「足元を見る」と言いますが、靴をはじめとする足元の印象は、想像するよりも全身の印象に影響します。また、装いのマナーとしても、靴で知らずにマナー違反をしている人は意外に多く、大人としては最も気をつけたいところです。

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足元の格とTPO

 

「足元を見る」と言いますが、靴をはじめとする足元の印象は、想像するよりも全身の印象に影響します。また、装いのマナーとしても、靴で知らずにマナー違反をしている人は意外に多く、大人としては最も気をつけたいところです。

服との格合わせのためにも、また3つのゾーンで見ていきましょう。その前に「基本形」をおさえておきます。

 

オフィスの靴の基本形

 

ビジネスシーンにおいて「失礼のない女性の靴」には、3つの原則があります。

 

●ハイヒール

7cm以上のプレーンな形のヒールがある靴をハイヒールと言います。ただ、仕事においては、7cmもきつい、という場合もあるかと思いますので、仕事の場合はだいたい5cm~と考えて差し支えありません。

ピンヒールやコーンヒールなどデザイン性があるヒールはこれに含まれません。

 

●クローズドトゥ

つま先が閉じていること。

 

●すんなりした形

基本的に足の形に沿ったフォルムで、ストラップなどの装飾がつかない。いわゆる「パンプス」の形。

スニーカーのように全体的に分厚いものや、厚底などの特徴的なものは、これに入らない。

 

 

また、つま先がかなり丸い形のもの、スクエアなものは、あまりすんなりとしては見えません。カジュアル感が強くなることから、あまりビジネスには向きません。

どちらもモード感はありますが、カジュアルでモード感のある洋服に合わせるならともかく。オフィスで仕事用のスタイルに合わせるとイメージが中途半端でやぼったさや幼さが目立ちます。

それもあり、仕事で用いることはおすすめできません。

 

 

3つのゾーンで見る靴のTPO

 

このような靴を基本形として、3つのゾーンを見て行きます。

 

 

 

「硬い」

 

=ビジネスの正式・公的な要素が強い場面では、先に説明した「基本形」(※上記参照)が原則です。

加えて、形状に注意してください。

●ヒールはプレーンな形で細すぎないもの

●トゥの形状はアーモンド~ラウンド

●履き口は指の付け根が出ないもの

トゥの形状

 

ヒールは7~9cm、色は黒、材質は牛表革であれば、間違いありません。

いざというときはブラックフォーマルでも使えますので、一足は持っておくことをお勧めします。

なお、よほど緊張しなければならない場面以外なら、甲にプレートなどの装飾がついたものも許容範囲です。

 

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「華やか」

 

=どちらかというと夜、パーティや会食、同じビジネスでも交流会など社交的な付き合いの場面では、許容範囲は一気に広がります。

このような場面では、基本形よりも華奢な形が似合います。ヒール=細目、トゥ(つま先)=アーモンド~ポインテッド、履き口=浅め、などにすると華奢なイメージになります。

 

色は、スーツなどのビジネススタイルに合わせるなら、夜の時間帯の場合は黒や濃い色を基本にします。もちろん着る服とのコーディネートにもよりますが、あまり白っぽい色は夜の時間帯に合いません。しかし、インフォーマルドレスの場合は色はドレスの色に合わせて、もう少し柔軟に考えても大丈夫です。

 

装飾も、ストラップがついたものや甲に装飾があるものなど、華やかなイメージのものはだいたい合います。日中のオフィスでは派手すぎる「ピンヒール」の靴も、華奢なイメージが強く、華やかさに一役買います。甲にビジューのようなきらびやかな装飾も夜の時間帯にはいいでしょう。

材質は、表革エナメルが考えられます。ラメフォーマルシューズのような布帛のもの(※)も合います。

(※慶事やパーティにおけるフォーマルドレスには、サテンなど布帛の靴を合わせ、通常革靴は使いません)

 

 

 

こういう場面では、低いヒール、太いヒール、丸すぎるトゥ、そして履き口が深く甲を覆うような形の靴は「やぼったいイメージ」となり、社会経験や感性も疑われかねません。いくぶんはエレガントできらびやかな要素を加味する工夫が必要です。

 

 

「日常的」

 

=社内での会議や作業など、外部の人間とあまり会わない日や、気のおけない相手との軽いアポなどの日は、かなり自由に選べます。

とはいっても、ある程度責任のあるポジションなら、あまりカジュアルすぎる靴よりも、「きれいめ・きちんと感」が出しやすい靴を何足か用意しておくことをおすすめします。華美過ぎないデザインパンプス服と統一感のある色のプレーンパンプスなどがあれば、カーディガンを羽織るスタイルやブラウスのセットアップでも一定のエレガントさを加えやすくなります。

「基本形」はいちばん無難な形ですが、5cm以下のローヒールパンプス、季節によってはオープントゥなどの選択はほとんどのオフィスで「可」であるはずです。

材質は、表革に加えて、スエードなどの裏革もいいでしょう。

色は、仕事のイメージからはずれない黒、ダークブラウン、ベージュ、グレージュなどのシックな色におさえておきましょう。

あとは、ご自身が出したいイメージに合わせて節度を考え、自分なりのルールを作っておいてください。

 

 

ストッキングのお話

 

タイツはだめなのでしょうか

 

あくまで原則論ですが、オフィスでの女性の足元は基本はストッキング着用です。少なくとも「硬い」「華やか」の場面については、薄手のストッキングの着用をおすすめします。

 

足元を覆うものが不透明で厚くなればなるほど、カジュアル感が強くなります。寒い季節には酷と思うのですが、厚いタイツはオフィスには合いにくいのです。

特に「硬い」「華やか」においては、服との統一感を考えると「やっぱり薄手ストッキングがいいでしょうね」と言わざるを得ません。

 

しかし、最近は25デニール、30デニールなどのパブリックを意識したタイツがありますので、日常的場面で利用されたらいいでしょう。

 

ストッキングの色は何がいいでしょうか

 

基本となるのはベージュ=自分の肌の色です。足が白浮きすると、非常にやぼったく見えますので、選ぶときは実際の肌色より少し濃い目を選びます。

 

ただ、ある程度キャリアや年齢のある女性は、ダーク色の服を身につけるときに限っては、それに合わせてもう少しダークな色の選択をされることをおすすめします。そのほうが引き締まって見え、格が出るからです。

例えば、ネイビーやダークグレー、チャコールのスーツなどを身につけるなら、濃いグレーなどを合わせると全体が引き締まります。ブラウン系のものであれば濃いブラウンのストッキングはシックな雰囲気を作ります。

 

黒のストッキングは、ブラックフォーマルのアイテムであるので、本来ビジネスではタブーとなっています。ただ、「華やか」の場面で黒っぽいドレスを着用するときなどは、この限りではありません。

 

いずれの色も、生地の薄さ・厚さが意外とイメージを左右します。薄手のものは非常にエレガントな印象になり、少しでも厚さを感じさせるとやぼったい印象が一気に強くなります。購入するとき気をつけて下さい。

 

 

バッグの格とTPO

 

「女性のビジネスバッグって難しいですよね」

これもよく聞くお言葉です。実際なかなか美観・機能ともにそろっているものは女性のアイテムの中で見つけることが難しいと言えます。

これも3つのゾーンで見て行きましょう。

 

 

 

「硬い」

 

バッグなどの小物で仕事の意欲や姿勢を見られます。まず、A4の書類が入るくらいの大きさがあるものを選びましょう。

 

「硬い」場面がそれなりにある方は、A4が十分入るサイズで、10cm前後のマチがあるバッグは一つあったほうがいいでしょう。

黒、または濃いダークブラウンなど渋い色調で、表革製か表革を中心としたナイロンとのコンビネーションバッグをおすすめします。

上が開いたトートタイプではなく、蓋つきかファスナーなどできちんと閉じることができるものにしましょう。またあまり華美な装飾があるデザインは禁物です。

訪問先ではバッグは通常足元におきますが、底に鋲打ちがしてあり、自立することがマストです。

余力があれば、ブラウンがかった濃い目のグレーの色調「トープ」や、濃いベージュを持っておくと、ベージュやグレージュなどの衣服を着る時にコーディネートがしやすいです。

 

 

「華やか」

 

どちらかというと夜、パーティや会食、同じビジネスでも交流会など社交的な付き合いの場面では、小さいバッグとなります。ひじにちょっと下げるハンドバッグサイズか、クラッチが必要です。

 

フォーマルシーンでも、大きなバッグはマナー違反です。小ぶりのバッグやクラッチバッグなどを持つことが決まりです。

 

これは席などで邪魔になりやすいことも理由ですが、バッグというアイテムのそもそもの成り立ちにも関係してます。

もともと、色々なものを持って運ぶバッグは、貴族階級では持つ必要がないものでした。必要なものはおつきの人が運んでいたので自分で何かを持つ必要はなかったわけですね。こんなことから、アクセサリーとしてほんの身の周りのものを持ち運ぶ小さなバッグはともかく、大きなバッグは社交的な場面では下品とされていた歴史があります。

 

こんな成り立ちを考えると、ちょっと疑問を感じますが、少なくとも見た目では、華やかな場面では小ぶりのバッグやクラッチのほうがしっくり似合い、持つ人がエレガントに見えるのは確かです。やはり、そのような場面に似合うハンドバッグかクラッチバッグを一つ持っておきましょう

 

仕事帰りに寄るようなスケジュールの場合は、小さなバッグだけではいられません。こんなときは、小さなバッグをいつもの仕事用バッグと一緒に持って出ましょう。あらかじめ小さなバッグに必要なもの(例:最低限のメイク用品、スマホ、名刺、お金など)を入れておき、華やかな場面に出るときにはクロークなどに大きな仕事用バッグを預けることにすれば解決です。

 

 

「日常的」

 

=社内での会議や作業など、外部の人間とあまり会わない日や、気のおけない相手との軽いアポなどの日は、かなり自由に選べます。

 

とはいえ、仕事道具が入るものとなると、それなりのサイズ感は必要です。やはりA4が入るくらいの大きさがいいでしょう。

学生がよく持つトート型は、軽くモノも良く入るので最近男性にも人気の形です。そのおかげで「ビジネストート」というジャンルができつつあります。

よくあるキャンパス地で、いかにも学生らしいカラーのものとは一線を画したシックな革製のものなどは、日常的な場面に合います。

 

また、ボストンバッグのような形をしたサッチェルタイプなら、女性の購入場所に多い形です。材質が柔らかく自立しないタイプであれば、書類を保護するファイルなどを合わせて購入しておくと安心です。