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ビジネスで適切な服装を見分ける

 

ドレスコードを見分けるための3つのシーン

 

ビジネスの服装は「インフォーマル」、つまりフォーマルではない服装です。ですから、フォーマルをそのまま着ると「変」ということになります。

しかし、最上級の敬意や正式な雰囲気を演出する必要がある場合は、身につける色やアイテムなどを選ぶ際には「フォーマルではないが、フォーマルに寄せた」ものを選ぶことになります。このようなスタイルは一般のフォーマルと区別して「ビジネスフォーマル」とも呼ばれます。

また、ビジネス関連のパーティや食事会では日中のビジネスとは違う華やかさが必要な時もあります。加えて、フォーマルでは時間帯をある程度意識する必要があると言っていたのと同様に、その時間帯に配慮することが洗練された雰囲気を生み出します。そのように場面の雰囲気に応じた装い方を工夫できる人は「ものがわかっている=できる」印象を生みます。

このように、厳格なビジネスフォーマルや華やかさを意識したい場面があるいっぽう、ふだんの作業や社会会議、気の置けない取引先と会うだけの日、テレワークなどカジュアルな服装で良い場面もあります。その場面や会う相手によって装いのトーンは当然変わります。

適切な装いのトーンを選ぶには3つのシーンを基準にしましょう。

 


<ビジネスの3シーン>

「硬い」 =ビジネスの正式・公的な要素が強い場面。例えばまだ打ち解けてない相手との商談、初対面、何かの挨拶の場面などです。謝罪会見などは、これです。

「華やか」 =どちらかというと夜、パーティや会食、同じビジネスでも交流会など社交的な付き合いの場面です。

「日常的」 =社内での会議や作業など、外部の人間とあまり会わない日や、気のおけない相手との軽いアポなど。節度さえ守れば大丈夫、という感覚の場面です。

エグゼクティブのビジネスカジュアルはここに注意

  ビジネスは「インフォーマル」であり「パブリック」にふさわしい服装をするのが基本です。そのため、以前はビジネスの服装はカジュアルと一線を画していました。   しかし、「クールビズ・ウォームビズ」など暑寒に耐えるための着やすい服装が取り入れられるようになり、さらにオンラインで会うの機会も増えたことから、どこからどこまでがOKなのか境界線があやふやなものとなっています。

ただし、服装は自分のために着るだけではなく、相手への敬意や仕事への姿勢など社会的なメッセージを示すものです。ましてや、会社やチームを代表するリーダー的立場の人なら、服装にも「責任感」というニュアンスが必要です。

「自分だけがラクならOK」のプライベートタイムとは線引きをし、自分の立場や相手に示したいものにふさわしい色・柄・アイテムを厳選するべきです。何より、カジュアルに装う場合も「エグゼクティブらしいビジネスカジュアル」を意識しましょう。

カチッとしたビジネススタイルではない、リラックスしたスタイルながら、「上質感」は大切にすることが必要です。そのためには下記を基準に考えてください。

<エグゼクティブらしいビジネスカジュアルの基準>

 

●外部の人間に会うときは、オンラインでもジャケット着用を基本とする。(スーツのジャケットではない、柔らかいスタイルで良い)

●内部の人間、気の置けないお取引先などであればカーディガンなど柔らかい羽織ものもあり。

●男性のコットンシャツは暑い季節も長袖が基本。(袖をまくって5〜7分袖くらいにして着用)

●特に意味がない限り、色を多く使わず色数を押さえる。柄も控えめにする。

●スポーツの時に着るカジュアル(ジャージ、ゴルフウエア、フーディー、ランニング、キャップ、スポーツサンダルなど)は避ける。

●襟元がだらしなく見えるもの(ポロシャツや古いTシャツ)は避ける。

●リゾートカジュアル(半ズボン、短パン、サンドレス、サンダル、アロハシャツなど)は避ける。

●センスによっぽどの自信がない限り、量販店の安価なアイテムは不可。特にジャケットはカジュアルこそ良いものを選ぶ。

カジュアルこそ、センスと節度が問われます。 ここで気を抜いたり、普段のビジネススタイルと著しくギャップがあると、周囲からは幻滅されかねません。自分のビジネスでのイメージが必要な場面では、カジュアルといえど自分のブランディングに関わります。着る色やスタイルに注意していください。  

 

各シーンの実際の服装イメージ

 

3つの各シーンの実際の服装イメージです。、目安として感覚を掴んでおいてください。(男女別)

 

男性のビジネスドレスコード
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男性エグゼクティブクラスの基本はダークスーツ。日常的な場面であれば、少し明るめの色のスーツも良い。どんなにカジュアルでもビジネスではジャケットを着用する「ジャケパンスタイル」「セットアップ」くらいが適切。

スーツに合わせるビジネスシューズは「ドレスシューズ」がルール。「ドレスシューズ」とは、昔々は貴族階級が宮殿内や室内で履くための靴が由来で、現代では「スーツ用の靴」と思っておけば十分です。

ドレスシューズは「ヒモあり」「内羽根式(下図参照)」「すんなりした形」が基本です。

靴の「内羽式」と「外羽式」の違いは、ヒモを通す部分がどのように作られているかの違いです。

「内羽式」は先の方が靴に縫い込まれており、広げようとするとV字型に開きます。それに対して外羽式は外から甲の部分を覆うように乗った形でついています。この違いはもともと室内用(宮殿や邸宅)に作られたものか、アウトドア用に作られたものかの違いを表し、その違いが「ドレスシューズかどうか」を分けています。

硬い場面

「硬い場面」ではダークスーツが基本。 ダークスーツとは、「ネイビー、グレー、チャコール」のスーツです。それに白のシャツ、無柄か小さい柄のネクタイが基本のスタイルです。

靴は「ヒモあり」「内羽根式(下図参照)」「すんなりした形」の代表格、プレーントゥストレートチップ黒表革のものを合わせます。

華やかな場面

「華やかな場面」では、スーツの色は同じくシックにダークな色にしたいですが、合わせるシャツをごく薄いブルーにしたり、ストライプを合わせたりしてもいいでしょう。また、ネクタイやチーフに少し華やかな柄を加えると引き立ちます。ただし、華やかといってもビジネスである限り限度があります。色合いはあくまでシックにした方が品がいいはずです。

華やかな場面では、上のプレーントゥストレートチップ黒表革のほかに、装飾性があるウィングチップモンクストラップが洒落た雰囲気を演出します。ただし、ウィングチップやモンクストラップはセレモニー色が強い場合は避けたほうがいいでしょう。皮革の色も、セレモニー色が強くなければダークブラウンや深いボルドーなども、特にダークグレーのスーツには似合います。

日常的な場面

「日常的」になるにつれ、スーツの色はダークブラウンや少し明るめのブルー、ダークグリーンなど、色々に楽しんではいかがでしょうか。シャツも薄いイエローやピンク、あるいはストライプなど、自分を柔らかく見せる演出ができます。しかし、あまり大きい柄や派手な色はNGです。

ビジネスカジュアルでは、ジャケットは必ず着るものと思ってください。しかし夏であればコットンの涼しげな素材、冬であればツイードコーデュロイの起毛素材など、普通のビジネスでは着られない素材を季節に合わせて身につけることができます。

シャツはネクタイを外して良いカジュアルシャツ=ボタンダウンドゥーエボットーニも良いと思います。ポロシャツもいいですが、あまり衿がクタクタになるものは体型がカッコ悪く見えます。最近は衿が普通のシャツのように立つものも多いので、「ラクでしかもきちんと見える」アイテムを手に入れてください。

靴は、ビジネススーツに合わせるなら「ヒモあり」「内羽根式」「すんなりした形」の3つがやはり条件です。しかし、もっとカジュアルなセットアップやジャケット&パンツのコーディネートなら外羽式のプレーントゥやユーチップ、チャッカーブーツなどが似合います。またローファーやスリッポン、スニーカーも選択肢に入ります。

男性の方へービジネススーツには「ルール」が必要

男性のビジネススーツには、長い歴史をかけて「ビジネスをする男性」をより良く見せるための衣服となりました。その分、細かい決まり事や紳士のための暗黙のルールというものも多いのです。 これを知らずして、エグゼクティブ然とした雰囲気を醸し出すのは非常に困難です。最低限のルールを知り、それを守流ようにしましょう。

 

女性のビジネスドレスコード
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女性の場合、男性よりもビジネスアタイア(仕事服)の選択が難しいと言われています。

難しい理由は、主に下記の点です。

●男性のスーツがもともと「出仕(勤務、任務に就いて仕事をすること)」を意識して発達してきたことに比べ、女性の衣服は社交目的の色合いが強かったので、仕事のための衣服体系が現代までなかった。

●上記のことから、女性のビジネススーツのデザインは男性スーツの形を模したものと、女性の社交服を動きやすくしたものとの2方向から発達しており、一元のルールに照らし合わせた選択を難しくしている。

●長く社会でアシスタント的・サブ的な役割と見なされることが多く、ビジネスシーンで主役を努めるためのビジュアルイメージが確立されていると言えない。

以上のことから、はっきりとした正解が分かりにくく、状況や自分の意図が男性よりさらに重要になります。しかし、一定の傾向は存在していますので、下記を参考にビジネスドレスコードを判断してください。

上で、女性の場合は男性スーツの形を模したものと、女性の社交服を動きやすくしたものとの2方向からビジネス服が出来上がってきており、ドレスコードはやや複雑になります。ただし、女性らしさや華やかさをどの程度出すか、あるいは絞るかで演出の幅は広がるおもしろさがあります。

女性はビジネス服として選べる色も男性のものより幅が広くなります。しかし、「硬い場面」では男性と変わらず、ダークな色の選択が適切です。

女性の場合の靴は「ハイヒール」「クローズドトゥ」「すんなりした形」の3つがビジネス服に合わせる条件です。 絶対に一足持っておきたいのは「黒表革のプレーンパンプス」です。硬い場面では必ず選びましょう。

あとは服装に合わせて、華美過ぎないデザインパンプス服と統一感のある色のプレーンパンプスなどが便利です。 スエードやヌバックは素材としてややカジュアルなため、硬い場面や華やかな場面用に購入すると損をすることがあります。

なお、エグゼクティブの一足目の黒表革プレーンパンプスは下記のものを用意します。

●ヒールの高さは7cm〜9cm(高いヒールが苦手な方も、5cm以上は欲しいところ)

●ヒールの形状はプレーンな形で細すぎないもの(太いものや四角いものは避けること)

●トゥの形状は丸すぎず、細すぎず(アーモンド~ラウンドの中間くらい)

●履き口は指の付け根が出ないもの

硬い場面

長く男性社会であった「ビジネス」の場面では、ビジネス服としてテーラードスーツは基本の形となります。、特に「硬い場面」では、ダークカラー(ネイビー、ダークグレー、チャコール」テーラードスーツが第一の選択です

しかし、テーラードスーツのイメージがかえって硬すぎる場面や女性らしさがあったほうが場面に効果的と考えられる場合はデザインスーツを選びましょう。その場合はレースなどの装飾がないシンプルなデザインのほうが品が良く信頼感が感じられます。

インナーは、硬い場面では「白」が基本です。

ジャケットとワンピースのアンサンブルも、ダークカラーなら問題ありません。ただし、厳密に言えば、ジャケットとワンピースのアンサンブルのイメージは普通のスーツよりもややカジュアルです。ですから、非常に硬い場面、例えば謝罪場面などでは用いない方が無難です。

華やかな場面

会合や食事など、社交的な目的が強い「華やかな場面」では、宮廷のドレススタイルを源流とする女性らしいデザインスーツが似合います。あなたがキャラクター性の強い仕事や目立つべきポジションなら、深い赤や深いグリーンなどのスーツ、ジャケットスタイルも良いでしょう。また、シックなカラーで少しレースなどの装飾がついたものもいいと思います。

テーラードスーツも、インナーをやや女性らしさが出るものにし、アクセサリーを工夫することで、デザインスーツ以上の華やかさを出せます。

なお「華やかな場面」が非常に社交的な側面を持つなら、スーツよりもさらにその場面に華やかさを添えるようなインフォーマルドレスの選択をした方がいい場合があります

※「インフォーマルドレス」は「フォーマルでないドレス全般」を指す言葉でもあるため スーツ類も含まれてしまう場合がありますが、特に「インフォーマルドレス」という時には、 エレガントに着ることができる普通丈のワンピースをイメージする時が多いです。

日常的な場面

女性は男性に比べて、だいぶ選択肢が多いと言えるでしょう。ジャケットとスカートやパンツ、柔らかく着やすい生地のセットアップ、ニットスーツなどの選択もできます。

しかし、役職についている方はご自分の役職や立場を引き立てることを考えて選択することをお勧めします。  ネイビーやグレー、白、ベージュなどシックな色使いでコーディネートに統一感を出して上品さはキープしましょう。カジュアルでもどこかエレガントに見える工夫が「格」を感じさせます。

女性の方のパンツスーツの注意点

このページのドレスコードでは、パンツスーツを「日常的」の場所に置き、どちらかというと日常的、カジュアルなイメージとして扱っています。その理由は、女性にとって「パンツ」というアイテムがどうしても「動く、活動的」というイメージを出しがちであるからです。

その女性のポジションや役割によっては、「動く。活動的」というイメージがプラスにならない時もあります。「動く」イメージは、指導者や指示者ではなく、逆にその人たちから「指導や指示を受ける人」に近くなります。 女性にとっては、パンツよりスカートの方がフォーマルイメージに近く、そのためスカートのほうが「格」はでます。

もちろん、出したいイメージが「動く・活動的」である場合や、実際のお仕事が「動く・活動する」必要がある人はパンツスーツを選べば良いのです。しかし、単におしゃれの一環として身につけるなら注意が必要です。  重要なのはあくまでありたい自分にあったものを「選ぶ」意識です。

女性の方へー「自分の立場」や「役割」に合う服装を再確認

女性の場合は上で言いましたように、日常的な場面に行くに従って、男性より女性の方が選択できるスタイルやアイテムは多くなります。ただし、柔らかくカジュアルなアイテムを選べば、それだけ「権威」「格」のイメージからは遠ざかります。 そこを踏まえて自分の立場や役割に合った「あなたにふさわしい服」を選ぶのは男性より女性の方が神経を使わなければならないことを意識しておいてください。

 

 

いかがでしょうか。3つのシーンで大体の選択基準がわかりやすくなったかと思います。あなたにはあなた自身の「硬い」「華やか」「日常」の場面があるはずですから、そのシーンに自分が持つ服装アイテムを実際に当てはめて着るべきものを決めてください。