話し方の魅力を左右するのはカツゼツや抑揚です。カツゼツや抑揚の基本を身につけておきましょう。

 

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■「聞くストレス」をなくすカツゼツと抑揚/カツゼツ(08:37)

■抑揚の基本(05:08)

 

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「聞くストレス」をなくすカツゼツと抑揚

話し方の魅力は「聞くストレスが少ない」こと

 

声や話し方をよくしたい、と思う方は、人から信頼されたい、高く評価してもらいたい、という希望があるかと思います。しかし、その前段階として「自分の話を聞いてもらいたい」という思いがありますよね。

そのためには話し方を魅力的にしたいものです。魅力的な話し方には表情や視線の魅力ももちろん必要ですが、話し方そのものを魅力的にしたいなら、ズバリ聞く側の「聞くストレス」を少なくすることです。

聞く側のストレスにはこのようなものがあります。

1 声が耳ざわり/周りに騒音がある

2 言っている事が聞こえない、わかりにくい

3 1本調子で退屈・掴みどころがない

 

カツゼツと抑揚の基本を身につける

 

前述の聞くストレスのうち、1の「声が耳ざわり/周りに騒音がある」は、声の高さやスピードの工夫、腹式発声などで、できるだけ心地よく聞いてもらえる発声を目指すことが解消につながります。

そして、2の「言っている事が聞こえない、わかりにくい」は声の大きさや声のベクトルのほかに、カツゼツの良し悪しがストレスの度合いを決めます。一語一語が明瞭にはっきりわかるような発声ができるよう、カツゼツの基本を身につけておく必要があります。

3の「1本調子で退屈・掴みどころがない」は「抑揚の無さ」が直接の原因です。抑揚についても基本を知っておきたいですね。

この章では、カツゼツと抑揚についてお話しします。

 

 

カツゼツの基本

 

口の開閉にメリハリをつける

声や話し方に悩む人の中でも「カツゼツを良くしたい」と思う方は少なくありません。カツゼツをよくするためには舌や口周りの筋力が大切ですが、その前に見直しが必要な事があります。

それは、口がちゃんと開閉できているか、ということです。

以下の3つの項目を見直してみてください。

      • 口元が緩んでいて、開ける・閉めるがきちんとできていないため、音がくぐもったち漏れたりしていないか
      • どの音も、同じような口の開き方になっているため、音がはっきりせず曖昧な発音になってないか
      • アゴが浮き気味で、キレのいい発音がしにくくなっていないか

舌の回転は悪くないのに、どこか聞こえづらい、カツゼツよく聞こえない、という問題の原因はこの3つのうちどれか、または全部が当てはまっている場合が多いのです。  聞く側のストレスが少ない魅力的な話し方にしたいなら、以下の3つのポイントを守りましょう。

●「口の開閉にメリハリをつける」(話すときに口を開け、話し終わった時に口を締める)

●「アゴに重みを持たせ引き締める」

●「口の形を母音に合わせてしっかり発音する」

 

母音をはっきり発音する

カツゼツは「母音の明瞭な発音」が決め手です。 しかし、自分では母音を正確に発音しているつもりで、あまり口の開閉の仕方に変化がなく、わかりにくい発音になっている人は意外と多いものです。

このような人の話は声量はあっても、わかりにくく伝わりにくいものになります。 声が良くてもわかりにくく伝わりにくければ、聞く側のストレスは強くなり、聞く意欲が減少します。発音のメリハリを強めるために、母音の練習をしておいてください。

 

<母音の練習>

それぞれの音にしたがって、口をはっきり開けて発音する。

【ア】口を全体的に大きく開ける。指2本が入るくらいのサイズ

【イ】アの口を横幅はそのままで縦の大きさを半分にする

【ウ】イの口の横幅をちぢめ、唇をとがらせる

【エ】アの口で舌を持ち上げる

【オ】アの口をすぼめる

口の形 「ア」 「イ」 「ウ」 「エ」 「オ」

いかがでしょうか。口の形をきちんと作って発音できましたか。日常ではもちろん、こんなにはっきりと口の形を作らなくて大丈夫ですが、人前で話す時などはややしっかりとつくったほうが聞こえやすい音になります。場面で加減してください。

 

早口言葉のトレーニング

 

早口言葉もカツゼツのトレーニングではお馴染みです。ただし、スピードだけを追求し、肝心の「明瞭な発音」ができていなければ意味がありません。 なめらかな発音を練習しましょう。早く口を動かしながら、母音をはっきりと発音してください。また、先ほどの繰り返しになりますが、加えて口の開閉にメリハリをつけて練習してください。

 

<早口言葉>

●以下のポイントを強く意識しながら、早口言葉を繰り返し練習してください。カツゼツに自信がつきます。

・「口の開閉をきちんとする」

・「アゴに重みを持たせ引き締める」

・「口の形を母音に合わせてしっかり発音する」

●母音の口の開け方をはっきり区別して声に出して言います。

●鏡を見ながら練習してください。  口の開閉がきちんとできているか、発声しているときアゴが引き締まっているかを確認してください。

 

お綾や、母親に「お謝り」とお言い。

(おあやや、ははおやに、おあやまりとおいい)

 

欄干橋、虎屋藤右衛門、ただいまは剃髪いたして、円斉と名乗りまする。

 

(らんかんばし とらやとうえもん、ただいまはていはついたして、えんさいとなのりまする)

 

 

「息を切る」ことで出すカツゼツの良さ

あなたは、息をしっかり切っていますか? 弱々しそうな話し方、頼りない話し方になる原因は、「声が小さい」「カツゼツが悪い」「抑揚がない」などいくつかありますが、多いのは発音の時に息が切れておらず、語尾が長引いたり、息がもれて言葉がゆるく聞こえたりすることです。これがあると、カツゼツも悪く聞こえがちです。

これを防ぐためには、まず口の開閉にメリハリをつけること=話すときは口をきれいに開け、話終わったら、閉じるということです。そして、その時に吐き出していた息を口を閉じることでいったん切ります。

もし、「息を切る」という感じがわからなければ、語尾に小さな「ッ」をつけて言葉を言い終わる練習をしてください。スパッと切ったような感覚がわかるでしょう。きっぱりしたものの言い方をする時にも小さな「ッ」をつけると、しっかり伝わります。

例:

「お綾や(〜)、母親に(〜)、お謝りとお言い(〜)」

「お綾や(ッ)、母親に(ッ)、お謝りとお言い(ッ)」

 

自分の話し方が弱い、優しすぎると思う方は、「息を」切るということを意識してください。

 

抑揚の基本

抑揚ある話し方を実現する簡単な方法

 

平坦で変化がない話し方は聞いていて、その話にも話し手にも魅力を感じないものです。魅力がなければ、内容への関心や聞く意欲、内容への信頼は低下します。相手に何かを伝えたい、相手を説得したい、と思うなら、声や話し方に表情をつけることです。声や話し方に表情とは、まず「抑揚」をつけることです。

「抑揚」とは、声の調子の上げ下げや音声の強弱で話し方に表情をつけることを言います。

「うまく抑揚をつけるのは難しい」という方がいますが、演劇などではなくビジネスの世界での話し方にはそれほど大げさな抑揚は必要ありません。ですから、自分が言葉にする文の中で、どの言葉が一番伝えたいことなのかが意識できていると、自然にうまくつくものであると知っておいてください。

例えば、言うと決めたセリフをそのまま言うと、抑揚がつけにくく「棒読み」のようになるかもしれません。しかし、その一文の中のどの言葉がいちばん伝えたい言葉なのかを考え、その言葉を「強調」しようとすると、その前後の言葉は対比的に弱まる傾向があります。それだけでも、その文には自然な強弱がつきます。

次のセリフのそれぞれの言葉を強調して言ってみてください。その時の抑揚の変化を意識してみましょう。

 

「あなたは」「いつも」「本当に」「よくやっている」「と思う」

●「あなたは」「いつも」「本当に」「よくやっている」「と思う」

●「あなたは」「いつも」「本当に」「よくやっている」「と思う」

●「あなたは」「いつも」「本当に」「よくやっている」「と思う」

●「あなたは」「いつも」「本当に」「よくやっている」「と思う」

 

いかがでしょうか。ことさらに抑揚を意識しなくても、声のトーンやスピードまで変化しますね。普段の会話でも、プレゼンテーションでも、相手に何かを伝えたい、相手を説得したい、と思うなら、どの言葉を強調して伝えるべきかを意識しましょう。

 

アナログマーキング:「間(ま)」

声の調子の上げ下げや音声の強弱以外に、話し方には「間(ま)」が重要です。「間」とは、言葉と言葉の間に入れる空白です。

厳密に言えば「間」は「抑揚」ではないですが、「話すこと・伝えること」にはとても重要な要素です。昔から「カリスマティック・トーク(カリスマ的な話し方」の特徴のひとつとして「間の使い方」が挙げられます。「間」をうまく使いこなす人は、説得力や影響力も強いのです。

それは、「間をとる」には催眠や心理操作の側面があるからです。例えば、話している人が急に黙ったとします、そうなるとハッとその人に注目することはありませんか?間は話し方に表情をつけるだけでなく、使い方によっては伝えたい内容を心理的に印象づけることができ、説得力や影響力を高める事ができます。

 特に覚えておきたいのは、「間」のテクニックの一つ「アナログマーキング」です。 これは、「重要な言葉の前後に間を設ける」 という方法です。

例えば、先ほどの例文の場合は

A「あなたは」「いつも」「本当に」「よくやっている」「と思う」

B「あなたは」「いつも」「本当に」  「よくやっている」  「と思う」

Bがアナログマーキングをした話し方です。聞いてみていかがでしょうか、強調のされ方や伝わり方が違い、「よくやっている」という言葉がより実感をともなって聞こえたのではないでしょうか。

アナログマーキングは心理学で言う催眠言語の一つです。 間を設けることによってその言葉に対する相手の意識を先鋭化させます。そうすると、その言葉は相手の中に強く残りやすくなります。とても簡単な手法なので、会話やプレゼンに使ってみてください。  そして、話し方の基本として「間」が重要であることも覚えておいてください。

 

 

いかがでしょうか。カツゼツ、抑揚、間は基本的なことを見直したり意識したりするだけでも、話し方に表情がつきます。そしてそれが人を惹きつける話し方、意識に働きかける話し方につながる魅力となりますので、ここでお伝えした基本を忘れないようにしてください。