ビジネスには大きく分けて3つのシーンがあります。そのシーンに合った服装のパターンを理解しましょう。

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シーンで考えるスタイルの的確な選び方

 

何が「威厳」や「きちんと感」を出すか

さて、ビジネスの服装は「インフォーマル」、つまりフォーマルではない服装です。ですから、フォーマルをそのまま着ると「変」ということになります。(ですから、特に男性のスーツの場合、フォーマルシーンの色である「黒」を選ぶと、とても奇妙に見えます)。

しかし、厳格なシーンであればあるほど、色や形がより「フォーマル的」であったほうが、正式なきちんとした雰囲気になります。そのため「フォーマル」ではないが、フォーマルに「近い」と選択が「厳格な雰囲気」を作ります。

ですから、ビジネスで身につける形、色や柄も「フォーマルではないが、フォーマルに近い」ものを選ぶと、威厳があり、また「きちんと感」といった真摯な姿勢が表現しやすいのです。

 

時間帯の感覚もそうです。

フォーマルは「昼・夜」の区別がきちんとしている服装です。その感覚があるせいか、気を使うべき場所や場面では、インフォーマルながら時間帯をある程度意識する必要がでてきます。また、「昼っぽい」「夜っぽい」色やアイテムの選び方ができるほうが「ものがわかっている」印象を生みます。

 

それらをふまえて、「どの程度フォーマルに近い雰囲気にするか」をビジネスシーンの3つのゾーンに分けて考えると、それぞれに適切な形や色、柄を選びやすくなります。


 

3つのゾーンは「硬い」「華やか」「日常的」で考えましょう。この3つは、この講座では何度も出てきます。イメージをつかんでおいてください。

 


気づいたことをメモできる「ドレスコードシート」があります。これを使ってハンドライティングをすると、説明を自分の中に落とし込みやすいですよ。

 

 


 

 

 

3つのビジネスシーン

 

「硬い」華やか」「日常的

ビジネスでのドレスコードを、この3つのゾーンで分けると、場面の考え方は下図のようになります。

いちばん、形や色に制限が加わるのが「硬い」ソーンです。少し緊張が必要な場面であり、最も信頼感や誠実さの演出が必要なゾーンです。

そして、硬い華やか日常的→……、とプライベートやカジュアルに向かっていくにつれて、似つかわしい服装や色の許容範囲は広がっていくとお考え下さい。

 

 

「硬い」

=ビジネスの正式・公的な要素が強い場面。また、まだ情勢がつかめないビジネス席などは「無難」という意味で、硬いイメージの装いをしておいたほうがいいでしょう。例えばまだ打ち解けてない相手との商談、初対面、何かの挨拶の場面などです。

また、謝罪の場面など「誠実」「敬意」を最優先で表現しなければならない場面は、これにあたります。

 

「華やか」

=どちらかというと夜、パーティや会食、同じビジネスでも交流会など社交的な付き合いの場面です。服装は「センス」と「社会的な成熟感」を同時に見られます。

華やかな場面に、先に説明した「硬い」イメージの服装であったり、「日常的」すぎる服装であると、「やぼったいイメージ」となり、社会経験や感性も疑われかねません。いくぶんかエレガントできらびやかな要素を加味する工夫が必要です。

 

「日常的」

=社内での会議や作業など、外部の人間とあまり会わない日や、気のおけない相手との軽いアポなど。節度さえ守れば大丈夫、という感覚の場面です。

 

※「ビジネスカジュアル」について

ビジネスは「インフォーマル」ながら「パブリック(=公共の場所)」にふさわしい服装をするのが基本です。そのため、以前はビジネスの服装はカジュアルと一線を画していました。

しかし、「クールビズ・ウォームビズ」が一般的になってきてからは、その境界線がややあやふやなものとなっています。また「ビジネスカジュアル」というスタイルも存在感を増してきました。

こんな中で、あなたのような「仕事ができるエレガントな女性」のビジネスカジュアルはどうあるべきでしょうか。それには下記のように考えてください。

 

1)「自分だけがOK」のプライベートタイムに着るカジュアルと線引きする

カジュアルは気軽に着られ、リラックスして仕事ができることが利点ですが、気楽すぎて格が落ちることが難点です。楽さ加減は追求してもいいですが、自分の役職など立場の意識は持っておきましょう。(米国ではわざわざ「エグゼクティブカジュアルというドレスコードがあります。それだけ服装で立場を表す意識がはっきりしているのです。)

●色を多く使わず色数を抑える。柄も控えめにした方が品が良くシック。

●色数を抑える分、アクセサリーの工夫などで、華やかさを演出する。

●ジャケット着用を基本とする(スーツのジャケットではない、柔らかいスタイルで良い)

 

2)比較的コンサバティブな装いを意識する

業種によっては流行を前面に押し出す必要があることもありますが、代替においては、コンサバティブなスタイルのほうが品や自然な威厳といったイメージは与えやすいものです。コンサバティブの特徴は身体に程よくフィットするサイズ感ですので、ビッグシルエットやピタピタなタイトは合いません。

 

3)カジュアルの中の違いを意識する

カジュアルなスタイルでオフィスなどのパブリック的な場所に出ていく場合は「タウンカジュアルやスマートカジュアル」のスタイルが基本となり、「リゾートカジュアル」や「スポーツカジュアル」のアイテムは好ましくありません。区別して身につけるようにすることをおすすめします。

●スポーツカジュアル(キャップ、トレーナー、フーディー、ジャージパンツなど)は避ける

●リゾートカジュアル(サンドレス、サンダル、アロハシャツなど)は避ける。

カジュアルは、「いかにもビジネス」というイメージのスタイルよりも、センスが問われます。また、カジュアルスタイルは、気軽さや親しみを感じてもらうにはいいですが、それだけに「格」や「威厳」は出しにくいものです。

それに加えて、普段のビジネススタイルと著しくギャップがあると、「○○さんって、プライベートスタイルは意外と…」と、周囲からは幻滅されかねません

自分のビジネスでのイメージが必要な場面では、カジュアルといえど自分のブランディングに関わります。着る色やスタイルに注意していください。

 

 

3つのシーンそれぞれ何を着る?

 

それぞれのソーンには、どんなスタイルが適切と言えるでしょうか、詳しくみていきましょう。

その前に、男性の場合はどうかを説明します。この男性のビジネスアタイアと女性のものをあとから比較すると、女性のビジネスアタイアの特徴がわかりやすくなります。

 

男性のビジネスアタイア

あくまで原則としてのイメージですが、ゾーン別に雰囲気をつかんでください。

 

いかがでしょうか。

「硬い」場面、「華やか」な場面では。威厳や品格が出しやすい、ダークスーツが中心です。

ダークスーツとは「ネイビー、ダークグレー、チャコール」いずれかの生地色のスーツです。この3つの色が、ビジネスアタイアでは「最も格が高い色」です。ダークブラウンはこの中に入りません。ブラウンは色としてはもう一段格が落ちます。

同じダークスーツでも、硬い場面では、無地か目立たないストライプ、華やかな場面では、少し目立つストライプ、と柄を変えると雰囲気が変わります。

日常的な場面であれば、他の色のスーツも良いですね。例えば、少し明るいネイビー、ブラウン、明るめのグレーなどです。 また、ビジネスカジュアルでは、ジャケットを着用する「ジャケパンスタイル」くらいが適切です。

 

 

 

男性のビジネスアタイアについて感じをつかんていただけたでしょうか。

ここからが女性です。

 

 

女性の悩み「ビジネス用『鉄板』がない」

 

「女性には、男性のビジネススーツのような

『鉄板』がない」。

 

これは、女性の口からよく聞く言葉です。

ビジネス界の主役は長く男性であったため、男性のためには、長い歴史の中で「信頼感」「威厳」「誠実さ」をすぐに演出できる鉄板スタイル=ビジネススーツが育まれてきました。

その男性に比べての話ですが、女性はビジネス界に参画しはじめてまだ歴史が浅く、それまでは「家庭」や「社交」が生活の中心でした。

女性のスタイルには長い間ビジネスにおいての「信頼感」「威厳」「誠実さ」などを演出するためのスタイルが育つ素地がなかったのです。

 

それゆえ、理不尽なことですが、女性らしさゆえに仕事で信用されない、ということも少し昔にはよくあることでした。ですから、昔の女性は男勝りなスタイルで仕事をする人も多かったのです。今はそんな理不尽なことはありませんが、このような経緯は、ビジネス上でのご自身のイメージを管理する上で少し考慮する必要があります。

そして、ビジネス用の服装は女性の活躍に合わせて発達してきました。女性にもビジネス用のスーツはあるのです。ただ、大きく二種類にわかれています。

 

 

女性のスーツ1「テーラードスーツ」

 

ビジネスでも女性が活躍し始めると「男性スタイルの女性版」である女性用の「テーラードスーツ」が生まれました。男性スーツに限りなく近い形は、すぐに「ビジネス」を連想しやすく、その延長線で「信頼感」「威厳」「誠実さ」は表現しやすくなります。男性の鉄板ビジネススーツと同じく便利な形です。

そして、テーラードスーツのスタイルでのバリエーションも作られ始めました。

 

女性のスーツ2 「デザインスーツ」

 

一方で、女性が活動的になるにつれて、女性が使っていたスタイルに、より動きやすく、また「仕事」という雰囲気にも合う要素が加えられ始めました。そこから、男性服にはないような形のスーツも生まれ始めました。

このようなスタイルは、女性らしさを失わず、仕事にふさわしいイメージや機能が加わっています。女性の仕事服、特にスーツに色々な衿や上着の形があるのは、もともと仕事用以外の服からできたからです。「テーラードスーツ」に対して、ここでは「デザインスーツ」と呼びます。

 


まず「硬い場面」で登場するスーツを見ていただきました。次の項目に進んで下さい