仕上げのトレーニングで声と話し方の総合力を高めましょう。これから堂々と人に伝わる声や話し方で人を魅了してください。

 

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声や話し方を魅力的にする「総合力」を高めましょう

 

声や話し方には、さまざまな要素があります。高さやスピード、呼吸やイメージなど、単なる「声」の問題ではない要素もあります。ただ知るだけではなく、意識し、意図し、コントロールすることで、声や話し方に関する「総合力」が高まります。

仕上げとして、その総合力を確認し、自信をつけて、もっと声や話し方を魅力的にするためのエクササイズをぜひ試してください。

このエクササイズは、俳優やアナウンサーも絶対に一度は通ると言われている古典の演目を使ったものです。

 

古典で話し方を格段にレベルアップ

 

外郎売で3ステップエクササイズ

 

「外郎売り」をご存知ですか? これは歌舞伎の十八番の一つです。「外郎」という薬を売る商売人が調子よく述べる口上が見せどころとなっています。聞いたことがある日本の早口言葉がかなり入っていて、調子よく話すにはなかなか難易度が高い内容です。 その難易度ゆえ「外郎売り」は、役者の発声トレーニングやアナウンサーの発声・カツゼツの練習の定番でもあります。

(参考:YouTube動画  https://youtu.be/B0k3MiU8kak

 

「エグゼクティブプレゼンス」というテーマと歌舞伎の十八番の組み合わせはおかしく見えるかもしれませんが、以下のステップで練習していただくと、堂々とした話し方や魅力的な話し方にするのに非常に効果的です。声や話し方だけでなく、表情や視線なども気をつけなから、話し方をレベルアップしましょう。

 

 

外郎売テキストダウンロード

 

外郎売の文章テキストをまずダウンロードして読んでみてください。こちらからPDFダウンロードできます →外郎売PDF

ここをクリックしても全文を見ることができます

拙者親方と申すは、お立会いのうちに

ご存知のおかたもござりましょうが、

お江戸を発って二十里上方、

相州小田原一色町をお過ぎなされて、

青物町へ登りお出でなさるれば、

欄干橋虎屋藤右衛門

ただ今は剃髪いたして

円斉と名乗りまする。

元朝より大晦日まで、

お手に入れまする此の薬は、

むかし陳の国の唐人、

外郎という人、わが朝へ来たり。

帝へ参内の折から、

此の薬を深く籠めおき、

用ゆるときは一粒ずつ、

冠の隙間より取り出だす。

よって、その名を帝より

「とうちんこう」と賜る。

すなわち、文字には

「頂き、透く、香い」と書いて、

「とうちんこう」と申す。

ただ今は此の薬、

ことのほか世上に広まり、

方々ににせ看板を出し、

イヤ、小田原の、灰俵の、

さん俵の、炭俵のと色々に申せども、

平仮名を持って「ういろう」と記せしは、

親方円斉ばかり。

もしやお立会いのうちに、

熱海か塔の沢へ湯治にお出でなさるるか、

または伊勢御参宮の折からは、

必ず門違いなされまするな。

お登りならば右の方、

お下りなれば左側、

八方が八つ棟、表が三つ棟、玉堂造り

破風には菊の桐のとうの

御紋を御赦免あって、

系図正しき薬でござる。

イヤ、最前より

家名の自慢ばかり申しても、

ご存知ない方には

正身の胡椒の丸呑み、白河夜船、

さらば一粒食べかけて、

その気見合いをお目にかけましょう。

まず、この薬を

かように舌の上にのせまして、

腹内へ納めますると、

イヤ、どうも言えぬは、

胃、心、肺、肝がすこやかになりて、

薫風喉より来たり、

口中微涼を生ずるがごとし。

魚鳥、茸、麺類の食い合わせ、

その他万病速効あること

神のごとし。

さて、この薬、第一の奇妙には

舌のまわることが

銭独楽がはだしで逃げる。

ひょっと舌がまわり出すと、

矢も楯もたまらぬじゃ。

そりゃそりゃ、そらそりゃ、

まわってきたわ、まわってくるわ、

アワヤ喉、サタラナ舌に、

カ牙サ歯音、

ハマの二つは唇の軽重、

開合爽やかに、

あかさたなはまやらわ、

おこそとのほもよろを、

一つへぎへぎに、

へぎほしはじかみ、

盆まめ、盆米、盆ごぼう

摘み蓼、摘み豆、つみ山椒、

書写山の社僧正

粉米のなまがみ、粉米のなまがみ、

こん粉米のこなまがみ

繻子ひじゅず、繻子、しゅっちん、

親も嘉兵衛、子も嘉兵衛、

親かへい子かへい、

子かへい親かへい、

ふる栗の木の古切口。

雨合羽か、番合羽か、

貴様のきゃはんは皮脚絆、

我らがきゃはんも皮脚絆、

しっかわ袴のしっぽころびを、

三針はりなかにちょっと縫うて、

ぬうてちょっとぶんだせ、

かわら撫子、野石竹。

のら如来、のら如来、

三のら如来に六のら如来。

一寸先のお小仏におけつまづきゃるな、

細溝にどじょにょろり。

京の生鱈、奈良なま学鰹、

ちょっと四五貫目、

お茶立ちょ、茶立ちょ、

ちゃっと立ちょ茶立ちょ、

青竹茶筅でお茶ちゃっと立ちゃ。

来るは、来るは、何が来る、

高野の山のおこけら小僧。

狸百匹、 箸百膳、

天目百杯、 棒八百本。

武具、馬具、ぶぐ、ばぐ、三ぶぐばぐ、

合わせて武具、馬具、六ぶぐばぐ。

菊、栗、きく、くり、三菊栗、

合わせて菊、栗、六菊栗。

麦、ごみ、むぎ、ごみ、三むぎごみ、

合わせて麦、ごみ、六むぎごみ。

あの長押の長薙刀は、誰が長薙刀ぞ。

向こうの胡麻がらは、

荏の胡麻がらか、真胡麻がらか、

あれこそほんの真胡麻がら。

がらぴい、がらぴい風車、

おきゃがれこぼし、おきゃがれ小法師、

ゆんべもこぼして又こぼした。

たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、

ちりから、ちりから、釣ったっぽ、

たっぽたっぽ一丁だこ、

落ちたら煮て食お、

煮ても焼いても食われぬものは、

五徳、鉄球、かな熊童子に、

石熊、石持、虎熊、虎きす、

中にも、東寺の羅生門には、

茨木童子がうで栗五合つかんでおむしゃる、

かの頼光のひざもと去らず。

鮒、きんかん、椎茸、

定めて後段な、

そば切り、そうめん、

うどんか、愚鈍な小新発地。

小棚の、小下の、小桶に、

こ味噌が、こ有るぞ、

小杓子、こ持って、こすくって、

こよこせ、おっと合点だ、

心得たんぼの川崎、神奈川、

保土ヶ谷、戸塚は、

走って行けば、やいとを摺りむく、

三里ばかりか、藤沢、平塚、大磯がしや、

小磯の宿を七つ起きして、

早天早々、相州小田原とうちんこう、

隠れござらぬ貴賤群集の、

花のお江戸の花ういろう、

あれあの花を見て

お心をおやわらぎやという。

産子、這う子に至るまで、

この外郎の後評判、御存知ないとは

申されまいまいつぶり、

角出せ、棒出せ、ぼうぼうまゆに、

臼、杵、すりばち、ばちばち

ぐゎらぐゎらぐゎらと、

羽目をはずして

今日お出でのいずれも様に、

上げねばならぬ、売らねばならぬと、

息せい引っぱり、

東方世界の薬の元締め、

薬師如来も照覧あれと、ほう敬って、

ういろうは、いらっしゃりませぬか。

 

外郎売エクササイズのやり方

 

エクササイズ1 滑らかに言えるように練習する

最初は「滑らかに言えるようになること」が大切です。 早口言葉の連続ですので、通して読むことも難しく感じるかもしれませんが、何度か練習して舌を滑らかにしてください。基本に忠実に、口の開閉、母音ごとのメリハリに注意しながら練習してください。

 

エクササイズ2 少し落ち着いた低めの声で

抑揚をつけながら少し芝居口調で言ってみてください。 この「外郎売り」は人にモノを勧めている場面です。緊張した面持ちでなく、ごく普通に話しているように表情も少し意識しながら練習してください。 時々はプリントから目を離し、鏡で自分を見ながら、自然に語りかけるように話してください。またここでは、アゴが締まっていることも意識しましょう。

 

エクササイズ3 口角を上げて、アイコンタクトを意識

滑らかに言えて、低めの声で抑揚がつくようになったら、口角を上げて鏡の中の自分にアイコンタクトをしながら話してください。

 

さらにステップアップ 腹式呼吸、丹田を意識。力強く語りかける

先ほど言ったように、「外郎売り」は堂々と売り物の特徴を述べ、人に強くモノをすすめている場面です。腹式呼吸で発声し、お腹から出る力強い声と堂々と自信たっぷりな表情で語ってください。

滑らかさ、低めの声、抑揚、表情、呼吸などを同時に意識できるようになったら、ふだんの話し方にも変化があるはずです。自然に態度に自信が出てくるでしょう。 余力があれば、さらに表情の変化などを加えて自分の話っぷりを上げていってください。

「外郎売り」では、「間」を練習できるところが少ないのですが、どこかに入れて見ましょう。余韻が生まれるのがわかっていただけると思います。

 

 

いかがでしょうか。声や話し方には、高さやスピードなどわかりやすい要素から、共鳴場所やベクトルイメージなど、気付けないものもあります。また聞き手のストレスをなくすためにわかりやすいカツゼツや抑揚、間などもあります。そして、声のみならず、表情なども影響します。そして、何よりあなたの自信です。

ここまでの要素を知っているあなた、コントロールを意識しているあなたは、声や話し方についてはかなり自信を持っていただいてもいいです。堂々と人に伝わる声や話し方で、さらに人を魅了し信頼されてください。