靴の種類とTPO

 

仕事の靴、何となくイメージで履いていませんか?

スーツに合う靴、合わない靴。カジュアルに似合う靴、似合わない靴。それぞれ基準があります。このページでは、スーツスタイルを中心として靴のTPOと装いへの合わせ方のポイントについてお伝えします。

男性用のビジネスドレスコード表で大きな合わせ方の傾向をしっかりつかんでおきましょう。

 

スーツに合わせてよいのは「ドレスシューズ」というカテゴリーに入る靴です。

日本の語感では「ドレス」というと、女性が身につけるアイテムのイメージを持ってしまうかもしれません。しかし、「ドレス」は単に「装い」、それも「きちんとした装い」というニュアンスの意味です。ですから「ドレスシューズ」はきちんとした装いに似合う靴。ここではビジネスのためにきちんとした格好をしたときに合わせる靴と考えてください。

着ているものはちゃんとしたスーツなのに、足元にドレスシューズとは思えない靴を履いていると非常にアンバランスなスタイルになります。元から洋服を着ている国や地域の装い感覚から見ると「滑稽」に映る時もあります。

ある英国人は「日本にはスーツにローファーを履いているビジネスパーソンがよくいるけど、私たちの目から見ると”晴れ着に下駄”を履いているような奇妙な格好に見える」と発言していました。靴の選択をおろそかにして、印象を悪くしたり侮られたりしないようにしたいものです。

 

 

上の図で「格が高い」はビジネスフォーマルの場面やきちんとした場所に履いて行っても差し支えないこと、「格が低い」はカジュアル寄りの靴で、ビジネスフォーマルや気を使うべき場所には向かないこととご理解ください。

同じく上の図で「華やか」「硬い・真面目」の記述は、一般的にどのような印象を与えるかを示したものです。コーディネートでも変わりますので参考程度に見てください。

靴は、一般的にその形が生まれた経緯から格が決まる傾向があります。もともと宮殿用に作られた、貴族などが室内で履くのにふさわしい靴であった、というものがドレスシューズとして残っています。そしてアウトドアやスポーツ用に作られた、軍隊で用いられたのが発祥であったという靴はカジュアルな場面でしか履けない靴と見做されることが多いのです。

この分け方は「インフォーマル」の場合です。フォーマルは少し違う靴も必要な場合があります。ただし、黒表革のストレートチップやプレーントゥはよほど制限のあるフォーマルシーン以外は合わせることができますので、ノーマルなものを一足もっておくことは便利です。

 

詳しい「靴」解説

 

それぞれの靴の説明と、ドレスコード表で見る「ふさわしい場面」をご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

靴のディテール"内羽と外羽」とは?

 

靴は、同じ形でもその細部によって「格」が変化します。代表的なディテールをご紹介します。

よく出てくるのは「内羽式」「外羽式」です。「内羽式」はドレスシューズに、「外羽式」はカジュアルシューズになります。ひもがついている靴でも、外羽式の靴をビジネススーツに合わせるのは間違った合わせ方です。また、カジュアル目なセットアップやジャケット&パンツに内羽式の靴は靴だけが妙に上品に浮いてしまい、バランスの悪いコーディネートになりがちです。

「内羽式」とはヒモを通す部分の先が靴に縫い込んである仕様。収まりがよく上品な印象です。

 

「外羽式」とはヒモを通す部分をかぶせて縫ったような仕様。ヒモを通す部分が大きく開き実用的でワイルドな印象。

 

 

 

 

皮革の色や材質で決まる「格」に注意

 

 

靴は皮革の色でも格が変わります。黒はフォーマルからインフォーマルまで。ダークブラウンはインフォーマルなら許容範囲が広いですが、明るい茶やその他の色になってくると、カジュアル寄りの印象が強くなります。

材質も、エナメルはフォーマルかモードファッション系のスタイルのみ。表革はご存知の通り許容範囲が広く、裏革で起毛のあるスエードやベロアはカジュアルなシーンのみとなります。

また、同じ「プレーントゥ」と呼ばれる形でも、内羽式ですんなりと細い形のものはフォーマルも使えるくらいきちんと感がありますが、外羽式で形がずんぐりと丸っこくなってくると、カジュアルシーンしか向かない靴となります。

 

 

皮革の種類もいくつかあり、何を使っているかによって「格」が変わります。希少な革で価格が高いものでも、格からすると低いということはよくあります(着物で言えば大島紬は価格が高いものが多いですが格の高い席ではふさわしく無いことと同じです)。

下図はあくまで一般論ですが、参考としてご覧ください。

 

 

 

「ノーマルな形」の靴を持っておこう

 

靴は、同じ形でもその細部によって「格」が変化すると上でも言いました。

もし、何足でも靴が持てるなら、その細部の違いによる雰囲気の違いを楽しむのもいいでしょう。しかし、例えば「プレーントゥ」や「ストレートチップ」のようなフォーマルからビジネスまで幅広く使える一足を持っておきたい、という場合は「ノーマルな形」の一足にすることをおすすめします。

 

「ノーマルな形」は特に「トゥ」(つま先)の形とコパの状態に注目してください。

何にでも使えそうな万能な一足は「ラウンドトゥ」がおすすめです。「ラウンドトゥ」はその名の通り丸いつま先です。角張った「スクエアトゥ」や先がかなり細い「ポインテッドトゥ」と比較すると、その形がわかりやすいでしょう。ただし、あまり丸すぎると、子供っぽく野暮ったくなりますので、「やや細めのラウンドトゥ」を探してください。

 

 

 

 

「コパ」とは靴の底の側面で、甲の部分より張り出したところをそう呼びます。しっかりと張り出したものは装飾的で、それが洒落た雰囲気を醸し出しているのですが、それだけに「どこにでも履いていいける」という万能さは無くなります。フォーマルからビジネスまで幅広く使える一足を目指す場合は、あまり張り出していないものを選んだほうが良いでしょう。

 

 

「トゥ」も「コパ」も、食事やパーティ、友人のウェディングなどは上で言ったようなことはそれほど気にしなくても良いのです。装飾的なディテールで何ら問題はないからです。しかし、問題は誠実さや真面目さが必要なシーンです。そのようなシーンには装飾的なディテールは失礼になったり相手の感情に差し障る印象を与えることがあるからです。謝罪や弔事、厳粛なセレモニー的な場面では、「ノーマルな一足」がどうしても必要になるのです。

 

「仕事のできない人」の足元に気をつけて

 

靴を含め「足元」には注意を払いましょう。「足元」はその人柄や社会的な格を表すものとして認識されます。シリコンバレーでも、一見無造作にカジュアルスタイルでいるような人ばかりですが、そんな人たちも「靴」に対してはその合わせ方や格などを非常に気にしています。そんな大事な「足元」に「無頓着」であるのは「才が無い」と公言しているようなものなのです。

まず、靴やソックスの色の選択には気をつけてください。

足元の靴だけが浮いて見えたり、ソックスだけが目立ったりするのは「イケてない」スーツ姿の典型です。下記に注意をしてください。

 

●靴の色はスーツより明るかったり軽かったりしてはいけない

●ソックスは靴の色あるいはパンツの色と同じ色系統・同じトーンにする

 

 

次にソックスの丈です。洋服国では「スネの素肌を見せる」ことは最も嫌われる行為であり「身だしなみができていない」とみなされます。特にスーツスタイルの時に、足だけ素肌がのぞくような着方は「大人の常識がない」と見られ、ビジネス能力まで軽く見られかねません。

ヒザくらいまであるソックスを常備しましょう。

 

 

足元が奇妙なフォルムであると、それだけでスーツスタイルが野暮ったくなり、また社会人としてのセンスが疑わしいような印象となってしまいます。「おかしい形の靴」を履いてはいけません。念の為、よくある「おかしい形の靴」をご紹介します。

●トゥが非常に尖った、または長い形の靴

モード系ファッションならいいのかもしれませんが、ビジネスでは軽さや不真面目さしかありません。

●反り返った靴

靴の手入れが悪く、甲にシワが入ったり甲が反り返っている状態の靴は身だしなみができていない印象、自分の身の回りをマネージできない印象があります。

●「ギョウザ系」厚みがあり縫いシワや縫いヒダがわかる靴

まるでギョウザのようにシワやヒダがわかる、全体的に厚みがある靴は鈍重な印象を醸し出します。またポジションの無い人材に見られる傾向があります。

 

以上のようなタイプの靴は決して選ばないでください。

 

 

そして最後に「手入れそのものが行き届いていないことがはっきりわかる靴」をあげます。

靴だけのことではありませんが、「手入れの良し悪し」は人から見てはっきりとわかります。手入れの悪い印象は、不潔感だけでなくだらしない生活態度が感じられ、それが仕事の姿勢まで判断される元となります。また「自分の身の回りが見えない」人であることを印象づけることになるのです。手入れはくれぐれも大切にしたいですね。