目がいかに多くのことを伝えるかということと、どんな情報を伝えるかということについて理解しておいてください。そうすることで、あなたの目による表現力は無意識で今までよりグレードアップします。

 

 

AUDIO

(トータル 10:28)

 

■非言語コミュニケーションの「目」の役割(時間 04:40)

アイコンタクトの基本的なコントロール(時間 05:48)

 

 

MOVIE

(時間  10:28)

 

■非言語コミュニケーションの「目」の役割(00:00〜約04:40)

■アイコンタクトの基本的なコントロール(約04:40〜10:28)

 

TEXT

 

非言語コミュニケーションの「目」の役割

 

目は言葉より多くを伝える

昔はコミュニケーションの主役は言語と考えられていました。しかし、心理学者などのさまざまな研究から、感情の変化や納得も含めた本質的なコミュニケーションにおいては言葉よりも「パラランゲージ(言葉の周辺)」の役割が非常に高いことがわかってきました。その中でも、視線やアイコンタクトが、瞬時に相手に対して色々な情報を伝える力があることが非言語コミュニケーションを専門にした研究でわかってきています。

ここでは、目がいかに多くのことを伝えるかということと、どんな情報を伝えるかということについて理解しておいてください。

そうすることで、あなたの目による表現力は無意識で今までよりグレードアップします。

 

目が伝える5種類の情報

 

心理学の研究や実験、脳機能の研究からのアプローチによって、表情や視線の影響が一般にも理解されてきました。人間は多くのことを目を使って伝えることができます。ふだん、目が伝えている情報は次の5種類です。

 

●意思や感情

アイコンタクトや目の表情で、嬉しい、おもしろがっているという感情や、何かやろうとしているなどの意志の強さを分かりやすく伝えることができます。

また無意識には動揺や怒り、心配といった感情の揺れが伝わります。  

 

●節度や礼儀正しさ

視線の合わせ方や外し方で節度や礼儀正しさが伝わります。例えば、目礼(目を合わせてさりげなく伏せることで敬意を表現する挨拶)をする、相手を真っ直ぐの視線で見る、などです。

逆に遠慮なく見つめてくる人や長い時間ジロジロ見てくる人は失礼に感じますね。見方や見つめる時間でもどれだけ礼儀を持ち合わせている人物かということがすぐに伝わります。

 

●自信

自信はいちばん目に現れるというのは、誰でも納得できることかと思います。目は脳が唯一体外に露出している器官として知られます。精神のあり方が伝わりやすいわけです。

あまりアイコンタクトをせず相手から目をそらす、ほとんど目を伏せている、まばたきを何度もする、といった状態はといった状態は相手に自信のなさを伝えます。

 

●話の内容に関しての関心度、受容度

現在の話や状況、相手などにどれだけ関心があるかということについても脳の動きが現れやすい目が多くを語ります。

話の内容に関心があったり大いに同意していたりすれば、ぐいぐいと目を見返してきますが、関心がなかったり受け入れていなかったりする状態ではl眼がぼんやり泳いだり、目を反らしたりします。  

 

●思慮の深度(どれだけ意識の深くまで思考が行っているか)

人の関心が外部に向かえば、目は外部に焦点を合わせます。しかし、関心が内面に向かうと、目の焦点はぼやけてきます。ですから、思考が深くなってくるとその人の目の焦点はだんだんぼんやりしてきます。  

会話や打ち合わせの場合、話の途中でもし相手がそのような様子を見せたら、あなたの言ったことをきっかけに自分の考えを深めているのかもしれません。そんな時は話しかけるのを少し待って時間を与えてあげることも必要です。

 

 

いかがでしょうか。このように、目はとてもおしゃべりで、人間の色々な状態を発信しています。つまりはこちらの本音も知らないうちに相手に伝わる可能性があることを十分意識してください。そして、相手にどのようなことを感じさせたいか、自分の意図をもって目の表情や視線、アイコンタクトをコントロールすることによって、相手から望ましい反応を引き出すこともできる、ということをあらためて理解してください。

 

 

アイコンタクトの基本的なコントロール

 

ご紹介したように、目が他者に伝える情報は非常に多岐に渡っています。自分にとって余計な情報を漏らさず、適切な情報コントロールをするために、視線やアイコンタクトをさらに意識するようにしてください。

まず、日頃の自分の目をチェックし、アイコンタクトについて基本的なコントロールをしてください。

 

自分の「目」チェックポイント

 

人と話をするとき、人の目があるときには、自分の視線やアイコンタクトがどんなことを表しているかを意識しましょう。

例:

■相手の話に関心がある、おもしろがっていることが伝わっているか

■相手に堂々と映っているか、自信があるように見られているか

■礼儀正しい「目礼」ができるか

■動揺や心配、怒りなどのマイナス感情が伝わっていないか

 

もちろん、口元や声音も重要ですが、まず目を意識して、表現力を高めましょう。

 

適切なアイコンタクトを考えるポイント

適切なアイコンタクトは表現力のひとつです。また、品や格にもアイコンタクトが重要です。適切なアイコンタクトを考えるために、アイコンタクトのポイントを細分化してみます。

   

●(顔の表情)目元・口元・アゴ

目元、口元、アゴが引き締まっている状態と、目元、口元、アゴが弛緩している状態では、相手が抱く印象に差がつくことはおわかりですね。ですから、それも意識してください。

●(顔の表情)眉

眉を軽く上げて相手を見たときと、眉を上げずにまっすぐにした状態で相手を見たときも印象がまるで違います。眉と眼の距離が近い(眉に力が入っている、眼を見開いている)と圧力や強さが伝わりやすくなります。また、「眉の上げ下げ」を表情に加えると、ユーモラスなイメージや特別なニュアンスが伝わります。    

●(注視の度合い)焦点

対象となるものにどれだけ焦点を当てるかで、アイコンタクトのニュアンスは変化します。例えば、たくさんの人の前で話すときは、広く見渡すので焦点はあまり絞られず、印象はソフトです。しかし、相手の目をぐっと見つめるような場合は、かなり焦点を絞った状態で、それだけ圧力が強くなります。これは、アイコンタクトで伝えたいことを表現するときに非常に大事なポイントです。

(注視の度合い)時間

アイコンタクトには適切な時間の意識が必要です。視線を合わせる時間が短すぎると、「チラ見」の印象になり、不誠実、失礼、自信がない、という印象になります。逆に長すぎる、相手にプレッシャーが強くかかって不安にしてしまったり、不躾で不快な印象を与えてしまったりすることがあります。

参考までに、科学雑誌で発表された「視線」の研究ではアイコンタクトの最も適切な長さは3.3秒であるそうです。Royal Society Open Science / Pupil dilation as an index of preferred mutual gaze duration)  

(注視の度合い)頻度

時間も意識しながら、相手との呼吸に合わせて、落ち着いたリズムで相手を見る、外すというアイコンタクトができると、好感度や信頼感、そして余裕や威厳という印象が強くなります。  逆に見る、外す、見る、外すと頻度が高くなりすぎると、小心者、ずるい人、失礼、というネガティブな印象を与えやすくなります。

 

細かすぎますか? 理解をしていただきやすくするために、細かくご説明しましたが、ふだんからそれほど精密でいる必要はありません。

ただ、最初だけは上記のようなポイントから自分の視線やアイコンタクトを意識してみてください。細かいニュアンスを伝える「力を持つ目」を持てるようになります。

次の章では、より具体的にテクニックについてご説明します。