱を冷ますような色であるネイビーなどは、神経を落ち着かせ、冷静さを助けます。
このような色の性質を知っておくと、イメージのコントロールに役立ちます。
例:
「今日は冷静に話し合いたいからネイビーの服で」
「プレゼンの場を盛り上げたいから、赤を基調にしたスカーフにしよう」
「部下の話を聴いてあげたいので、ピンクベージュの服がいいかな」
赤: 野心的 興奮作用、覚醒作用
オレンジ: 社交的でオープン 陽気
黄色: 人好き ユーモア
ピンク: 愛情 共感
ピーチ: 親切 優しさ
緑: 平和的 調和的
ダークブルー: 知的 責任感 誠実
茶: 落ち着き 安定
グレー: 受動的 重み
あなたのイメージをもう一度みてください。
前の単元で見ていただいた各タイプも、そのカラーイメージが反映されています。方向付けのときに、多くする色をこれで検討いただいてもいいでしょう。
「なめられる」要素を避ける
「女性ということで、少しなめられてしまっているようだ」
意識改革が進む世の中ですが、まだどこか「男性社会」のようなところは残っているようで、このように悩みを言ってこられる女性は少なくありません。これは少し悔しいですね。
ただ、女性の衣服には、ずいぶん前に男性の庇護下にあった時代のデザインニュアンスが残っているものもあります。
以前、「女性のスタイルには長い間ビジネスにおいての「信頼感」「威厳」「誠実さ」などを演出するためのスタイルが育つ素地がなかった」と説明したことを覚えていらっしゃるでしょうか。
そのせいか、女性服には今でも、男性の眼から見て「可愛い」という気持ちを起こさせるようなディテールがあったり、スーツにふだん身を包む男性から見ると、仕事にはカジュアルすぎると感じさせてしまうアイテムがあります。
今現在、女性のブティックでは、仕事用のスーツなどの衣服と、そのようなニュアンスの服は同じように並べて売られています。ですから、それを知らずに身につけていることで、相手から無意識に「頼りない」と見られるようなメッセージを発していることもあるのです。
「可愛い」という気持ちをいたずらに起こさせるものであれば、当然威厳や格のイメージはもたれにくくなります。
カジュアルと見なされ、仕事よりも社交や遊びのほうが向いているようなイメージのものは、仕事への意欲を疑われることになり、信頼感を下げます。
これは損なことですので、少し気をつけていきましょう。
デコルテの出し方が印象を左右する
おもしろいものですが、男性が正式なフォーマルになればなるほど肌を包み隠す装いになっていくのに対し、女性のほうはどんどん肌を解放していくことでゴージャスで格のある装いになっていきます。
ビジネススーツでも、男性が首元を出したりするのは寒々しくなるかカジュアルになるか、ですが、女性の場合は鎖骨のあたりを含む首元=デコルテの見せ方によって、「格」を上げることになります。
通常のビジネスシーンでは、デコルテの出し過ぎはセクシーすぎて禁物ですので、出し方の基準は、上は鎖骨すれすれくらいまで、広がりは鎖骨の真ん中あたりまでです。
しかし、華やかな場面では、このラインを少し下げ、鎖骨から下あたりを見せることにより、ゴージャス感が出てきます。パーティやディナーではそのようなインナーに変えて演出するのもいいですね。
また、キャリアを積み貫禄が出てくると、基準のラインより少し下げるくらいで、ちょうどいい威厳や格が出てきます。デコルテの出し方は常にアップデートしてください。
テーラードスーツの衿も印象を左右する
男性のテーラードスーツには色々なニュアンスの出し方があります。
例えば、スーツジャケットの襟は、「カラー」と呼ばれる首回りの衿と、「ラペル」と呼ばれる胸当てのような衿の二分構成になっていますが、この二つによってイメージが変わります。これは女性のテーラードスーツにも同じことが言えますので、参考にしてください。
●カラーとラペルの継ぎ目であるゴージラインの角度が立つ(垂直に近付く)と、きりっとした表情や威厳が出る。
●ラペルの角度が鋭くなると威厳やフォーマル感が強くなり、角度が下がってくると優しさや柔らかさ、カジュアル感が出てくる。
ちなみに鋭い角度のラペルは「ピークドラペル」といい、やや鋭いものを「セミピークドラペル」、角度があまりついていないものを「ノッチドラペル」と言います。
女性テーラードスーツは、市販の場合は優しいイメージをより考慮してあるのか、「ノッチドラペル」気味の仕様が多いです。
このようなディテールにも少し注意して、ご自身が持つイメージに役立つスーツを選びましょう。
スカートスリットが持つ印象の差
ビジネスアタイアのスカートの基準については、前に「ストレート ひざ丈~ひざ下丈」と説明しました。標準スカートの場合は、スリットはバックセンターです。
これ以外の位置にあるスリットは、それぞれニュアンスが違い、ビジネス感は薄れます。華やか 日常的~ビジネスカジュアルくらいであれば、いいですが、硬い場面にはバックセンター以外は向きませんのでご注意ください。
フロントセンターはアクティブなイメージ、サイドはモード系、サイドスリットはセクシーなニュアンスが出ます。参考になさってください。
スカート丈は勝負どころ
スカート丈は、ビジネスアタイアにおいては意外に印象を強く左右します。標準となるのはひざ丈からひざ下(ミディ)丈です。その上下のヒザ上~ミモレ丈までは何とか「可」というところです。
この標準丈の間のどこらあたりが似合うのかは、お仕事のイメージ、ポジション、年齢、体格によって微妙に違います。
●お仕事のイメージ
アクティブなイメージは少し短めに、金融など堅めのイメージなら少し長めに
●ポジション
ポジションが高いと少し長めが考えられる
●年齢
年齢が高くなるにつれて合うスカート丈は長めになる
●体格
背が高い人はやや長めのほうが落ち着き、背が低い人はやや短めのほうが映える
スカート丈は、このように微妙な加減を必要とします。 男性はスーツのパンツ丈が勝負の分かれ目ですが、女性はスカート丈となります。
購入するときやオーダーするときには一番気をつけたいところです。
いかがでしょうか。意外なところもあったのではないでしょうか。服に限らず「印象」というものは、顕在意識ではっきり意識できるものよりも、ほぼ人が自分で感知していない無意識に働きかけているものなのです。
ですから、服装を選ぶときにはルールやマナーも大事ですし、ちょっとしたディテールも重要性を持ちます。
何より、自分がしっかりと自分の出したいイメージを意図し、それに対して工夫を考えることが、あなたの効果的な服装戦略を支えます。